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MT数学史#6 古代の数学②初等代数
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MT数学史#6 古代の数学②初等代数

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今回は古代の初等代数についてのお話です。

今のように代数記号などが整備されるズーーーっと前の古代では、数学といえど基本的に全て日常言語記述されていていました。

エジプトではパピルス、バビロニアでは粘土板、中国では竹簡木簡に、インドではヴェーダという詩のかたちで問題形式として残されており、簡単なものは小学生の頃の「ホニャララ算」のようなものから、難しいものは多元連立方程式や高次方程式まで、相当に高度なものまで含まれています。僕らのように数学的中身を解っていたとしても、これらを読んで理解するのは結構大変です。いわんや古代のひとをや、です。

彼らが実際どのように理解していたかはタイムスリップができない限り知る由もないですが、残された文献や考古学的研究から推測できることをベースにお話ししましょう。

古代の文献においてよくある数学の形式として
「問題・解・その説明」
という順で記述されていることが多いですが、どれも「え?説明これだけ?」というくらいに淡白なのは、紙などの筆記具が貴重であったことが理由かもしれません。単に答えだけというものもあります。

教科書や問題集として使われていた形跡があるというものの、皆さんが読んでもテキストだけでは不親切な印象を持たれるでしょう。しかし当時にも学校やエリート養成機関による教育はあり、厳しいも優しい(?)指導者の下で学んでいたことを考えると、テキストとしてはその程度でも良いとも考えられます。実際、古代においては数表や算板が日常的に使われていた形跡があるものの、それが文章としてはオモテに残されていません。常に算板を傍に計算する古代人の絵を想像すると趣がありますね。

さて、その短さはよいとしても、正しさはどうなのでしょうか?それが相当正確なのです。幾何については近似的公式を用いていることも多いのですが、代数の問題は文字や記号こそないものの、解を求めるためのアルゴリズムそのものは一般でも通用する方法になっています。このように、具体的数値を用いて一般的な方法を説明することを「準一般的な方法」といったりしますが、それは即ち現代的記号を使えば公式化可能な説明的手順ということです。

ただ、文献的構造として少し厄介なのは、問題の難易度と書かれている順序はあまり関係がなく、その意味であまり哲学的に体系だって書かれていない知識の集積という印象さえあります。よくいえば牧歌的です。

折角なので少しばかり例を。

中学でまず習うような一変数一次方程式を解くのに、逆操作や仮定法という方法が紹介されています。

逆操作は単純で、例えば
「2足して3掛けて半分すると18になった、元の数はなにか?」
というときに、操作を逆の方から辿って
「2倍して3で割って2引くと10である」
とすることです。今でいうと群の逆作用をしている感じです。

仮定法というのは、例えば
「ある数にその4分の1を足すと15になった。それは何か?」
というときに、
「ある数を4とすると5を得る。本当は15であるから3倍して12である」
と解いたりします。ちょっと賢いでしょ?

方程式として解ける僕たちにはどうってことないのですが、それなしにして解くのに比例と線形性を前提としていることは少し面白いところです。

というのも、二元一次方程式の解法なども鶴亀算的に賢く(?)解いていたりしますが、これも一種の線型的仮定法といえばそうでした。

さらには、近似値計算においても線型近似が多用されていたようです。特に中国においては、異なる誤った2点をとりあえず取って、重み平均で答えを出すという方法も残されています。

名は「盈朒法」、読みはえいじく、カッコいいですね。

とはいえ、確かになかなか凄いというものの、線型的にあいだを取って答えとするというのは直感的で自然ではあります。問題が線型でないときは雑ともいいますが、きちんと線型の問題に適用していますし、そうでないときはアルゴリズムを続けて近似を得るわけです。近似については#4の記事でも少し紹介しましたね。

さらに多変数になっても古代中国は凄くて、実質的に基本変形による掃き出し法に相当する統一的解法さえ載っています。ほんとに行列表記そのもので、縦と横が逆というくらいの違いです。ガウスに先立つことウン千年です。しかし「古代中国人は行列を知っていた!」とか思っちゃだめです。

九章算術、ファンデルベルデン「古代文明の数学」から


本格的な代数としては、バビロニアの粘土板における二次方程式や三次方程式の解法でしょう。そこでは

「和と積(x+y,xy)が与えられたとき、その2つは何か?」
「差と積(x-y,xy)のときはどうか?」
「差と二乗の和(x-y, x^2+y^2)が与えられたときはどうか」

などなど、和やら積やら二乗やら手を変え品を変えた問題が一通り解かれています。その中では幾つかの恒等式が利用されていて、例えば

(x-y)^2 = x^2+y^2 -2xy = (x+y)^2 -4xy
(x+y/2)^2 - (x-y/2)^2 = xy

など、同じものですがいろいろな形で理解されていたようです。おそらく同じという認識はあったのでしょうが、その色とりどりな手順の素晴らしさを強調したかったのか、解法指南書チックです。

さて、二次方程式ですから2つの解が出てきます。古代においてはもちろん負の解などは捨てられてしまったりしていましたが、実は2つの正の解が出るものも避けられています。というか、そういう問題を知っていた筈なのに巧妙に避られています。

このことは逆に、あらゆる種の問題の制作と取捨選択ができるほどの技術が既に研究されていたということを意味しているのですが、それがなぜ避けられて載せるのを憚ったのか?

社会的背景ともうすこし技術的なことなどについては、二次方程式として別立ての記事を用意しますのでお楽しみに。

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