水は大切に。

　残暑の厳しかった9月も終わりすごし易い季節になりました。10月は運動会などイベントが多い月。「女心と秋の空」「男心と秋の空」なんて言葉があるように秋の天気は変わりやすくカラッと晴れた次の日は雨など天気予報と睨めっこしながら過ごす日が増える季節です。と　昨日あった集まりで水資源と導水事業が話題になったので導水事業に関するメモをご紹介。
　
　私たちが住んでいる日本は、世界でも有数の多雨地帯で年降水量は約1,697mmとなり、これは世界の年降水量である約1,171mmの約1.4倍となっています。一方で年降水量に国土面積を乗じ全人口で除した1人当たり年降水総量でみると、我が国は約5,000㎥／人・年となり、世界の1人当たり年降水総量約20,000㎥／人・年の４分の１程度となっており、国民1人当たりが利用できる水資源は限られています。日本は気候的・地理的特性も渇水が発生しやすく、水資源の安定的な利用に不利な条件となっています。降雨は、梅雨期や台風期に集中するとともに、河川勾配が急であるため大雨が降っても水が一気に海まで流下してしまうために、ダム等の貯留施設や導水路を建設し、その適切な運用により、安定的な水資源の供給を図ることが重要となっています。

　水資源が豊富な茨城県は那珂川、霞ヶ浦および利根川などの水資源の安定的かつ広域的な供給等によって流域の産業・経済の発展させてきました。しかし、産業の発展や都市化の進展によって、霞ヶ浦や水戸市を流れる桜川等の水質汚濁、那珂川や利根川における渇水の発生など、さまざまな問題が発生するようになり、流域全体で水質浄化、安定した水資源の確保に向けた取り組みとして霞ヶ浦導水が進められています。また、霞ヶ浦導水事業は、茨城県だけではなく東京都などの関東地方における水のネットワークを構成し、限りある水資源を有効に活用することも目的としています。

・霞ヶ浦の水質の状況
　霞ヶ浦では、昭和40年代後半からの流域における人口増加、生活様式の多様化、産業活動の進展などにともない汚濁が進行し、昭和54年にはCOD※が11.3mg/Lという高い値を示すに至りました。水質浄化対策として、７期35年にわたる「霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画」を通して、国、県及び流域市町村による様々な対策が進められてきました。平成21年度に、昭和54年度以来の高い値である9.5mg/Lに上昇しましたが、その後、低下傾向となり、平成25年度には6.8mg/Lまで低下しました。しかし、霞ヶ浦は水深が浅いことなどの特徴により、短期的には水質浄化効果が表れにくい状況であるため、近年は７mg/L程度で推移しています。
　霞ヶ浦の水質浄化のために、茨城県は「霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画」を策定し、関係機関とともに様々な水質浄化対策を行っています。令和３年度から令和７年度までは第８期の計画期間となっており、流域での負荷削減対策（生活排水対策、農地・畜産対策等）や、湖内での対策が進められています。湖内での対策としては、生態系の持つ自然浄化機能を活用した浄化対策などとともに、霞ヶ浦導水事業を促進し、浄化用水を導入することとしています。

・桜川の水質の状況
　桜川では、流域の都市化の進展とともに汚濁が進行し、昭和40年代後半には、BOD※の年平均値が80～100mg/lにまで達しました。昭和63年10月から始まった渡里用水を用いた暫定的な浄化用水の導入や、下水道整備の進捗等により、BOD年平均値は大幅に改善されました。しかし、桜川の水量が少なくなる夏季などに水質が悪化してアオコが発生することもあり、年間を通じた環境基準の達成には至っていません。BOD（生物化学的酸素要求量）とは 溶存酸素量が十分ある中で、水中の有機物が好気性微生物により分解されるときに消費される酸素の量のことで、有機物汚染の指標となります。
　桜川では、平成19年2月に国土交通省・茨城県・水戸市の三者が構成する地域協議会により「第二期水環境改善緊急行動計画　桜川清流ルネッサンスII」が策定され、河川事業、下水道事業およびその他の施策（生活及び工業排水対策、農業集落排水対策等）が進められています。本計画では、平成22年時点のBODを5.5mg/Lに、平成27年時点でのBODを環境基準値の5mg/L以下にまで低減させることを目標にしています。

　少し前の千波湖、桜川はアオコの発生により悪臭の発生、景観の悪化、魚類の死滅等の問題を生じさせ、水道水の利用にも支障をきたしていました。霞ヶ浦導水の試験導水が始まり臭いが無くなったことでこの時期にランニングや散歩をしている人を中心に快適な空間を享受することができるようになりました。訴訟等もあり遅れた霞ヶ浦導水事業ですが、生活に必要な水資源だけではなく、これらを観光資源化して交流人口の増やしていくことも大事でしょう。

霞ヶ浦導水カード