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理解の臨界点(眠たくなる話)

[2506文字]
宇宙と脳の構造が酷似している
以前よりその事は指摘されていたが
今回ついに定量分析的に証明されたという事だ

       人の脳     宇宙
神経細胞と
銀河の数   690億個   1000億個

上記以外が   水    ダークマター
占める割合   77%     73%


宇宙のフィラメント構造とダークマターの様子(NASA)


共にフィラメントと言われる糸状の構造を介して
自己組織化している辺りも
その網目構造網の見た目も
脳と宇宙は実に酷似しているというのだ
そんなことを聞いてワクワクしない筈がない

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/11/post-95038.php
(※Newsweek誌に掲載された研究)

考えてみれば脳であろうが宇宙であろうが
大きな意味で同じ物理条件下にある物は
規模は違えどその基本構造が似ていて
当たり前なのかもしれない

人はその証拠を得るために深掘りをする
人間は数字や見た目で納得しやすい生き物だ
今回も数字が信ぴょう性を高める
しかし数字を見なくても
子供でもはっきりとわかる事は
その見た目と規模の差異だ
それで連想させられた事があった

フラクタルという幾何学の概念がある
ある構造の集合体はどんなにズームアップしても
またどんなにズームダウンしても
同じ構造を成しているというもの
脳と宇宙の今回のこの研究結果から
これを想起せずにはいられなかった

https://youtu.be/ReIySMnrkZM
(※フラクタルをイメージした動画)

人間の脳と宇宙では
その規模が27ケタほど違うらしいが
それだけかけ離れていても類似性がある事に
この世はミクロからマクロにかけて結局
ある一定の法則に支配されているのでは
と疑わずにいられない

もしその一定の法則が公式化されれば
生命エネルギーや時間の謎などにも
大きなヒントを得られるかもしれない
ハッブル望遠鏡が視覚的に身近にした宇宙を
今度は論理的にも感覚的にも身近に出来る
などと淡い期待もしてみたりするが
そんなに単純でもないだろう

しかしフラクタルは到達点のない無限を思わせる
その中身を知ろうとどんなに入り込んで行っても
また逆に全体像を見るためにどんなに遠ざかって見ても
現れるのはほぼ変容していかない構造体の
永遠に途切れることない無限ループの姿だ

脳と宇宙の構造が類似している
と言って喜んでいるが
単に無限に繰り返す構造体の
ほんの一端に気付いただけに過ぎない
のかも知れない
今後この研究がさらに進んだとしても
まだ見ぬニューロンの更なる深部や
宇宙のもっとその向こうに
これに似た構造体がまた現れ
それが永遠に繰り返されるだけ
なのかもしれない

脳と宇宙が似ていてそれが無限だと言われても
なかなかな実感できないと思う
昔からよく言われる例で例えてみる

海岸線の距離を測る
江戸時代に伊能忠敬や間宮林蔵が実際に試み
彼らはその時代としては世界に類のない
非常に正確な地図を完成させている

現代の地図は宇宙からのGPS技術を使い
格段に精巧度の高い地図を作る事が出来る
海岸線を測る為のGPSの精度が
そのまま地図の精度になり
そして海岸線の距離の精度になる

現在のGPSの精度は数十cmから数cmといわれている
つまりこれを数mmとか数ミクロンにしていけば
より正しい距離が求められるはずだが
実際の海岸線はどんなにズームして行っても
再び似たような凹凸が必ず出現する
より精度の高い計測器を以てして
その凹凸が測れたとしても
再びズームすれば更にまたその凹凸の先に
より細かい凹凸が現れそれをまた測る
そういった繰り返しを延々とせざるを得ず
結局海岸線の距離はどんどん伸び続けて
遂には無限であるという事になってしまう

これが現実的なフラクタルの理屈だが
そんな身近に無限が存在する事自体
どうしても現実味を帯びて考えられずにいた
そもそも「無限」が現れた途端
人はその思考を停止させ気味になってしまう
しかし脳と宇宙のフラクタルという事であれば
物資的に身近であっても
その理屈はまだまだ未知で空想的だ
そのSFチックな解釈はかえって興味を惹き
何処か腑に落ちやすく思えてしまうから
実に不思議に思う

つまり曖昧さこそが現実感を生み
理解の重要な要素となる
海岸線の距離も厳密に突き詰めずに
最小単位をせいぜい数cm程度でやめておけば
理論上の実際はおよそであったとしても
腑に落ちやすい感覚的な距離感を得る事が出来る

人間が何かを理解しようとした時
あまりにも高精細が過ぎると
人間の持つ解析能力自体が追い付かず
全てが無限であると理解してしまう
又は無限であるように見える
という可能性はないだろうか
つまり無限とは人間の限界を示す
「理解の臨界点」なのではないか

この臨界点を超えて宇宙の先をいくら探っても
それが脳の構造なのか宇宙の構造なのか
判別ができなくなってしまうという
フラクタルの無限ループに陥るのではないか

蟻は深海の現実を知る必要もチャンスも
本人にその意思もないと思われるが
水面と地面との違いは認識する必要がある
それと同様に
人間が知る事の出来る「理解の臨界点」
というものがあったとすれば
その先は全て平坦で奥行のない「無限ループ」
としか感じられないということがあったとして
それはつまり人間には不要な情報なのだと
何か大きな力に言い渡されているような
そんな気もしなくもないが
人間の好奇心には限度がないらしい

脳と宇宙の構造が類似しているというトピックは
少なくてもこういった様なことを連想させられた
それだけのインパクトがあったという事だ
未だ1%も解明できていない宇宙を身近に感じ
また広大な宇宙の縮図をこの脳は秘めていると思えば
ワクワクしない訳がない

それはある一部のニューロンに刺激が走り
脳全体 つまりその個体になんらか
大なり小なりの影響を及ぼしたと言う事であり
脳と宇宙の類似性と位置関係が証明された今
再びこの脳を持つ個体から発せられた刺激が
何らかの作用で宇宙全体に広がる可能性がある
と考えるのは飛躍し過ぎだろうか
しかしその可能性はゼロではないだろう

理解の臨界点に及ぶその手前までで
事象の発火を誘引する刺激的なワクワクを
どれだけ体現できるかが人間の役目とも言える
そうする事で我々は
意識しないところでこの広大な宇宙にさえ
多大な影響を及ぼしている可能性がないとも言えない