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クラウド会計を導入してよかったこと、検討するべきだったことは?

【答え】

●よかったこと:自動取り込み機能
●検討すべきだったこと:基幹システムから考える


僕が今の企業に入社するタイミングで、マネーフォワードというクラウド会計を導入してから4年以上が経ちました。
その間に体験したメリット、デメリットなどを今回はお伝えしていきたいと思いますが、まず言えることは古いオンプレミスの会計ソフトを使っているのであれば、クラウド会計に変更したほうが業務効率は格段に上がります

なのでクラウド会計を検討している場合はぜひ導入をおススメしますが、気を付けるべき点もあります
今回の記事では、なぜクラウド会計の導入がおススメできるのか、導入する際に気を付けるべき点などを書いていきます。


クラウド会計とは?

クラウドとは、インターネット上のサーバーにデータを保存し、インターネット上でサービスを利用できるような概念ですが、そのようなクラウドサービスの中で会計に特化したものがクラウド会計です。

旧来の会計ソフトであれば、自社のパソコンのサーバーにソフトをインストールし、自社のサーバー内の環境で利用するようなもので、そのように自社内でシステムを運営することをオンプレミスと言います。

オンプレミスからクラウドに変わることで、どのように機能的になるのかさらに詳しく見ていきましょう。


クラウド会計の特徴


どこでも作業・閲覧可能


まず、クラウドサービスとしての特徴から見ていきましょう。


オンプレミスでは、そのソフトをインストールしているパソコンやサーバーでしか操作ができませんが、クラウドサービスは、ネット環境がありサービスへのログインができれば、いつでもどこでも利用することができます。

メンテナンス・アップデート不要


オンプレミスの場合、アップデートやメンテンナンスがある場合は、所有者が作業したり手配したりする必要があります。
クラウドサービスの場合、それらは自動で行ってくれます。
特に会計ソフトの場合、法改正がある場合は大規模なアップデートがあり、対応に手間が係る場合がありましたが、クラウドの場合はすべてサービス提供者側が行ってくれます。

バックアップ不要


データの管理についても、オンプレミスの場合自社で手間やコストをかける必要がありましたが、その部分もクラウドの場合はサービス提供者が管理してくれます。
会計データは、企業にとって最重要データと言っても過言ではないため、データの管理面はクラウドサービスを使う大きなメリットの1つです。

イニシャルコスト不要


ソフトやシステムを導入する場合、大きな初期費用が掛かり、二の足を踏んでしまうケースもあるかと思います。
一方クラウドサービスは基本的にサブスクリプション方式が多く、利用期間中に応じて支払をする形式であるため、大きな初期費用がかからない場合が多いです。

仕訳自動取込

ここからは、クラウド会計ソフトとしての特徴を見ていきます。

金融機関やクレジットカードと連携することで、入出金明細やカードの利用明細などのデータを会計ソフトに取込み、仕訳を簡単に起こすことができます。

仕訳学習機能


仕訳自動取込などで取り込んだデータを、AIが学習し仕訳の提案をしてくれます。
例えば、「電気代」という明細の取引が合った場合、「水道光熱費」という仕訳の提案をしてくれます。
正しく学習してくれれば、勘定科目を選択する手間が省けてワンクリックで仕訳を起こすことができます。

周辺業務との連携

プロダクトラインナップ_page-0001

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3994/ir_material_for_fiscal_ym/93576/00.pdf

給与計算などの人事労務領域、経費精算などの経理処理など、クラウド会計の周辺業務に関するサービスも展開していることが多いため、そのサービスを利用することでより効率的に会計処理を行うことができるようになります。


仕訳自動取込が最大のメリット


クラウド会計を使う最大のメリットは、この「仕訳自動取込」であると言えるので、その機能をもう少し紹介していきます。
ひとつ断りを入れておくと、厳密にはクラウド会計ソフトに必須の機能ではないという点です。

ですが、僕が知っている限りクラウド会計ソフトにはこの機能がついていますし、ついていなければクラウド化する意味はほぼないと思います。
そのくらい重要な機能です。

入出金明細取得


https://biz.moneyforward.com/accounting/feature/automations/

イメージの通り、銀行などの金融機関の取引情報、クレジットカードの利用明細などのデータを取込み、それまでの会計入力データやビッグデータを基に仕訳内容も提案してくれます。

