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初めてのブリーチ

校則の緩い高校だったので、ヘアカラーは当時から楽しんできたが、ブリーチには手を出したことがなかった。globeがお茶の間を賑わせていたころ、KEIKOに憧れて一度検討したことはある。しかし、好きだった人が裏原系だったので、YUKIやELTの持田香織を目指すことになった。マロンや、赤みの強いブラウンなどを選ぶことが増え、ハイトーンはアウトオブ眼中となる。

四十路を間近にして、なぜブリーチデビューしたのかは、自分でもちょっと謎だ。ちょうどポッカリと人前に出る機会がないので、「今だ」って感じがしたのかな。数年前からヘアスタイルがマンネリ化していて、自分が自分に飽き飽きしているというのもある。

結婚してからワンレン街道まっしぐら。前髪を作るほどの変化は、この10年で2回くらいだ。さらには洗髪やセットの面倒さからレングスもどんどん短くなり、4年前からはボブばかり。昔は美容院へ行くとなれば、どんな髪型に仕上がるか、ドキドキワクワクしながら通っていたものだ。けれども最近は「できるだけ早く終わらせてほしい」が、一番の気になりごとになってしまった。ヘアスタイルへの興味は、完全に失われていた。

神経質に見た目を気にしなくなったことで、気楽に生きられるようになった反面、自分の身なりを自分の意思で正すという、自らを大切にすることに直結する行為を忘れていたように思う。ブリーチは、これまでの怠惰な自分へのアンチテーゼなのか。それとも体育会的なノリの喝の注入なのか。どちらにせよ、今日は久しぶりにドキドキワクワクに包まれる3時間を過ごした。髪をかきあげるたびに、鮮やかなアッシュグレーが現れる。見慣れない自分が鏡にうつるたびに、今もドキドキが止まらない。

帰宅後、兄に感想を聞くと、「ふーん。あんまりわからなかった」。次に帰ってきた弟に尋ねると、「え?どこ?」。出勤日だった夫に「どう?」と声をかけたら、「短くなったね」。男三人衆は、ブリーチにまったく気づかなかった。三人の鈍感力のDNA恐るべし。

懇切丁寧にブリーチ箇所をご案内して、やっとこさ「おぉ」との感嘆の声が漏れた。ブリーチへのチャレンジにドキドキしている乙女心は、我が家の男子たちには理解できないようである。

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