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令和4年度観光庁予算概算要求を解説!今年追加された新規項目は何? 週刊インバウンドニュースマガジン8月5週号

令和4年度の予算要求が公開!ポイントはアフターコロナで変わった生活・旅の形

令和4年度観光庁関係予算概算要求概要(観光庁)

令和4年度における観光庁予算の概算要求が公表されました。

観光庁の予算要求は、政府及び観光庁が現在どの部分を課題と捉えているのか、どの分野を重点的な成長分野と捉えているのかを伺い知る大切な情報です。

また、要求された予算分野に関する事業が発生する可能性も高いため、観光業界に身を置いているのならば、きっと役立つはずですので、ぜひ目を通してみてください。

なお、必ずしも要求した通りの予算がおりるわけではありませんが、上記のような傾向を測るには概算要求資料のチェックで問題ありません。

例年この時期に概算要求が行われ、年末から翌年始にかけて正式に予算が決定されております。

今週は、発表されたばかりの予算要求の内容を、以下の4つの項目に分けてチェックしていきます。

0.基本方針
1.予算規模の大きい項目
2.今年新たに追加された項目
3.昨年比で額の増加率が高い項目

なお、比較対象として令和3年度の予算要求資料も見ていきます。

令和4年度予算概算要求の概要
https://www.mlit.go.jp/common/001420093.pdf
令和3年度予算概算要求の概要
https://www.mlit.go.jp/common/001364204.pdf

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0.基本方針のチェック。ポイントは旅行業界支援と旅行単価向上

まず最初に基本方針をチェックしてみましょう。短いのでそのまま引用致します。

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こちらを見てみると、観光庁の来年度の方針は以下の2つに分類できそうです。

1.旅行業界支援
・危機に瀕する観光地・観光産業の存続に万全を期す
・観光の本格的な復興の実現を図る
2.旅行単価向上
・中長期的な滞在者や反復継続的な来訪者の増加
・稼げる地域の看板コンテンツの創出

昨年から大きな流れは変わっていませんが、その具体的内容にはどんな変化が起きているのでしょう? 詳しく見ていってみましょう。

1.全体の予算の中で特に規模の大きい3つの項目

1-1.訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業 (要求額 34億8000万円)

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全体で2番目の規模となる予算項目は、トイレやWiFiなど、主に観光関係施設のハード整備を支援する「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業 」です。

昨年も30億を超える予算が投じられており、"継続だしもはや緊急ではないな"という感も否めませんが、それだけまだまだ日本の観光が訪日対応できていないということなのでしょう。

キャッシュレス化、バリアフリー化など、整備すれば訪日客だけでなく国内のお客様にとってもメリットの高いハード整備。費用の1/3〜1/2程度が補助される事業が出ると想定されます。

ぜひご活用ください。

1-2. 戦略的な訪日プロモーションの実施 (要求額83億3000万円)

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JNTOによるプロモーション予算です。それぞれの項目については、昨年と似通っている点が多いようです。ただし、昨年は「安心安全情報の発信」項目が立てられていましたが、今年はなくなっています。

一方で、昨年もあった「リピーター層に向けた情報発信」の項目には、昨年はなかった「アジア市場のリピーター層」というキーワードが含まれており、よりターゲットが明確化されています。

その他、アフターコロナで高まった旅行需要である「スポーツ、アドベンチャーツーリズム」についても、独立したPR項目が立てられています。

1-3.国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開 (要求額 240億円)

桁違いに大きいこちらの予算。昨年、一昨年も計上されており、内容は空港などでの出入国審査の簡易化や、多言語解説整備などに当てられてきました。

ただし、インバウンドが停止し旅客税を得られていない状況で、どのような予算が認められるかは不透明であるため、今回詳細な解説は控えさせていただきます。

2.新規追加された項目は3つ。いずれもアフターコロナ・ウィズコロナを意識

続いて新規予算に注目してみたいと思います。今回の概算要求では、昨年には存在しなかった予算項目が3つ追加されています。

1つ目が「ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業」です。

2-1.ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業(要求額 4億5000万円)

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ポストコロナで、私たちの生活のスタイルや社会のあり方は大きく変わりました。また、先週のマガジンではアメリカAirbnb社の業績ニュースから、コロナでアメリカの旅が変化したことにも言及しています。

こちらは、そんなポストコロナで生まれた新たな旅の需要を獲得しようとする地域に対して、支援を行う予算になりそうです。

テーマとしては、自然観光・SDGs・スポーツなど、昨年から話題に上がっている旅行ジャンルが合致するでしょう。

また、資料では「中長期滞在者や反復継続した来訪者の増加(第二の故郷づくり)に取り組む地域に対して」支援を行うと書かれています。ワーケーションや二拠点居住の促進などに取り組む地域には、有利な事業が生まれそうです。インバウンドというよりは国内を向いた施策・予算です。

事業の形としては、専門家伴走によるマーケティング支援やコンサルティング、モニターツアーの実施という、昨年増えてきた形の事業が発生するように思われます。

2-2.持続可能な観光推進モデル事業( 4億5000万円)

