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創作デブとガリ以外は読むな!4

4年生の夏。テツはフットボールをやめた。何も言わずにチームを去っていった。何人かの後輩も後に続くように辞めていった。

「ちょうど1年前ですよ」ガリはまだ温かいコーヒーカップを触りながら言った。

「そうだな。だけどな、誰も二人の事を責めていない。結果は変えられない」

「山西さん。デブはどうなのかわからないけど、俺は自分を責めている訳じゃない」

「じゃあ何で俺達から離れていった?」

「どうでもよくなったんです。何もかも。シーズンを目前にして、テツがああなってしまった原因は俺にもあったかもしれない。でも、あいつは何も言わずに辞めたんです。あんなチームの状況でよく試合できたものですよ。俺達は一回も勝てなかったんです。終わったたら、全てがどうでもよくなった。薄情ですかね?山西さんや後輩達、OBの気持ちも考えずに。今でも毎日がどうでもいいと思っている」

ガリは器用な選手ではなかった。ただ愚直にフットボールをしていた。練習でも、試合でも誰よりも一番声を出し、練習や試合のビデオを何度も見直して問題点と対策を考えていた事は山西も尊敬していた。

「でも、お前は今日来た」

「山西さんがくれたメールを見て俺は向き合わないといけないと思ったんです」

「デブは?」

「俺はどうっすかね。自分の事を責めているのかもしれないです。それでいて、時間が戻ればいいと思っています」

デブは物腰柔らかな印象があるが、自分にも人にも厳しい。ガリが言いにくいようなことでも、代わりにはっきり言ってくれる性格だ。デブとガリは理想的なリーダーの筈だった。だが、上手くいかなかった。そして今では自分を否定する生活をしている。

 山西は二人が気がかりだった。二人とも子供ではないのだから、勝手にすればいいとも思ったこともあった。何もしてやれないまま時間ばかりが過ぎるのは山西にとっても苦しい時間だった。そんな時にテツの方から山西に連絡があった。卒業して半年も経ってからテツを二人と合わせる事に躊躇いはあった。今更何が変わるという訳でもない。自分の都合だけを彼らに押し付ける結果になるのではないかと思った。正直な事を言うと、山西はテツの事を自分勝手なやつだと思っている。テツがああいう選択をしたのは間違っていると今でも思っている。

一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!