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「クワガタの幼虫を見つけた」はずだったのに。

私が子どもたちと一緒に通っている幼稚園は森の中にある。
家族で通う幼稚園である。
そこに大自然があって、自由な時間と友達がいて、好きな人と好きな場所で好きな遊びをすることができ、私も子どもたちも毎日とても楽しんで過ごしている。
息子は、自由に山へ遊びに行ってしまうこともあれば、私と行動を共にすることもある。

私はクワガタが好きで、目視でとらえるのが得意である。
なぜなら、目がいいからだ。
今から17年ほど前に走りだったレーシックで矯正した視力をほぼキープしている。

私が木を眺めて、クワガタを発見すると、みんなに教える。
「ほら、あそこにいるよ」と、男子たちと盛り上がってワイワイ捕まえて、うちの子の虫ケースに入れると、周りの子達からの羨望の眼差しを向けられる満足げな息子が、「ママ、ありがとう!」と言ってくれる。私にとってはこの上ない喜びの瞬間である。

ある夏の日。
子どもたちと森の中でクワガタを探していた時のこと、いつも採れる大きな木の下に、ちょうどいい感じに、ふかふかの堆肥になっている地面を発見した。
そこは踏むといい弾力で、落ち葉や朽ち木が堆積して何年も経っていそうな感じであった。

「きっと、こういうところに卵を産んでいると思うんだよね~」と、息子の友達に伝えると、そこにはなんと、本当に丸々と太ったミヤマと思われるメスがゆっくり歩いており、とても期待が持てたため、少しだけ掘ってみた。

すると、出てくる出てくる。
ぷりっぷりの幼虫たち。
小さいものも多かったが、まだ夏だから産まれてそんなに経っていないのではないかと思い、どんどん掘り進める。

すると様子を伺っていた男子たちがケースを持って何人も集まってきて、みんなで幼虫探しが始まった。
子どもたちも掘ってみると、おがくずが敷き詰められた箱のまま売られているゆり根ように、ポロっと、本当に簡単に幼虫が出てくるもんだから、楽しくて楽しくて。見つけられなかった子には、私のケースの幼虫を分配し、みんなそれぞれケースの中に10匹くらいずつの幼虫を持って帰った。

そして「まさよちゃん(子どもたちから呼ばれている私の呼び名)、すごいね~」と、「幼虫ありがとう」とお礼を言われ、とてもいい気分になった。

成虫はそんなに数が見つけられないけど、幼虫で満足してくれる幼稚園児が、本当にかわいかった。

はずだった。

まだこの時は、私は「クワガタ探しが上手い人」と思われていただけだった。

そう、まだこの時までは…

幼虫ケースの中は堆肥と幼虫を入れておけば、少しの加湿だけでお世話はほぼしなくていいので、我が家では涼しい玄関に放置していた。

夏休みのある日の朝、夫を見送り、子どもが起きるまでの間に掃除などをしようかとしていてたまたま幼虫ケースを覗いた時、事態は一変した。

キラキラ光る何かを感じた。芋虫がいるはずのケースなのに。
まだ幼虫で、次の夏に出てくるはずのクワガタ達だと思い込んでいたために、状況が飲み込めず、ケースを外に持ち出して、何があっても大丈夫なように、手袋をした。

お世話用のケースの中に、土を逆さまに移すと、きれいな緑色のカナブンと、キラキラのお腹のような何かと、チョコエッグのような丸い塊があった。

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結論から言うと、あの幼虫は、クワガタではなくカナブンの幼虫だったというだけの話なのだが、私は落ち込んだ。

偉そうに、子どもたちには「ほら、クワガタはこういうところに卵を産むんだよ」とか「なかなかいい幼虫だね、ミヤマかな(ドヤ)」などと説明とかしちゃったわけなんです。
実際幼虫もいっぱいいたから「(息子)くんのお母さん(私)、すげ~」と、言われ、子ども達は大喜びで、私の承認欲求も満たされ、「大事にお世話するんだよ~」などと、上から目線で言ってしまったのだ。
幼虫のお世話なんぞ、何もすることがないのに、にも関わらず、だ。


あの幼虫がカナブンだということがわかり、あの日に幼虫を持って帰った子達のお母さんに、お詫びの連絡を入れた。
なぜなら、「幼虫をありがとう」という言葉は、お母さんたちからも言っていただいていたから。
嬉しそうに眺めて、来夏には成虫になるのを楽しみにしていると。

それなのに、、、
いきなりカナブンだもの。がっかりしちゃうよね。ほんと、みんな、ごめんね。

私が落ち込んでいると、息子が起きてきた。
玄関の外に広げた、幼虫マットを見て一言。
「幼虫死んじゃったの?」
いいや、、、
違うんだ、息子よ、よく聞いてほしい。

幼虫は、クワガタじゃなくて、カナブンの幼虫だったみたいでね、ほら、カナブンの成虫がほら。
「わぁ~ママ、すごいね」「カナブン、すごいね」「お腹、ピカピカだね」と大喜びで、カナブンを愛でる息子氏に、救われた。

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私にとってはがっかりな出来事が、当時4歳だった息子にとっては嬉しいサプライズだったようで、結果オーライ。


昆虫図鑑で詳しく調べると、カナブンの仲間の「アオハナムグリ」でした。

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