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人事評価制度を導入したのにうまくいかないのは何故?(後編)

人事の処方箋は千差万別

前編では人事評価制度がうまく機能しない例を挙げつつ、100年企業では「会社の風土という地盤に、人事評価制度の仕組みをゼロから丁寧に構築している」ということを紹介しました。まさにこれが回答であり、逆説的に言うと「会社の風土を無視した人事評価制度は画餅に終わる」ということになります。
 
 前編の①、②のケースは共に、会社に人事評価制度を乗せる土壌がないのに勢いで導入してしまった典型です。その土壌も、会社によってそれぞれのカラーがあります。
 
 人事評価は、とてもナーバスな問題です。効果を期待するのであれば、自社の風土はどのようなものかということに向き合い、社員には「なぜ制度を導入するのか」という説明をきちんと行い、最も適した方法を選択して運用していく必要があります。
 これは薬の処方と同じです。医者が問診し、インフォームド・コンセントの義務を果たした上で、患者に合った薬を選択して、過不足なく処方する、という流れを守らなくてはならないのです。
 
 これを無視すると、社内がぎくしゃくしたり、疑心暗鬼に陥ったりする原因になります。最も違和感が出やすいのが「フィードバック」です。「私は君をこう評価している」ということが正しく伝わり、経営に良い効果をもたらすためには、そこに至るまでの密接なコミュニケーションと信頼の構築が必須。建前と本音を使い分ける日本人の気質からすると、なかなかのハードルです。

人事評価制度は取扱いにご用心

以上のような流れを安易に考えてしまうと、人事評価制度を導入した結果、運用がつまずき、挙句の果てに「こんな制度、いらなかったのでは」という羽目に陥ってしまいます。
 
 一部の企業では、制度を取り扱うことが好きな人が「面白そうだ」と旗振り役をつとめて導入するような例も見られますが、人事はゲームのようには進みません。面白いというよりも、根回しやメッセージで人の心を動かそうとする、地味で泥臭い仕事といった方が近いと思われます。
 
 人事評価制度は、賃金にも直結するものであり、それは社員のモチベーションにも作用します。まずは制度の導入以前に、社内に土壌を作って、基礎を固め、それを継続できるようにしていくことから始めなければなりません。
 
 こと日本においては、“社員のマインド”という不確定要素をあらかじめ方程式に組み込んでおかないとうまく行かないのです。迷った時には、プロによる第三者視点でのアドバイスに頼ってみてください。