三島由紀夫監督作品 「憂國」〈2枚組〉DVD
三島由紀夫が割腹自殺を遂げる4年前に同名の自作をもとに製作した自主映画。とはいえ知り合いの映画スタッフに声をかけ、全員が会社に内緒で夜中にスタジオに集合して撮影したといいます。
二・二六事件に参加できなかった新婚の中尉が、叛乱軍と目された自分の仲間(青年将校)の討伐部隊に心ならずも参加させられたことを恥じ、妻と共に心中する物語。三島は割腹し、妻は短刀で自害します。
映画はサイレントの作りですが、全編にワグナーの「トリスタンとイゾルデ」が流れています。三島にとっては最初で最後の映画監督になりました。
三島の映画好きは有名で、人気作家となってからは脚本のみならず俳優としても映画に出ました。そのため、映画界の知り合いが多かったのです。撮影や照明は完全にプロの仕事で、自主映画の未熟さはありません。
映画「憂國」は東宝とATGによって共同配給され、海外の映画祭にも出品されて物議を醸しました。
1970年の暮れに三島と楯の会が自衛隊市ヶ谷駐屯地の総監室をジャックして割腹自殺したニュースは世界を駆け回りました。そのこともあって瑤子未亡人が映画フィルムを焼却して封印、この映画は長く幻の作品になっていました。
2005年に唯一残ったネガフィルムが発見され、共同製作者の藤井浩明が制作したのがこのDVDです。藤井はかつての撮影スタッフを集めて座談会を開き、その模様はDVDの映像特典として収録されています。
DVD制作スタッフの「三島愛」が感じられる、とても豪華な造りのDVDとなってます。別冊冊子には三島の「制作意図及び経緯」が収められており、三島自身の筆で映画製作の詳細が書かれています。また、ツール映画祭に出品されたときに配布された、三島自身の作品解説文が完全再現されて同封されています。
視聴は一回のみ。Amazonではまだ5523円で購入できるようです。
「憂國〈2枚組〉」
三島由紀夫 / 鶴岡淑子 / 三島由紀夫
三島由紀夫と若者たち」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?