仕訳提案

https://biz.moneyforward.com/accounting/feature/automations/

仕訳内容の提案とは上記のようなイメージです。

例えば、「Amazon.co.jp」の利用明細であれば、書籍の購入であると認知し、「新聞図書費」という仕訳を提案してくれます。
電気代、電話代などの一般的な経費はビッグデータを基に、その他の企業ごとに特徴のある取引も学習してくれます。

例えば、スーパーなどの小売店に食材を卸す企業であれば、得意先であるスーパーからの入金であれば「売掛金」の消込仕訳を提案してくれます。

削減効果_page-0001

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3994/ir_material_for_fiscal_ym/93576/00.pdf

この自動取込機能を主として、クラウド会計を使うことで、会計業務が2分の1に短縮できる可能性があります。(マネーフォワード調べ)

このデータは、マネーフォワードの利用者アンケートを基に算出していますが、僕の勤めている企業で時間の短縮を計算してみると、経理業務全体の30%は削減できました
重宝して使っている機能はほぼ仕訳提案を含む自動取込機能なので、ほぼそれだけで30%も削減できて、導入して良かったと実感しています。

なぜ30%も業務削減ができたのか?


純粋に、オンプレミスの会計ソフトを使っていた時と比較すると、一目瞭然です。
金融機関取引についての仕訳で比較してみましょう。

オンプレミスでの会計処理の場合 → 自動取込機能での会計処理の場合
記帳 → 不要(自動取込)
通帳確認(明細を見る) → 不要(仕訳提案あり)
日付入力 → 不要(自動入力)
勘定科目入力 → 勘定科目選択
金額入力 → 不要(自動入力)
摘要入力 → ほぼ不要(自動入力もしくは修正)

旧来のやり方と比べると、これだけ不要となる作業、もしくは削減される作業が増えるわけです。

こういった根拠を基にクラウド会計の導入をおススメしていますが、とは言っても手放しにおススメしているわけではありません

導入に際して、気を付けるべきポイントについても解説していきましょう。

クラウド会計導入時に気を付けるべきこと

基本的にカスタマイズできない


これは、市販のオンプレミス会計ソフトを使っている場合でも同じですが、クラウド上に用意されたサービスを利用することになるため、カスタマイズは基本的にできません。
自社用にフルオーダーで開発された会計ソフトを使っている場合は、むしろ効率が悪くなる可能性もあります。


経営分析機能は弱い(マネーフォワードに限る)


本格的に使ったことがあるのがマネーフォワードだけなので、一概には言えませんが、経営分析機能は僕が以前使っていたオンプレミスソフトの方が優れていました。
部門別損益や前期比較などは可能ですが、経営分析レベルのことを自動化する領域には至っていない状況です。

会計処理を工夫すれば、収益性分析や、得意先別、仕入先別の分析指標などを出すことは可能です。


対応できない税理士もいる


会計ソフトが違っていても、会計ソフト同士のデータのやり取りは基本的には可能ですが、中にはクラウド会計に対応できないという税理士もいます。

どうしてもその税理士に顧問を依頼したい場合は別ですが、今後の時代の潮流をみても、クラウド会計に対応できない税理士は変更したほうがいいと個人的には思います。


基幹システムとの連動性


企業の業務の根幹的なシステムを基幹システムと言いますが、そのシステムとの連動性は非常に重要です。

僕が最も気を付けるべきポイントだと思っているので、この部分を掘り下げて解説していきましょう。

基幹システムとは?


気を付けるべきポイントを解説する前に、そもそも「基幹システム」とは何か、ということについて解説しておきます。

基幹システムは「これが基幹システムである」という明確な定義があるわけではありません
企業の根幹的な機能を管理しようとするシステムの総称であり、複数のシステムを指す場合もあります。

一番イメージしやすいのは、そのシステムが停止した場合に完全に企業の活動も停止してしまう、もしくは壊滅的な影響を受けるシステムです。

例えば運送業であれば、配送管理システムが基幹システムであると言えます。
入荷した商品の情報、配達日時や配達先の情報などが詰まっているシステムであるため、そのような情報が使えなくなれば業務がストップするか著しく滞ってしまうからです。
卸売や小売であれば販売管理、製造業であれば在庫管理など、ある程度業種によって基幹システムは絞られてきます。

