BYODでDesmosを活用してみた話

高校数学の授業において、グラフが動く様子を簡単に見せることができると良いなと思うことがある。

たとえば定義域に文字定数を含む場合の2次関数の最大最小問題(数学Ⅰ)などで、グラフが動く様子を生徒に見せて解法を生徒から引き出したいと初任の頃より思っており、grapesを使って初任の時に研究授業をした(その時扱ったのは解の配置問題だった)。プロジェクターを使ってグラフが動く様子を見せて、立式の部分を生徒から引き出せたのは良かった。一方で、①プロジェクターで投影するのに時間がかかったり、②黒板のスペースがプロジェクターの投影で埋まってしまったりして、改善の余地があると感じた。

昨年の臨時休校以来、学校現場においてグーグルクラスルームが浸透し、とくに今年度ではグーグルミートを活用したオンライン授業が公立高でも普通に行われるようになった。これにより、「生徒のスマホに教材を提示する」ことが非常に容易になった。

そこで、2つの課題を生徒自身の端末を使って(BYOD)解消しようと取り組んでみた。具体的には、見せておきたいグラフ等は事前に作成(例としてはこのようなもの)しておき、授業の際に教員がクロームブックなどの端末でそのdesmosのページにアクセスして、グーグルクラスルームからグーグルミートを開いて、画面共有する。これで(グーグルミートが使えるなら)生徒のスマホ等からグラフの様子が見れるようになる。後ろの席だから見えないとか、日光がまぶしくて見えないとかいった問題も起きない。生徒にグラフを提示して、発問して解法を引き出し、グーグルミートを終了して板書に移行する。この間だいたい5~10分くらい。プロジェクターを使っている場合、こんなわずかな時間のためにプロジェクターを使う気にあまりなれないとくに今の勤務校は持ち運び式なので運んで接続して起動して角度調整して・・と作業があって非常に面倒でしかない。BYODでやるならピンポイントで起用できる。大きな強みである。実際に取り組んでみて、こういったメリットを実感すると同時に生徒が理解している手ごたえもあった。今回は取り組んでいないが、白黒反転も可能なので黒板に投影して書き込むこともできる。数学Ⅰ以外でも、数学Ⅲのコンピュータの活用の単元でも利用した。極座標への切り替えもワンクリックでできる。

また、desmosは容易に利用できるので、生徒にも使ってもらおうとかんがえて、1学期の期末試験後の時間があるところで、このようなプリントを用意して「desmos実習」を実施した。端末は学校に配備されたクロームブックや各生徒のスマホを使ってもらった。最近の高校生ぐらいの年代だと、物心ついたころにはスマホが普及していたようで、スマホのフリック操作はできてもパソコンのキーボードは慣れていないため操作の進度に差が出ている様子が見受けられた。以下、プリントを使った実習の説明になる。

実習の最初の方の例題等は指数の入力に慣れてもらうためのもので、最後にハート型のグラフを入れている。

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演習場面で生徒に見せたグラフのアニメーションも実際に生徒に動かしてもらうというのが次のステップである。文字定数を使ったアニメーションと、媒介変数表示されるグラフの描画に取り組む。媒介変数表示にあたる内容が数学Ⅲの「コンピュータの活用」の単元の内容にあたる。

グラフを描画するだけでなくて、考察にも活かせないか、ということで少し考えてみたのがその次の問題になる。aの値が小さいときに渦巻線とバラ曲線がほぼ重なっているところからsinの近似の話ができないか、と考えてみた次第である。似たようなねらいで、ネイピア数と級数展開の話題も入れてみた。が、実際は1コマの中でこのプリント終盤までは到達しなかった。取り組みの早い生徒でもバラ曲線を動かすくらいが精いっぱいだったと思う。

このdesmos実習を実施したのが7月だったが、9月に扱った微分の問題で好奇心からdesmosでグラフの形を調べてみている生徒がいて、便利なツールとして使ってもらえていてよかったと思っている。

また、10月においても区分求積法の説明で利用した。長方形の個数を増やしていくと長方形の面積の和が曲線とx軸で囲まれた部分の面積に近づいていくことを思考実験だけではなくて視覚的に理解することができる。

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今回は50分の授業すべてをICTで行うという話ではなく、学習事項のある項目での内容理解のためにピンポイントでdesmosを起用したという形で取り組んでみた。生徒の考えを引き出せたり、視覚的理解が進んだりとまずまずの手ごたえが得られたように思う。desmosはまだそれほど認知されておらず、どういうものか紹介すると驚かれる先生も結構いるように感じている。ここまで述べてきたような話は実施までのハードルがかなり低く、手軽にできるのも強みである。こういった気軽にできるICT活用が増えてくると良いと思う。

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