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それはまるで、村上春樹の短編小説のような〈イタリア/ドルチェット〉

JR東京駅の、総武快速線の深いホームからエスカレーターをあがったところ、地下改札を丸の内側に出てしばらく歩いた奥地に、『Eataly(イータリー)』というイタリアワイン好きの楽園があります。

こちらのお店、湘南や原宿にめちゃめちゃおしゃれで映え映えな店舗を展開していたのですが、2021年8月25日、ついにGINZA SIX という日本最高峰のおしゃれスポットに、新店舗をオープンされました!

ワインがあると聞けば、行脚に行くしか選択肢のないますたや。ちょっと脳みその取捨選択の判定がおかしい。さっそく、四足歩行で行ってまいりました。

イタリアワインの特徴といえば、なんといってもその、葡萄の土着品種の多さ。日照量が多く乾燥したこの土地はワイン用葡萄の生産に適しており、かつてワイン作りをこの国に伝えた古代ギリシャ人からは、エノトリアテルス(ワインの大地)と呼ばれ称賛されていた――

っていうか、たぶんイタリア、なんか どこでも葡萄ができるんだと思う。

だからなのか、とにかくあちこちであらゆる葡萄を作りまくり、その品種がどんどん突然変異を起こし、さらにまたおいしいワインができあがり、また新たな葡萄を使っておいしいワインを作り始め・・・

とかやってるうちに、法律なんかできるまえに、とにかくうまいワインが先にできあがっちゃってた美食の国、イタリア。

「げ、美味しいワイン作っちゃった? じゃあそれも法律にするわ」

みたいな感じ(かどうかは知らんけど)でどんどんあと付けで法律をくわえるもんだから、どうにも統一感がなく、穴もあり、でもその落ち着きのなさがむしろ「いいじゃんいいじゃん!細かいこと言わず飲もうぜ!」的フリーダムな愛おしさとなっているのが、イタリアワインの魅力だと思っています。


さて今回のイタリアワイン行脚の個人的コンセプトは「飲んだことのないイタリアの土着品種を飲もう」!

そこで手に取ったのが、この「ドルチェット」という品種でした。

Borgogno Dolcetto d'Alba 2018 [¥3800 ]

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<ワインdata>

国:イタリア 種類:赤ワイン 品種:ドルチェット ビンテージ:2018 生産者:ボルゴーニョ インポーター:日欧商事

<バランス>

酸味★★☆☆☆ 糖度:★★★☆☆ タンニン:★★☆☆☆


ドルチェットって・・・ なんか、白ワインっぽくないですか??

ドルチェ、の部分がわたしの頭のなかでは「デザート=あまい=白ぶどう」と変換されるようで、直感的には白ワインと思ってしまいます。

だからこのドルチェット、わたしのなかでは「の、逆」(=赤ワイン)と覚えている品種です。なんて汎用性のない覚え方。でもみなさん、太陽がのぼる方角ってどうやって覚えてます? バカボンの歌の逆、って覚えてません? 覚えてませんか。そうですか。

ドルチェットってもともと、そんなに高級品種ではありません。

かのエノテカ大先生によると、

その手頃な価格とシンプルな味わいで、ピエモンテ州では「特別な日のネッビオーロ、普段使いのドルチェット」と言われ、多くの人に親しまれている品種 引用:エノテカ


とのことでした。へー

今回お買い上げしたのは、ボルゴーニョという生産者のドルチェットです。ボトルを見たとき、一瞬「ブルゴーニュ?」と見まがうようなアルファベットが並んでおり、B級映画のタイトルかよwwwww などと突っ込みかけましたが、

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なんとこちらのボルゴーニョ、B級どころか超A級

もともとはバローロの最高峰の作り手とのことで、由緒ある老舗のワイナリーなんだそうです。(出典:日欧商事 )

そりゃネッビオーロでおいしいワインが作れるんだから、ドルチェットだろうがバルベーラだろうがおいしいに決まってる。B級とか思ってごめんなさい。わたしの視覚認知どうなってんだ。


ワインの味わいとしては、重くてずっしり熟成ドーン!なバローロなんかと比べちゃうと、「日常消費用の軽やかで明るいワイン」といった雰囲気。

でも、そこはさすが超A級。酸味やタンニンはマイルドで軽やかなのに、ちゃんと愛らしい華やかさもあって、いつのまにかすいすいと飲み干してしまいました。

おいしいワインはボトルがすぐにあくんだよ・・・泣ける

3800円のワインって、ちょっとちからの入った晩ご飯を用意したくなるんですが、でもこのワインに合うのは、決して贅沢ご飯だけでもなさそう。

たとえばレトルトのパスタソースをかけたトマトパスタや、レンチンのピザ、スーパーで買ってきたグラナパダーノチーズなんかとあわせても、軽やかに寄り添ってくれそうな優秀な白・・・ の逆、赤ワインでした。

きっと生産者買いをされる方もいるような、作り手なのだと思います。バローロの名手が作る綺麗な土着品種日常ワイン、っていう風に楽しむこともできそうです。

つまりそれって、村上春樹の書く短編集、みたいな感じでですよね。まあちょっといつもより物足りないけど、これはこれで別物としていいよね、みたいな。長編みたいな奥深さはないけど、エッセンスとしては十分に楽しめる、みたいな。むしろ文体の美しさはこっちのほうが際立ってる、みたいな。

でも、そのエッセンスに触れてしまうと、やっぱり「あの重いヤツ」を味わいたい気持ちになるんだなぁ・・・


バローロも村上春樹も、おんなじなんだなぁ ますを


そんなこんなでバローロと村上春樹に思いを馳せた、秋の一夜だったのでした。はー、バローロ飲みたい。石油王が来い。



それではまた、次の3000円ワインでお会いしましょう! ますたやでした♪


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ますたやとは:

関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)。夫婦で1本を分けあって飲みます。3000円ワイン以外のワインについては、Vinicaにて夫が更新中。現在は夫婦そろって、2021年ワインエキスパートの二次試験に向けて勉強中です。はやくおいしいワインが飲みたい!

twitter:3000wine_tami
Instagram:3000wine_no_tami

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