見出し画像

デザイン事務所のお客様(5)〜モンスターM氏との、とある1日編〜

こんにちは。田舎の小さなデザイン事務所で働くたまです。

今回はうちの事務所のお客様の中で一番の「モンスター」であるM氏のお話です。私はこの方が本当に苦手なのですが、年間契約のお仕事をいただいているので定期的に会わなくてはいけません。
おかげでここに書くネタが腐るほどあります。

M氏は50代後半。元公務員で、早期退職して経営コンサルタントをしていましたが、現在はとある組織の理事をしています。
うちの事務所がM氏から請けている仕事は、一言で言えば「消費者に農産物の魅力を伝える動画を作る」というもの。
M氏と代表と私の三人で生産者さんや集荷場の撮影に行って、動画を編集するのは私、というのがいつものパターンです。

なんだかんだでこの仕事が始まってもう4年目になるのですが、これはまだ1年目の話。まだ私がM氏のことをよく知らない時の話です。
その時はゆずの取材でした。ゆずの生産地はとんでもない山奥にあります。事務所からは車で片道3時間半。そのうち2時間が山道という、なかなかヘビーな道のりです。
遠出の時はいつも私が事務所の軽自動車を運転しているのですが、「軽自動車ではしんどいかなあ……?」と代表が言い出しました。

というのも、M氏はものすごい巨体なのです。身長は175cmくらいで、体重はどう少なく見積もっても120kgはあります。軽自動車に乗ると、M氏が乗っている側に車体が大きく傾き、上り坂だとアクセルを踏んでもなかなか進みません。ブレーキも効きづらい。
これで山道2時間走るのは、確かに運転手の私にとってもしんどい話です……。
そこで私の車(ミニバン)で行くことになりました。

早朝に事務所を出発して、M氏を拾って一路ゆずの生産地へ。何しろ早朝だったので運転手の私も助手席の代表もまだぼんやりしていたのですが、後部座席に乗りこんだM氏は朝からめちゃくちゃ元気で、鼻歌を歌ったり、オヤジギャグを連発したり、どうやら遠足気分のご様子……。
うーん、だいぶうるさいなこの人……。

目的地周辺に飲食店があるかどうか微妙なので、山に入る直前のコンビニで休憩がてらお昼ご飯を買うことになりました。
代表と私はおにぎりやサンドイッチと飲み物を買ったのですが、M氏は
・パン3個
・おにぎり2個
・唐揚げ
1リットル紙パックのオレンジジュース
ジャイアントコーン
を買っていました。
ちょっと待てチョイスがおかしい。

私「そ、そのオレンジジュース……そのサイズはコップに入れて飲むものじゃないんですか……」
M氏「え、俺毎朝通勤の時にこのサイズ飲んでるよ
私「どうやって飲むんですか……まさかラッパ飲み……?」
M氏「まさかまさか。ちゃんとストローで飲むよ」

コンビニでもらったストローはどう見ても短いのですが……。ほんとにそれで飲めるんですか……?
いやオレンジジュースはまだ良い。
ジャイアントコーンて!!仕事相手の車に乗せてもらってその車中でジャイアントコーン食うって!!!そんなことある!?完全にただの楽しいドライブやんけ!!!

運転席に座って車を発進させると、後ろからジャイアントコーンを食べるバリバリという音が……。1万歩譲って仕事相手の車でジャイアントコーン食べるのは認めたとしても、まだ朝8時前なんだよね。こんな時間からアイスってどういうことなの……。
バリバリという音がしなくなったので、ああ食べ終わったんだなと思っていたら今度は、
ぐおおおおおお
と妙な音が聞こえてきました。まさか。

私「……もしかしてMさん……寝てます……?」
代表「寝てるね……口開けて……」

仕事相手の車でジャイアントコーン食べていびきかいて寝るってどういうこと!!??

……いやいや物は考えよう。うるさくオヤジギャグ連発されていちいち相手するのも疲れるし、寝ていてくれればかえってありがたい。
無理矢理自分を納得させて、運転すること2時間。午前9時半すぎ、目的地に到着しました。
約束は10時だったので30分ほど休憩できるな、と思いました。コンビニで買い物した時以外は3時間半運転しっぱなしだったし、慣れない山道で疲れたし。

ところがM氏は「30分くらい早くてもどうってことないって!」と言いながら車を降りてそのまま建物の中に入っていくではありませんか……。
いやちょっと待って休憩させてぇ……。てか30分早く訪問するってめっちゃ失礼だって……!

結局そのまま取材は始まりました。私は休憩する間もなくビデオカメラを持って撮影することに……。
取材は数カ所で行う予定でした。その場所での取材を終えるとまた休む間もなく次の場所へ。もちろん運転は私。これはお昼以外休憩なしと考えた方が良さそうだなあ……。

ところがお昼休憩もなかったのです。
M氏「次の取材場所までちょっと距離があるから、移動しながらお昼ご飯を食べよう」
私(ん……?)
M氏と代表は車の中でおにぎりやパンを食べ、その間私は運転。
目的地に到着したら即取材。
え?私はいつお昼ご飯を食べればいいの???

結局、取材相手の都合で10分ほど時間が空いた時に、車に戻っておにぎりを食べたのですが……いやいやこれおかしくない?なんで休憩なしで運転して撮影して、ご飯食べる時間すらもらえないの??

モヤモヤモヤモヤしながらも取材を終え、すっかりやさぐれながらの帰り道。また後ろから、
ぐおおおおおお
という音が聞こえてきました。
また寝やがったこいつ……。なんなんだこいつ、ほんとになんなんだ。

1時間ほどして目を覚ましたM氏、今度はご機嫌な様子で歌い始めました。その後も歌っては居眠り、オヤジギャグを言っては1人で大笑いしてまた居眠り
合間でいろいろと話しかけられたのですが、心身ともに疲れ切っていた私は「はい」「そっすね」と冷めた返事しかできず。すると「ねえねえちゃんと聞いてる〜?」と肩をちょんちょんされました……。うぉう、気持ち悪い。

ドン引きしている私の様子が伝わったのでしょう。その後は代表がM氏の話し相手を引き受けてくれました……。

そしてM氏を彼の事務所まで送り届け、自分の事務所に戻ってから車の後部座席を確認してみると……。

ポロポロ落ちているジャイアントコーンのカス……
シートについたチョコの汚れ……
放置されたオレンジジュースの紙パック……
その他もろもろのゴミ……

いやあの、仕事がどうとかじゃなく、車に乗せてもらってめっちゃ汚してゴミ放置して帰るって、人間としてどうよ???
もう絶対あのオッサンを私の車には乗せないと心に誓いました。
(まあ仕方なく乗せることになるんですけど)

一刻も早くM氏との縁を切りたいのですが、先日「来年度もこの仕事継続予定だからよろしくね」とのメールが来たのでどうやらまだまだ切れないようです。憂鬱。

モンスターM氏、今後もちょこちょこ登場します。
今回はここまで。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?