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品種茶についてのお話①「さえみどり」

突然ですが、お茶(の樹)にも品種があります。

数年前から、日本茶にも「シングルオリジン」を楽しむ流れが生まれたので、ご存知の方も多いでしょう。

では、種類数でいうとどれくらいの品種があるのかご存知でしょうか?

2019年3月現在で、名前の付いている茶の品種は、なんと119品種にものぼります。

名前が付いているもの、とあえて表現したのは、名前の付いていないものがあるから。
この辺りは、それだけで立派な記事が書けるお話ですので、また今度に回しましょう。

今日は、数ある品種の中でも人気の高い「さえみどり」についてお話します。

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濃厚な緑、上品な芳香、旨みが強く渋みの少ない早生品種

「さえみどり」は、一言でいえば優等生。

お茶を淹れたときの緑色は鮮やかですし、香りも上品
味わいは、旨みや甘みが強く苦渋みは少なくすっきりとしています。

煎茶にも、冠せ茶にも向いていて、仕上げ(火入れ=焙煎)をした後の火香(=焙煎香)も甘い香りが引き出しやすいお茶です。

特に、品種名にも入っている鮮やかな「緑」色は、「さえみどり」が登録された当初、「何か(着色料)を混ぜているんじゃないか?」と疑う人がいたと言われるくらい、茶業界には衝撃が走ったようです。

ある意味、革命をもたらしたお茶なのでしょう。


最近、国内外で開催されるコンテストでも「さえみどり」が入賞することが多く、今では上質なお茶の代表として認知されているお茶です。


母親は「やぶきた」、父親は「あさつゆ」

今でこそ「やぶきた」一辺倒の経営は難しくなってきており、また、多くの専門家、研究者の方々のおかげで、「やぶきた」よりも品質に優れた品種がどんどん誕生してきていますので、年々栽培面積は減少しているようですが、それでもやはり「やぶきた」は優等生になるでしょう。

今、どんどん誕生している品種も、ルーツを辿れば「やぶきた」を親に持つものはとても多く、それだけ「やぶきた」が品質で優れているということなのだと思います。

そんな「やぶきた」が母親で、父親は「あさつゆ」。

「あさつゆ」の詳細は今後に託すとして、「あさつゆ」を表す際によく使われる表現が「天然玉露」
これは、被覆(覆い下栽培)をしない露地栽培であっても緑色が鮮やかで、かつ、旨みに富むことから言われているそうです。

「玉露」と言えば高級茶の代名詞。
そんな「玉露」の資質を天然で備えているのですから、優れているとしか言いようがありません。

そんな両親ともに優等生の「さえみどり」ですので、上に書いたように、全国で上質なお茶として認知されているのもさもありなん、ということですね。


「さえみどり」以外に挙がった品種の候補名は?

さて、品種名が登録されるときには、当然ながら、他にも候補名がいくつか挙がります。

他の候補名には、「かおりわせ」「しゅんりょく」「うづきわせ」「りょくいっしょく」等々があったそうです。

個人的には、「うづきわせ(卯月早生)」の響きが好きですが、やはり、育てて、製造していて思うのは、「さえみどり(冴え緑)」という名前が言いえて妙、だと感じます。


末吉製茶工房のお茶の中でも一番人気

「さえみどり」は、末吉製茶工房のお茶の中でも一番人気です。

僕の父も「さえみどり」の味や色、香りに、品種が登録された当初から惚れ込み、早々に栽培に取り組み、まだ世間では「日本茶のシングルオリジン」と言ってもピンと来ない時期から、「さえみどり」単品で仕上げ、シングルオリジンのお茶として販売してきた、お気に入りの品種です。

お客さまにも好評で、今ではうちの看板商品の一つになっています。

また、海外でも好評で、今まで「さえみどり」を出品した国際コンテスト全てで入賞を果たしています。

(余談ですが、日本のコンテストでは、うちの「さえみどり」はほとんど鳴かず飛ばずです…)

最近では、食のオスカーとも呼ばれる、世界で最大規模かつ権威のある食品の国際コンテスト「Great Taste Awards 2021」(イギリス)において、全エントリーの中から1~2%弱程度しか受賞することのできない最高 " 三つ星 " を受賞することができましたし、今回の受賞で、「さえみどり」は同コンテスト3年連続入賞を果たしました。

紅茶文化の根強いイギリスでは、渋みや香りが重視されるかと思っていましたが、これは意外な結果でした。

まだまだ研究、思考、試行が必要ですが、日本茶が海外で広がる可能性は十分にあると思いますし、「さえみどり」が海外で好評ということには刮目の価値があるでしょう。


「郷里の華 さえみどり」の商品ページはこちら



【末吉製茶工房】茶畑_4

さて、今回はお茶の品種についてのお話。
いかがだったでしょうか?

これからも、いろいろな切り口、語り口で記事を書いていこうと思います。
悪く言えば迷走、良く言えば試行錯誤、です。



それでは、また次の記事でお会いしましょう。

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