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思い通りのトウヤ氏

古めかしい商店が軒を連ねたノスタルジックな通りには、人が疎らしかいない。ほとんど吸い切った手巻き煙草の火を地面に擦り付けながら、トウヤ氏は足元を見つめた。

周りの音がトウヤ氏の耳にはっきりと聞こえ、不調和なリズムに恍惚感を覚える。時間の感覚はゆっくりとなり、人の足音や、人の声などの街の喧騒のひとつひとつが聞き分けられるような気になっていた。

「あー疲れた」

何に疲れたわけじゃない。何もかもがしんどい。
そんなふうにして、トウヤ氏は年齢を重ねてきた。

「どーでもいい」

何もかもが欲しかった。何でも欲しかった。でも、何も手に入らなかった。
トウヤ氏は赤くなった目で、地面を見つめたまま静かに泣いていた。

一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!