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【現場学校レポ】素地と知識が説得力を生む|アートディレクションの現場(中川 直樹さん)

こんにちは!
ライブ配信セミナー『現場学校』レポート班のSカオリです。

2019年2月7日に開催された、中川 直樹さんのセッション「アートディレクションの現場」のセミナーレポートをお届けします。

今回はですね…あまりにも内容が濃くてわたしの脳が処理できず、どうまとめたらいいかが難しい!あれこれ書き出すととんでもない長さになりそうなので、印象的な部分をかいつまんで行こうと思います。

アートディレクターってどんな人?

まずわたしは、今までの制作現場で「アートディレクター」という立場の人と一緒に仕事をしたことがありません。そのため、そもそもアートディレクターって普通のディレクターと何が違うのか、デザイナーと何が違うのかを前知識として知らない状態から講義がスタートしました。
中川さんの株式会社アンティー・ファクトリーではこのような形でアートディレクションが行われているというお話をしていただきました。

まず思ったのは、「アートディレクターに求められる知識量と感性、言語能力は一筋縄じゃない」

アートディレクターの仕事とは、クライアントの課題(サイトを作りたい、動画を作りたい…)に対して、クライアントの求める一歩先を提案する存在。
提案するためには、あらゆる分野への知識や造詣の深さが必要になります。
生み出したアイデアを実際に形にするために、イラストは誰が担当するか、写真は誰が担当するか、デザインは誰が担当するか…ともっとも適した人を配置する。制作段階ではブランドイメージに沿っているか等最後までクオリティが保たれているかをチェックする(=クオリティコントロール

いままで、手が空いてるならこの案件のデザインはあなたがやって、とか、デザインしてるうちにここ写真よりイラストがいいかな〜(描くor探す)みたいなやりかたしか経験してこなかったわたしには、正直未知の世界です。

通常のディレクションでは、クライアントと作業者との間で橋渡し役であったり、進捗管理だったり…という感じでデザインはデザイナーに任せられる(ディレクターはあまりデザインのほうに顔を突っ込んでいかない)場合も多いのですが、アートディレクターはまず誰よりもデザインアイデアを考え、デザイナーはそのアートディレクターのアイデアを形にする役割、という感じでしょうか。

アートディレクターに必要な5つの能力とは?

「この5つがあればアートディレクターになれる!」とのことですが
ものすごく高度なことばかりです!

特に中川さんが何度も講義中におっしゃっていたのが「自信を持って」「信念を持って」という言葉です。それだけブレない姿勢のディレクターって制作スタッフからしてもとても頼もしいです。

アートディレクターに必要なスキルとは?

・イメージの言語化
・共有する手法
・各エレメントに対する知識

こういう風に作りたい」「なんかかっこよくない」といった、「こういう」「なんか」を的確な言葉にできるかが大事なスキルになります。

キーワードを使って制作の方向性を言語化する。
ブランドイメージからキーワードを抽出し、そのキーワードからデザインの表現手法としてどんなものを考えられるか。

言語化したものをビジュアライズする。
イメージボードを作成。音楽たとえ(聖子ちゃんぽさor明菜ちゃんぽさ)、オノマトペで表現(ズガーンってかんじ)など。

エレメントに対する知識を養う。
素材に関する知識と技術=色彩、図形、フォント、写真
画面をまとめる構成力=情報整理、レイアウト
全体をまとめる構成力=UI、UX

デザインの現場では、イメージが正確に共有されないことで、出来上がったものとクライアントの希望とが噛み合っていない、ということが起こり後半で覆されるということが起きがちです。
アートディレクターは言葉やイメージボードやあらゆる五感を使って、とにかくそのイメージをきちんと伝えられる技術がとても大事ですね。

余談)つくづく思うのですが、「1を言って10まで察することができる人を優れている」とする傾向ってありますが、わたしは「1から10まできっちり言わず誤解が生じたら、それは言われた側の理解力ではなく言う側の伝達力の問題だ」と思っているタイプの人間なので、絶対にこのイメージを確実に伝えるぞ!!という姿勢、もっと持つべきだなと思います。

アートディレクターが気にするべきポイントとは?

