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【読書録】十年後の恋(辻仁成)

こんにちは。文系脳の数学教員です。

今回の読書録は『十年後の恋』(辻仁成)です。
2021年1月に集英社から刊行されています。

「離婚して10年、そして、私はようやく恋をした」。
パリで暮らすシングルマザーのマリエ。
小さな投資グループを主宰するアンリ。
2019年にはじまる、マリエとアンリの運命的な出会いの行方。
新しい世界の、永遠の恋を描いた、辻仁成の最新長編小説。
(集英社HPより)
いまだ世界中で収束の兆しを見せない新型コロナウイルス。
長年パリで暮らす著者が、パリで暮らす女性を主人公に、コロナ以前と以後にまたがる運命の出会いと愛の奇跡を描いた長編小説。
パリでの生活を発信しつづけ、多くのファンを持つ著者による、この時代にしか書けなかった大人の恋愛小説。(集英社HPより)
【著者略歴】辻仁成(つじ・ひとなり)
東京都生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。作家・詩人・ミュージシャン・映画監督と幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版Le Bouddha blancでフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『日付変更線』『父 Mon Pere』『エッグマン』『真夜中の子供』『84歳の母さんがぼくに教えてくれた大事なこと』他、著書多数。
(集英社HPより)

辻仁成さんは好きな作家さんの一人です。
有名なものと言えば『冷静と情熱のあいだ』『サヨナライツカ』などが挙げられるでしょうか。いつも"美しい"とすら感じる日本語を読ませてくれる作家さんです。

数ある作品の中で最も思い出深い作品は、、、

短編集です。この本の表題作である『目下の恋人』はとても好きな作品で何度も何度も繰り返し読んでいます。


前置きが長くなりました。本題に移ります。

『十年後の恋』の舞台は、現在辻さんが生活の拠点を置くパリです。

世界中の人々が社会的距離をとることを余儀なくされた世界での大人の恋愛が描かれています。


今回は本書で私が、最も惹かれた部分を紹介します。

三分の二ほど読み進めたところで、次のような一節で始まる項がありました。

愛とウイルスは似ている、と思った。いや、実際は正反対のもので、まるでそれぞれの反意語のような存在ではあるが、一方で驚くほどの共通点もあった。

愛をウイルスを対比させ、その症状の複雑さや対応の困難さを綴った部分です。

 愛とは、人から人へ感染すること。
 愛には、無症状の期間があること。
 愛の集団免疫を獲得しているはずなのに、ふいに罹患してしまうこと。
 愛は、軽傷で済む場合もあれば急激に重篤化してしまう場合もあること。
 愛は、時に人と人とを遠ざけようとする力をもつこと。
 愛は、変異すること。

コロナ禍である今だからこそ刺さる表現だと思いました。
また、愛だとか恋だとかいうものをテーマにし続ける辻さんらしさのようなものを最も感じた部分でもあります。

美しい日本語大人の恋の物語に触れたい人にオススメの一冊です。

#辻仁成 #十年後の恋 #集英社 #読書録

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