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千尋の谷から突き落とされる育ち方について

この度評価に悩む情シスの方向けに『情シスが評価を勝ち取る技術』という本を書いたのですが、書いていく中で掲題の「千尋の谷から突き落とされる育ち方」について考える機会がありました。本は下記から買えるのでよろしくお願いします。

千尋の谷から突き落とされる育ち方とは道しるべが無い中で仕事に放り込まれ、困難にぶち当たった場合に自分なりに打開策を考えて対処することで成長するということです。こう書くと聞こえがよく、また多くの企業で行われていることですが後述のように問題点もあります。仮に千尋の谷方式と名付けます。

余談ですが千尋の谷から落とすという言葉には「本当に深い愛情をもつ相手にわざと試練を与えて成長させること」という意味もあるようですが、必ずしもそうでない場合もあるということをご認識ください。

情シスの方は企業規模によっては少人数な場合も多く、上記のような状況に自然と陥ってしまう方もいらっしゃるのではと思います。是非お読みください。

また、本記事はアドベントカレンダーの記事として投稿しようとしていたのですが情シスあまり関係ない上にクリスマスに投稿するには重すぎる内容なので別で投稿して供養することにしました。

本を書きながら考えたこと

本を書きながら考えていたのは、「前に進みたいけど進み方が分からない人はどうすればいいのだろう」ということです。

身の上話になりますが私は現在の職場に入社して数年は必要な技術や心構えが不足しており、非常に苦しい思いをしました。技術や心構えが足りていないために成果を上げられず、周りからの評価も低い状態でした。そのため、早く仕事をこなそうと焦ってしまい更にミスを増やすという悪循環です。

様々な仕事をこなす中で顧客や上司、先輩から叱咤激励を受けながら技術や心構えが備わっていったと考えています。先述の千尋の谷方式です。

1つ目の問題点

私は最近この方式に問題があるのではないかと考えています。
最も大きな問題は、この方法に耐えられる人と耐えられない人がいるということです。
耐えられる場合にはスキルアップすることが可能です。しかし、耐えられない人が本方式を課されると、多大なストレスや自己嫌悪から体調を崩したり精神に変調をきたすことがあります。
どのような事情があるにせよ、個人に犠牲を強いて回る業務はあってはなりません。

2つ目の問題点

2つ目の問題点は学んだ仕事の方法を教える際の再現性がないということです。
私自身は千尋の谷方式で仕事を覚えてしまったために、周りの人が基本的なところでつまづいている場合に「しっかり普段から情報収集を行って、論理的に考えれば分かるでしょ」と考えがちでした。

しかしそれは裏を返せば、誰かに言語化して伝えられるほどに自分の中で仕事の進め方を明確化できていないということだと気づきました。こういう問題が起こった時にこういう対処をしたという具体的な事例の話はできるのですが、それを抽象化して一般的な方針にすることできないのです。

また、私は自分でも気づかないうちに「自分は苦労して千尋の谷方式で育ったが、それが最も手っ取り早い成長の方法であり、周りの人もそうあるべき」と考えてしまっていたのでした。

つまづいている方はその時点での全力を出しており、どう進んでいいかが分からない状態です。また基本的なところでつまづくということは、その仕事を始める前に基本的な方針や進め方を誰からも教わっていない場合が多いです。

じゃあどうすればいいのか?

千尋の谷方式で育った人が自分の後輩や部下に対して同じことをしていては、いつまでも連鎖が終わることはありません。どこかで断ち切らなければいけません。
最近になってやっと後輩社員との対話を通じてどのようなところでつまづいているかを把握し、必要なナレッジを整理して説明しようとすることを始めました。
始めてみて気づくのは自分の体験を具体的な事象から抽象化し、色々なケースに当てはまる仕事のやり方として伝えることの難しさです。

今は下記のような流れでナレッジ化を進めています。

・グループウェアで同時編集できるドキュメントを何でもいいので作成する
・仕事の仕方で困っている後輩と会議を開催する
・後輩が仕事を進める上で困っていることをヒアリングしながらドキュメントに書いていき、内容に齟齬が無いか後輩に確認する
・困っていることに対するアドバイスを話し、話した内容を後輩にドキュメントにまとめてもらい書かれた内容に齟齬がないかを確認する

この方法は下記の効果があります。

・口頭で話すだけでナレッジ化されないことを防ぐ
・話しながら書くのは難しいため聞いている相手に書いてもらう
・相手に書いてもらうことで意図がしっかり伝わっているか確認できる

『情シスが評価を勝ち取る技術』という本の結論は「評価を上げるためには職場の課題や会社全体としての課題を解決し、成果を上げよう」という身も蓋もない内容です。しかしそのような結論だからこそ、入社当初の私のように進み方が分からない人のためになる本にしたいと考えました。
そのため「成果を上げましょう」で終わるのではなく、どのように一歩を踏み出すべきかについてできるだけ丁寧に取り上げたつもりです。

ご興味をお持ちいただけましたら、是非下記からご購入下さい!


(余談)本を書いたきっかけ

余談として本を書いたきっかけも記します。

前回の技術書典9に出展した後に、情シススナックというイベントで登壇し下記の資料で発表を行いました。その中で次回作の内容候補を紹介したのですが、その際に参加されていた皆さんから最も投票が多かったのが評価に関する内容でした。オンライン飲み会で情シスの皆様と交流する中で、評価に悩む人が多いと以前から思っていましたが投票数という裏付けが取れたため本テーマで執筆することにしました。実は登壇時には「全テーマ書きます!」と宣言してたのですが1つしか間に合いませんでした、すみません(;^ω^)
(ちなみに前回の技術書典9でどの程度売上があったかも記載しているので、興味のある方は資料をお読みください)


また、タイトルと目次をTwitterで公開したところ界隈をザワつかせてしまうということもありました。経緯は下記の記事にまとめていただいているので是非お読みください。


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