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2024/02-2024/03#tanka

自選二十首


ヒタキの声だよたぶんそう半身に日差しの温もりを感じているじゃないか紙飛行機は壁に当たって嘴がひしゃげているじゃないか

公園の話だったね映画のことだよ水たまりは靴の傍にあってあなたは今日も真っ逆さまだ

鏡よ鏡せかいでいちばん揺らいでいる私をよく映すわねえ、それで映したつもりなの?

けさ家の前の梅が咲いていました。まるで雨上がりの寂しさでした

好き勝手なことをお喋りする小鳥たちをみんな人間にしてあげました。蛇だ

タンバリンを鳴らす酢橘を搾るルーブルへ行かない今なん時

あなたのことを子どもが描く太陽のようだとおもったの、それはあなたが撮った花を照らす光の色だったんでしょう

大きな窓の大きなガラスのきれいな足元には小鳥が目を回していたりする。運が良ければね

噛み放題のガムをあなた噛みもせずに飲みこむの、失礼でしょ、謝りなさいよ風船になるわ

その魂は一度だけ空を飛んだ折の遠いあかね色ばかりを繰り返し語って、というよりもそれ以外に語ることのできる事柄を持たなかった。幸福、そんな下らない名前を与えてはいけない。最後はいつも水に落ちる、あちらの魂が自動車にぶつかったように、そちらの魂が雪に埋もれたように

カボチャよカボチャよ私のうつくしいカボチャよ蛇を吐くのはやめておくれ山羊に取り憑くのはやめておくれ

比喩で三回くらい殺してみた物体を啄んで鴉がお腹いっぱいになっている、頭のいい動物は残酷なほどかわいいのよ、今日のハイライトです

階段の手すりのぐらついているところ猫はお気に入りなの。直すってお気に入りじゃなくなることね

水面に小石を投げてみるように車窓を鏡にしていませんか

今夜は少し寒い。これいつ終わるんだろうって思ってしまう時も永遠に似ているじゃない

私は去ってきたのだけれど追いかけてきます追い抜いていっていいのよ、背を押さないで春一番

歯を磨きました。はっきり言ったNO が受け取られない時に咲く花がありますね

私の虎よ出ておいで私の懐には小さな扉があって開けば青空、虎は飛び込んだ

風が次々やってくるので名を与えてやると少しだけ笑顔になって去ってゆきます

パレットの乾いた絵の具の上に埃が積もるように、猫は帰ってきていたのよ、ずっといたのよ

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