これちょっとハッ!としたのは、
「デザインを50%にして5W1Hがちゃんとわかるか?」というチェックの仕方です。細部のテキストまで読めなくても、ぱっと「何」「誰」「いつ」「なぜ」「どのように」がわかるデザインになっているか。
これは自分でも、紙のデザインでもWebのデザインでもやってみるべきだなと思いました。

あとWebデザインのトーン&マナー

このトーンという概念をきちんと理解できているかどうか、がアートディレクターには必須で、色彩論については絶対にアートディレクターは押さえておくべきです。
色相・明度・彩度に色のトーン…ああ〜色彩検定で勉強したなぁ…

この色のトーンについてのイメージをきちんと押さえること。
例えば「和風」と言っても、絢爛豪華な和風、わびさびの和風、歌舞伎のような和風、伝統的な和風、それぞれで使われる色のトーンや表現が全然違います。

文字(フォント)のお話も興味深かったです。
書体が生まれた国や時代背景まで知った上で、書体を選ぶことでなぜこの書体にしたのかの説得力が生まれる!

単純に書体の種類(明朝・ゴシック・筆書き…など)によって与える印象が違うよね、というのは比較的簡単に気をつけることができますが、
ドイツ由来の商品のデザインなのにアメリカンな書体を使うと、一見見た目はかっこいいフォントでもなんでこのフォントにしたんだろう?アメリカ関係ないのに?というちぐはぐさが生まれてしまう…という。
確かに、そう言われるとドイツで生まれたフォントを選ぶほうが説得力あるなぁと思いますよね。

でも言われるまで「え、そこまで考えて書体って選ぶの!?」と思って少しおどろきました。
フォントって世の中に膨大にあるから、どんなフォントがいいかな〜って考える時に、ついついグラフィックソフトでデザインに乗せたテキストの書体をぽちぽち変えて「うーんこれならかっこいいかな」「このフォント好きだからこれにしよ〜」って決め方をしてしまうことが多いです…。それで済んでしまう案件にしか関わってこなかったというのもありますが。
そんなところまで考えて書体を選ぶってことしてなかったなぁとちょっと脳を殴られた気持ちになりました。

ここで美術史やデザイン史といった知識が必要になってくるんですね。

美的感覚やインスピレーションはどうやって養う?

以上(割愛しつつ)アートディレクターがいかに知識や造詣を必要としているのか、ということを説明してきましたが、これからアートディレクターを目指していく場合、アートディレクターとしてアイデアのインスピレーションを磨くには、何をしていけばいいのでしょうか?

インプットをたくさんして、いいと思ったデザインや色遣いをどんどんストックし、「次の案件でこういうデザイン使ってみよう」というタイミングで実際に使ってみる!ということをされているようです。

これはデザイナーやイラストレーターでも同じですね。いろんなものを見ていいなと思うものをどんどん溜めて引き出しを増やすことが大事です。

それとさらに抽象的なイメージを言語化する訓練、デザインや美術に関する学問の知識吸収、マイクロインタラクションに必要な行動心理学…などを身につけていくことが必要なんですね。

アートディレクションというポジションのお話に触れて

冒頭でも書いた通り、わたしは今までアートディレクターという立場の方と一緒に仕事をしたことがなく、これだけのことを考えながらディレクションを行うという場面も実案件で経験したことがありませんでした。

現在は営業兼ディレクターと、デザイナー兼コーダー(わたし)の二人組で案件を行なっているため、今後もアートディレクターと絡む機会は少ないかもしれません。

でも、二人組だからこそ、ディレクターも単純にクライアントとの折衝だけでなく、ふんわりしたイメージをデザイナー任せにせずもっと明確にクライアントやデザイナーに共有できなければならないし、
デザイナーはなんとなくではない根拠あるトンマナでデザインを作り上げなければならないなと思います。
要するに二人ともアートディレクション的側面をもう少し持った方がいいのかなと感じたりしました。

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https://gbgk.jp/

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