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創作デブとガリ以外は読むな!8

彼らの大学のチームは3部リーグに所属していた。強豪校ではない。そういうチームにありがちなのだが、個人的な能力でチームの総合力が大きく変わることがある。テツはチーム唯一のフットボール経験者で、クォーターバックだった。アメリカのプロリーグでは、チームにもよるが、年俸が最も高いポジションとして知られている。そのことからも、アメフトを知らない人にもクォーターバックが如何に重要なのかわかっていただけると思う。

 テツは大学でフットボールをするつもりはなかったらしい。けれども、手厚い勧誘に根負けして入部した。1年生の頃から試合に出ており、3部リーグに所属している選手では異例なのだが、学生オールスターに選出され、オールスターの試合では、ロングパスでタッチダウンを決めたこともある。

 3部リーグにいたからといって、デブもガリもふざけた練習をしていたわけではなかった。真面目にフットボールをしていた。3人が3年生の時には、2部リーグとの入れ替え戦まで駒を進めることが出来た。その翌年こそは2部昇格という目標の為に、ガリは過酷なスケジュールを立てた。デブもそれに賛成し、山西もそれを容認していた。だが、一部のチームメイトがついてこなかった。

 特にテツはそのスケジュールに反対していた。その不満は夏休みに入ってから爆発した。通年、夏休み期間中は3日練習して、1日休むというスケジュールだった。それを6日練習して1日休むというスケジュールにした。しかも朝と昼の2部練習は必須で、その後のウェイトトレーニングは強制ではなかったが、バイトなどがない選手は必ず行うことになっていた。テツはそういう雰囲気が気に食わなかったようだ。彼は才能があり、キャプテンや副キャプテンというチームの幹部ではなかったが、発言力が強かった。また、過酷な練習に反感を覚えた何人かの後輩達もテツについていった。

「ところで山西さん。テツに会ったからといって、俺は何を話せばいいっすか?」

デブは新たに頼んだクリームが乗ったコーヒー飲料をストローで吸い込んでから山西に聞いた。

「お前から何かを話さなくてもいい。今日はテツの方から俺に連絡があったんだ。お前たちに謝りたいそうだ」

デブとガリは顔をしかめた。今更なんでだろう?という顔だ。

「あいつは今、何をしているんですか?」

それほど気にはしていませんが……という顔でガリが山西に尋ねた。

一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!