渓流フィッシングと言う名の沼 7話

相変わらずのペースで目の前の川に通っている。
釣り場が荒れてしまわない様に毎回少しづつポイントをずらしていた。
わかってきた事がある。
この川は完全なるニジマス河川だ。
下流の方に行くと稀にウグイがいる事もあるがほぼニジマスと言って良いだろう。
何度も源頭まで歩いたがどこまで行ってもニジマスである。

初心者の私は昨年の夏から釣りを始めた。
夏、秋、冬と川を観察し続け、初めての春を迎える。

そんなある春の日、知人と一緒に目の前の川を歩く事になった。
彼はフライフィッシャーである。
釣り方に関して多くを語らず、とても自然体な人間である。
ベテラン釣り師だ。

私はパチパチとルアーを投げながら先を進み、彼は静かにフライを流しながらゆっくりと後ろに続く。
私は釣りに関してはど素人だがこの川の地形とルートに関してはある程度把握しているという自負がある。
周りが引くほどこの川に通い詰めているからだ。
そんな流れで私が道案内をした。

まだ気温水温共に低く魚の活性はかなり低い。
ルアーをいくら投げても魚は見向きもしてくれない。

「そりゃそうだ、周りはまだ雪だらけだ」

と自分に言い聞かせながら魚にかまってもらえない苛立ちを隠した。
だがしかしである。
後ろをゆっくりとついて来る彼は確実に魚を釣り上げているのである。

「何でだろう」

自分が初心者だという事を忘れ悔しい気持ちで一杯になる。
この日は6時間歩いた。
私はほぼノーチェイス、釣果はゼロ。
彼は数匹釣り上げていた。

ドッと疲れが込み上げる。
春のこの季節、私もすでに何匹かの魚を釣り上げていたがこの日は綺麗にゼロ。
謎のモヤモヤで前が見えなくなった。

今回はここまで

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