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怖い話を好きになるきっかけ #創作大賞感想

 物語の進行がスムーズで、緊張感を保ちながら進むプロットはどの小説にとっても大事な事でしょう。例えば、サスペンスや驚きの要素を散りばめることで、読者を引きつける事ができます。怖い話が好きな人にとってもそうですし、何となく手に取った読者にとっても、怖い話の魅力にハマっていくのです。


 横山小寿々さんの『Horror House カンパニー』は、読者を一気に引き込む魅力的な第一話目と、ユニークなキャラクターたちが光る、パニックホラー小説です。主人公の三浦敦は、職を失った後、勢いでお化け屋敷をプロデュースする会社に入社し、個性豊かな先輩社員たちと出会います。この設定からして、物語の展開が予想外で興味をそそられます。
 怪談師のジェイミーから怖い話を聞く場面や、怪しい行事『蟲封じ祭』に主人公が一人で参加するシーンなどは、緊張感と恐怖感を巧みに描いており、読者の心拍数を上げることでしょう。
 この小説の僕の第一印象は、子供達にとっての怖い話の入門書になるのかなという事です。グロテスクな描写もあるので、そこは気をつけないといけないでしょうが、お化け屋敷をプロデュースというアイデアは、子供の好奇心に刺さるかなと。
 また、そう思った他の要素は、読後感の爽快感です。恐怖を乗り越えた後に得られる希望があると、読後にポジティブな感情を抱くことができます。怖い話に対する抵抗感が和らぎ、続きを読んでみたいと思うようになります。シリーズ化しやすいアイデアだと思います。
 ただ難点をあげれば、僕のような怖がりたい人間にとっては、おもしろすぎるという事です。(笑)これは横山小寿々さんのポジティブなお人柄が、そうさせているのかもしれません。ポジティブな要素がやや強めですね。ホラー小説にとっては。まぁ、だからこそ、特に、子供達が、怖い話を好きになるきっかけの一冊になるんじゃないかと僕は思ったのです。

 横山さん。予告もなしに突然に感想を書いて失礼しました。とっても面白かったです。


一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!