また、会計や人事労務などのバックオフィス系のシステムは、業種や業態に限らず基幹システムである可能性が高いです。
会計や労務データは、業種業態関係なく共通して必要かつ重要なデータだからです。

基幹システムの連動性が最も重要


僕が今勤めている企業は卸売業ですが、多くの社員が使い、その頻度もかなりものであるのは、販売管理システムです。

つまり、販売管理システムが僕の勤める企業の基幹システムであり、その一方で会計システムは僕を含めて使う人間はかなり少数で、重要なシステムではありますが基幹システムとは言えないものでした。

この場合、基幹システム以外を考えるうえで優先すべきなのは、今の基幹システム(販売管理システム)との相性、つまり連動性です


なぜ基幹システムとの連動性が重要なのか?

基幹システムとの連動性がなければ、ダブる業務が出てくる可能性があるからです。
基幹システムと会計システムが連動していない場合、例えば得意先からの入金処理は、販売管理ソフトにも会計ソフトにも入力する必要がでてきます

逆に連動している状態というのは、会計ソフトか販売管理ソフトいずれかに入力された情報が、入力していないほうにも反映されるようなことです。
ダブる業務ほど無駄なことはありません

今もし会計ソフトと基幹システムがうまく連動している場合は、無理に会計の自動取込機能という部分的な業務にのみ目を向けて、会計システムのみ変更してしまうと、むしろ業務効率が悪くなってしまう可能性も考えられるのです。

システムを変えることで得られるメリットも見る必要がありますが、今の機能から失われるものも見て、全体の業務を見て最適化をはかるべきでしょう。

また、全体の業務を見る中でも、基幹システムを中心にして検討する必要があります
最近では、API(Application Programming Interface)連携という、ソフトウェアの機能を共有する仕組みも多くなってきているため、基幹システムと違うシステムを導入しても、連携が簡単にできるようになってきています。

まとめ(クラウド会計導入のポイント)


それでは、これまでのポイントのおさらいも含めて、クラウド会計を導入する際のポイントと流れを確認しましょう。


まず基幹システムを特定する


まず、自社の基幹システムは何かを特定しましょう。
このシステムが無くなったら、うちの会社は終わるな」というようなことを考えると、特定しやすいです。

もし、システムがない場合でも、業種業態などで基幹システムのパターンはあるので、「基幹システムを導入するとしたら○○管理のシステムだな」というようなイメージはしておくといいでしょう。


基幹システム中心に考える

その基幹システムを中心に、どのようなオペレーションで企業の業務が動いているのか、つまり業務の仕組み把握します。
その仕組みの中で、会計システムと連動すべきポイントを把握します。

例えば、先ほどの例に出た得意先からの入金処理などです。
クラウド会計が、基幹システムとの連動が可能かを把握します。

この検討をする最大のメリットは、会計業務という限られた部分の効率化だけでなく、企業の全体の仕組みの効率化を考えられることです。
会計システム変更に乗じて、全体の仕組みも見直すきっかけにしてみるといいでしょう。

手っ取り早いのはERP


ERPとは、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略であり、基幹システムのみならず企業の全てのシステムを統合するという概念です。

以前から、「ERPシステム」という、全てのシステムがパッケージ化されたものも販売されており、自分たちでシステム同士の連動を検討するよりも、手っ取り早く連動したシステムを手に入れることができます。

例えばこんな感じです。

●ERPのイメージ例①【freee】

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 https://www.freee.co.jp/kb/kb-accounting/erp/


●ERPのイメージ例②【GEN】

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https://www.gen-square.com/7cloudservice/

このようなイメージでデータを一元化することで、より効率的な管理が実現できます。
現在はクラウドのERPが主流になってきているため、必然的に会計もクラウド化できます。

基幹システム等の連動性は確保しやすくなりますが、自動取込機能や仕訳学習機能などのクラウド会計の最大のメリットが享受できるのかも、合わせて確認する必要があるでしょう。

悩んだら、お気軽に相談を


僕の経験も含めて、クラウド会計の導入ポイントを書かせていただきました。

もし、システム関係や業務の仕組みづくりなどでお困りの場合は、相談を受け付けていますので気軽にご連絡ください。



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