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伝習録に学ぶマネジメントの極意! 福博えびす大学「立志」の巻

“志”は良心によって築かれる

皆さんは「立志」という言葉にどんなイメージをお持ちでしょうか? 「何かを成し遂げる決意」といったものかもしれません。あるいは、経営者であれば起業しようと思った時の自分を思い浮かべるかもしれません。
しかし、王陽明は少し違った視点でこの言葉を説明し、弟子たちを導いています。以下は伝習録からの引用(超訳)です。
 
ある日、王陽明の弟子が「志を立てるとはどういうことですか?」と聞きました。それに対して、陽明先生は以下のように答えました。
 
「どんな時にも良心を忘れないこと、これが“志を立てる”ことに繋がる」
 
「良心を意識し、自分のものにすることで美・大・聖・神の境地に達することもできる」
 
「自らの中に働く大自然の摂理を意識し修養することで人格を高めることができる」
 
この“立志”をもって日々の生活を送れ、というのが王陽明の回答だったのです。ちなみに「美・大・聖・神」というのは、人が良心を発揮し、影響力のある優れた人物になっていく段階を示した、孟子の言葉です。
 
何か「志を立てる」というと、冒頭のようなイメージで捉えられがちですが、王陽明は、良心をしっかり持ち、その上で日々の生活を送り、様々なことに対処していく中でおのずとその境地に行けるのだ、ということを語っています。

会社経営も生き方も
根を張った大木のように

人は人生を送る上で、「生きる目的は何か」とか、「ビジョンを持たねば」などと考えます。しかし王陽明の言葉からは、自分の外にある目標ではなく「内側=本質が大切だ」というメッセージが読み取れます。これは、会社の経営でも同じことが言えるのです。
 
経営において、会社のビジョンや使命、行動方針、企業理念などは非常に大切です。しっかり目標が定まっていれば、ゴールから逆算して現在位置を知ることもできます。しかし、外にある目標が全てではありません。
 
例えば経営者には、明確な目標を設定してそこに向かう、登山家のような「目標設定型」の人と、わらしべ長者のように、様々なターニングポイントに対処してベストな結果を出していく「目標探索型」の人がいます。社員の場合は、目標探索型の人が多いように感じます。
それに対し、我々社労士が行っているマネジメントは、まず目標を設定し、現実とのギャップを埋めていくというものが大半です。もしかして、これは偏ったことをやっているのかもしれません。
 
王陽明が言う立志は、樹木に例えると、“心のあり方”が根、“行動”が幹、“成果”が枝葉です。枝葉を豊かに茂らせるためには、根がしっかりと張っていることが大切。心のあり方がしっかりしているから行動がぶれない。その結果、成果がはっきり表れるということです。
ここで少しだけ考えをシフトし、偏った、手っ取り早い方法をとらないように、そして本末が転倒しないように、“立志”について考えてみることが重要なのかもしれません。
 
 
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