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確率論#5

期待値の定義と可積分の定義について紹介していきます。期待値は確率論の様々な事について考察するツールであり、とても重要なものになりますね。
可積分はその期待値を元に定義されていきます。

定義1.5
確率変数$${X:\Omega\to\mathbb{R}}$$の期待値$${\mathbf{E}[X]}$$を次の手順で定義する。
(1)$${a_i\in\mathbb{R},A_i\in\mathcal{F}(i=1,2,\cdots,n)}$$を用いて、$${\displaystyle{X=\sum_{i=1}^na_i1_{A_i}}}$$と表される確率変数の全体を$${\mathcal{SF}}$$と表す。$${X\in\mathcal{SF}}$$に対して、$${\displaystyle{\mathbf{E}[X]=\sum_{i=1}^na_i\mathbf{P}(A_i)}}$$と定める。

(2)$${X\geq0}$$の時、
$${\mathbf{E}[X]=\sup\{\mathbf{E}[Y]\vert Y\in\mathcal{SF},0\leq Y\leq X\}}$$と定める。

(3)$${\min\{\mathbf{E}[X^{+}],\mathbf{E}[X^{-}]\}<\infty}$$となる$${X}$$に対し、
$${\mathbf{E}[X]=\mathbf{E}[X^{+}]-\mathbf{E}[X^{-}]}$$と定める。

定義1.6
$${\mathbf{E}[X]<\infty}$$となる時、$${X}$$は可積分であるといい、可積分な$${X}$$の全体を$${L^1(\mathbf{P})}$$と表す。
また、$${p>0}$$に対して、$${\vert X\vert^p}$$が可積分である時、$${X}$$は$${p}$$-乗可積分であるといい、これらの全体を$${L^p(\mathbf{P})}$$と表す。
$${X\in L^p(\mathbf{P})}$$に対して、$${\vert\vert X\vert\vert_p=(\mathbf{E}[\vert X\vert^p])^{\frac{1}{p}}}$$とおく。
また、$${X\in L^1(\mathbf{P}),A\in\mathcal{F}}$$に対して、$${\mathbf{E}[X;A]=\mathbf{E}[X1_A]=}$$と書くことにする。

上記の定義の中に出てきた、集合$${A}$$における定義関数$${1_A}$$、$${X}$$の正成分$${X^{+}}$$と負成分$${X^{-}}$$については次のように定義されています。

定義1.7
$${1_A(x)=\left\{\begin{array}{l}1\ (x\in A)\\0\ (x\notin A)\end{array}\right. }$$

定義1.8
$${\omega\in\Omega}$$に対して
$${X^{+}(\omega)=\max\{X(\omega),0\}}$$
$${X^{-}(\omega)=\max\{-X(\omega),0\}}$$である。



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