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SDGsですね。

昨今、急に一般的に知られるようになったSDGs。キーワードだけはよく見聞きしますが、観光の分野ではまだまだ成功事例と言われるものが少ないのが現状です。

そのような状況を踏まえてか、令和4年度は「持続可能な観光地経営のモデル形成」が主眼となっています。

SDGsの観点で、オリジナリティを打ち出していきたい地域にとっては、チャンスの1年になるかもしれません。

残念ながらインバウンドが2019年の水準に戻るのにはまだまだ時間がかかるでしょう。しかしいずれ完全復活すれば、その際はまたオーバーツーリズムなど地域の環境・社会との共生に関する問題が発生します。

来年はそんな未来を見越した、持続する地域観光づくりの1年を目指しましょう。

2-3.ブルーツーリズム推進支援事業(要求額3億円 )

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今年4月に海洋放出が決まった、福島第一原発の処理水。決定発表直後から、国内外より議論の声があがり、福島県の農産・海産品に対する風評被害が再び高まりました。

経済産業省など、その他の省庁でもこの問題に対する対策事業が生まれているようですが、観光庁では観光・レジャーの観点での取り組みを予定しています。

ハード面の改修の他、海のアクティビティ造成や、正しい情報と魅力を伝えるPRも行われるようです。

3.昨年比で額の増加率が高い2項目

最後に、昨年度と比べて予算が大幅に増加している項目をチェックしてみます。

必ずしも要求した金額の予算がおりるわけではありませんが、観光庁の「この部分をもっと強化したい!」という意識を伺い知れると思います。

3-1.新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援 (要求額7億円)

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昨年からおよそ7倍に増えた予算項目です。名称からはよく内容が見えてきませんが、新たなビジネス手法とは1.新規サービスの導入2.生産性向上・高付加価値化のことを指すようです。

また、どちらの場合も複数業者連携や、地域全体の連携・協業が条件となっており、点ではなく面での観光地域改善がテーマになりそうです。

単一施設ではなく、地域事業者による連携事業を求める動きは昨年から見られており、今後も続くでしょう。観光施設を運営されていらっしゃる方は、ぜひ地域の観光協会・組合等を通じて、施設・事業者間の連携を強めてみてください。

3-2.DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出 (要求額10億円 )

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観光分野だけでなく、日本全体で機運が高まっているDX化。昨年度と比較して約1.25倍の額が要求されています。

項目を見ると、1.デジタル技術を活用した新規コンテンツ造成2.取得データを利用したマーケティング改善3.デジタルを通じた顧客育成 だと理解しました。昨年とほぼ同様の内容です。個人的にはあまり魅力を感じられる内容ではありませんでした。

その他、MICE誘致の促進(2億5100万円)福島県における観光関連復興支援事業(5億円)もそれぞれ、1.32倍・1.67倍となっておりますが、今回は詳細分析いたしません。

気になる方は、ぜひご自身でお目通しください。
https://www.mlit.go.jp/common/001420093.pdf

4.最後に:これから決まるその他の予算紹介

最後に、事項要求項目について触れて終わりといたします。事項要求とは、概算要求時に内容等が決定していない事項について、金額を示さずに要求し、予算編成過程において、その内容が明らかになった際に追加要求するものです。

そのため、状況によってはここまでご紹介しなかった予算が発生する可能性もあります。現時点で想定されている事項要求は「地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出」「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化」の2つです。

旅行商品造成・磨き上げ事業が生まれると推測します。こういった事業は例年、発表から申請期限までの時間が非常に少ない傾向にあります。

そのため各観光地域のみなさまにおいては、今年のうちに1.どのような旅行商品を作っていくか、2.商品として販売するために何を用意しなければいけないか、3.そのためにどのような業者との連携が必要かを言語化しておくのがよいと思います。

事項要求についてはおそらく、新型コロナ感染の状況、国際的な旅行の回復状況に応じて、感染対策や事業者救済に重点を置くのか、観光商品造成支援に重点を置くのかなどが変化するのでしょう。

また、昨年Go To トラベル事業が行われたように、年度の途中で補正予算が組まれる可能性も高いです。

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5.あとがき

先日手続きのために、有楽町の交通会館に足を運びました。都外の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、有楽町周辺は都道府県・市町村のアンテナショップが集まっており、特に交通会館には15のアンテナショップが集まっています。

アンテナショップは消費者としてもすごく魅力を感じるのですが、「日本人が日本のことを知る」ためにもよい施設だと感じます。

実際私は、お店に並んだ商品を見て初めて「この県の特産は◯◯なんだ」と知ることがよくあります。

昨年マイクロツーリズムが話題になった際、マイクロツーリズムを通じて「地域の方が地域のことを知ること」の重要性が指摘されていました。

地元の方が地元のことを知らなければ、外部のお客さんをもてなすことはできない。それは日本という単位でも同じではないでしょうか?

観光業界に身を置いていても、自分に関係しない地域については意外と知らないもの。アンテナショップはそんな知識の空白を埋めてくれる、楽しくてためになる施設です。

今なら、観光減で苦しむ地域の方の応援にもなります。都内の方は、ぜひお近くのアンテナショップを探して訪れてみてはいかがでしょうか?

ちなみにすごく地味ですが、私は徳島のショップで味のりを、大阪のショップで西日本版のどん兵衛をよく買って帰ります。

今週もお読みいただきありがとうございました。

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