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【小説】瑠璃の囀り 第2話「再会」

 大学の授業が終わった後、少し寄り道して商店街に入る。あの人が今日も青果店で働いていた。
「いらっしゃいませ……あ」
 どうやら気付かれたらしい。薄い唇が嬉しそうに微笑む。
「また、お会いしましたね」
 覚えていてくれたのが嬉しいからか、それとも緊張からか。少し体温が上がるのを感じた。
「何か買っていかれますか?」
「……え、あ……じゃあ、せっかくなので」
 商品を見るだけの予定だったが、弾んでいく気持ちにつられ、ついカボチャを手に取ってしまう。
「ありがとうございます。カボチャはちょうど今の時期が旬ですからね。たくさん召し上がってください」
「はい……ありがとうございます!」
 ぺこりと頭を下げた瞬間、その人の名札に「青沼あおぬま」と記されているのが見えた。
「青沼さーん! ちょっとこっち手伝って!」
 店の奥の方で他の店員から声が掛かった。青沼さんは「はい」と心地良い声で応じ、去っていく。
(青沼さん、かぁ……)
 私は名前を知れた嬉しさを噛み締めながら、カボチャを抱えてレジに向かった。

                 〈つづく〉

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