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【鈴木清順大正三部作②】「陽炎座 デラックス版」('81シネマプラセット)

「ツィゴイネルワイゼン」が予想外の当たりを取り、銀色のドームだけの興行だったものが普通の映画館でもやるようになって、たまたま始まった第一回東京国際映画祭でグランプリを獲ってしまい、表舞台に復帰した鈴木清順。

前作の3倍の製作費がかけられるようになって撮ったのが「陽炎座」です。前作の原作は内田百閒「サラサーテの盤」でしたが、今度は泉鏡花。とはいえ原作の影も形もないくらい清順アレンジが施されております。

基本的なテイストは前作「ツィゴイネルワイゼン」の延長ではあるんですが、「清順歌舞伎」と呼ばれるくらい画面と演出に癖がある鈴木清順の特徴が良く現れた一作です。

例えば冒頭シーンで主役の松田優作と大楠道代が道を隔てて会話するんですが、同じ画面に収まったカットが一つもなく、どう見ても別の場所で撮ってるんですよ。それでも映画としては2人の会話になっている。そのことに何の説明もない。この通常の映画常識を飛び越えた「変な演出」をすんなり飲み込めるかどうかが、鈴木清順の映画に入れるか入らないかの分かれ目になる気がしますね。

松田優作と大楠道代がセックスするシーンなんか、現場で「いかにあり得ない体位をさせるか」で大変だったみたい。画面では、絶対にセックスできないような体位でセックスさせてるんですよ。いや、もうセックスには見えません。

「何でそんな撮り方するの?」と疑問に思っては鈴木清順の映画は観られませんよ。とにかくそういうものなんだ、と思って見ていれば、幽玄の世界に入れるようにできております。

鈴木清順といえば桜の花。桜の花が満開に咲いたり、綺麗に舞い散る画面がいつも印象的なんですが、これは「ツィゴイネルワイゼン」でもそうでした。桜の花を合成画面で変な色にしたりしてましたが。

「陽炎座」でも、白い着物姿の大楠道代が満開の桜の木の枝に立っているシーンがあるんですが、とても印象的な画面なのですが、何でそうするのか全然分からない。

清順映画って、理屈ではない「綺麗な画面」のオンパレードで、通常のリアリズムでは作られてないんですよ。「ほら、綺麗でしょう?」と言いたいから映画を作っているのではないですかね。

「陽炎座 デラックス版('81シネマプラセット)」
松田優作 / 大楠道代 / 鈴木清順
定価: ¥ 4700

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↑プライム・ビデオ「陽炎座」


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