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デザイン事務所のお客様(8)〜人生が変わる耳つぼマッサージ編〜

こんにちは。田舎の小さなデザイン事務所で働くたまです。

今回お話しするお客様は、新しく美容系の「耳つぼマッサージ」のお店を開業するという女性Wさん。
この方は代表のお友達のお友達、つまり口コミでご連絡をいただき、オープンチラシの制作をご依頼いただきました。

耳つぼマッサージとは何ぞや、と思ってネットで調べてみると、「耳にはたくさんのツボがあって、マッサージして血行を良くすることで自律神経が整って、体の様々な不調が改善される」……といったようなことが書いてありました。
美容やダイエットにも効果がある……のだとか。ふうん(信じてない)

ちなみにマッサージや美容系のチラシの場合は薬事法の規制があり、こういう表現をしてはいけないという決まりがたくさんあります。
お客様から「こういう文章を入れて欲しい」と言われても、ご要望に沿えない場合も。
特に新聞折込チラシの場合は、新聞社独自の基準もあって、事前に内容のチェックが入るのでいろいろと厄介です。

さて、チラシの打ち合わせには通常私は同席しないのですが、この時は「SNSの公式アカウントを作りたい」というご相談もあったので、私も一緒に行きました。
何となく派手な女性を想像していたのですが、意外にも化粧は薄く地味な印象。年齢は50代後半くらいでしょうか、正直なところあまり美容系の店長さんには見えません。

そこで詳しく話を聞いてみると、耳つぼマッサージを始めるに至った経緯は、「友人に紹介されて、とある協会の耳つぼマッサージの資格を取ったから」ということで……
ははあ、と思いました。

よくある資格ビジネスというやつです。

「短期間で資格を取って開業しよう!」みたいな謳い文句で資格取得費用を巻き上げる……いや、巻き上げると言ってはいけないのかもしれませんが、正直それに近い状態だと思います。
で、資格証を発行して、開業するならお手伝いしますよ、って言って登録料だとかなんとか銘打って、さらにお金を取るというマルチ的なアレ。

きっとチラシには
『普通の主婦だった私が、耳つぼマッサージを知って人生が変わりました!』
みたいな体験談を載せるようになるんだろうなあ、と思っていたら。

予想通りでした。
Wさんが「協会本部の指導のもと制作した」という原稿には、耳つぼマッサージの施術・効果の説明に加えて、Wさんが耳つぼを知ってから開業するまでの体験談・耳つぼマッサージの講座内容が記載されていました……。
誰でも10万円弱で耳つぼマッサージの技術を習得して、開業できるようになるのだそうです。へえーー。

なんだかマルチ商法の片棒を担ぐみたいで嫌だなあ、とは思ったのですが、犯罪なわけではないし断る理由はありません。
そこからはいつも通りの手順で、代表がデザインをし、Wさんに見ていただいて修正をし、デザインが確定したら私が印刷の手配、さらに新聞折込の手配をすませました。

そして、Wさん自身があちこちに配るチラシも欲しいということで500部ほどは直接納品することになったのですが……。
いざ私が納品のためお店を訪ねると、Wさんがニコニコしながら
「ちょっとお話があるの」
と言うではありませんか……。

怖いな、と思ったのですが、お仕事相手である以上、話を聞かずに帰るわけにはいきません。
なんでしょうか?と聞くと

「このクリームとってもお肌にいいの。つけてみて」

と、明らかにお高そうな美容クリームの容器を渡されました。

あああああ……
これあかんやつや……

「すごく保湿力があるけどべたつかない。少量でもびっくりするほどのびる」
「1個2万円だけど塗るのは少しでいいから半年もつ」
「若いうちからいいクリームを使わないと年を取ってから後悔する」

等々、どこかで聞いたようなお話を次から次へと聞かされました。

こういう時の私の必殺断り文句がこれです。
「私子供の頃からとっっっても肌が弱くて、病院でもらった物以外つけられないんです……」
大嘘ですけどね。いつもダイソーの化粧水使ってます。

「それは残念ねえ。とてもいいクリームなのに。代表さんにもおすすめしたいから、今度事務所にお邪魔させてもらうわね」
と言われ、一応「はあい、代表に伝えておきます~~~」と返して、ひきつりながら帰ってきました。

きっと耳つぼマッサージのお客様にもあれを勧めるんだろうなあ。
密室で二人きり、2万円の美容クリームを勧められるってめっちゃ怖くないですか?

もちろん世の中の全ての耳つぼマッサージがこんな感じなわけではなく、きっと清廉潔白・効果抜群・明朗会計な耳つぼマッサージもあるはずです。
でも皆さん、世の中にはいろんな方法でお金を儲けようとする方がいらっしゃいますので、本当に気をつけてくださいね。

さて今回のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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