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ギターの神はかく語りき (4)

【承前】


3人と別れて帰路についた時、日はとっぷりと暮れていた。
俺は晴れて新ギタリストとして迎えられた。

スタジオでは何曲かセッションした。
人気バンドのカバーと、イケメンヴォーカルが作ったというオリジナル曲。
今の曲を全然知らないと言ったら笑われたが、音源を聴かせてもらってすぐさまコピー完了、多少のアレンジも加えてやった。
…俺がアレンジするともれなく80年代ハードロックの香りが添えられてしまうが。まあ当然か。
イケメン作曲のやつはどれもスカした感じであまり好きになれなかったが、難なく覚えて数分で完成させた。
これにアレンジを加えるのはやめておいた。

結果、ツンツンとモミアゲはすっかり俺を気に入り、イケメンも納得したようで、俺のメンバー入りが決まったのだった。

数日後、イケメンからバンドのグループLINEにメッセージが来た。
早速ライブをしようと言っていたが、もう日程と場所を押さえたのか。
いけ好かない奴ではあるが、行動力があるし、何だかんだ人がついていく。
カリスマというやつなのだろう。

その後何度かスタジオで集まり、瞬く間にライブ当日になった。
小さなライブハウス。俺はドキドキしていた。
大勢の前で演奏するのが緊張するとか、今更そんなのは一切ない。
今日、俺は初めてたくさんの女の子の前で演るのだ。
この勇姿、しかと目に焼き付けてやるぜ…!

初めてのライブ。
新鮮な体験だった。
観客を前に爆音を鳴らし暴れ回る。
脳内麻薬が弾けた。
爽快感。
楽しかった。間違いない。

女の子という女の子は尽くイケメンばかり見ていたけど。

まあ、わかってたよ。
フロントマンがこんなイケメンだったらみんなそっちを見るよな。
俺たちは添え物みたいなもんだ。

(((結局人間顔だよなァ~)))

しばらく出てこなかったと思ったら開口一番それか。
そんなことは痛いぐらいわかってんだよ。

(((まあいいんじゃねーの。おまえ本当楽しそうだったし。
この先も続けてりゃいいことあるぜ~多分)))

この神様風情が、いい加減なことを…。
楽しいのは楽しいし、とりあえずしばらく続けてみるか。
もしかしたら、俺を見てくれてる娘もいるかも知れないし。


【続く】

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