オタクにワインはむずかしい〈ドイツ/リースリング〉
「ますたやさん、ワイン詳しいんですよね?」
ワイン好きを公言していると、こんな質問をされることがあります。
「こないだ、販売開始と同時にめっちゃがんばって、Mr.チーズケーキが買えたんです! あわせるワインってなにがいいですか?」
「えっと、コーヒーがいいですね」
はい。自ジャンルの布教が下手くそすぎてまわりを困惑させがち、ますたやです。
わかってるんですよ、まわりの方がますたやのことを気遣ってくださっていることは… このような話題をふってやれば、こいつは喜ぶだろうと。嬉々としてうんちくを語りたいだろうと。これぞ水を得た魚、否、水を得たアルパカだろうと。ほらほら、嬉しいだろう?
はい、嬉しいです(ちょろい)
「おほほう、チーズケーキですか。なるほどなるほど、ぐふっ いいですね、まあ テッパンは、やや甘口のイタリアワインなんかいかがですかね。チーズケーキの、レモンの風味の部分にマリアージュを… おっと、いけねぇいけねぇついうっかり専門用語が、ぶほっ あの、マリアージュって言ってですね、ワインとお食事を合わせるときの――」
途中の鼻息よ。
わたくしますたや、本当はワインの話をしたくてしたくてしょうがない。きのう飲んだピノノワールのことを、週末の試飲会のことを、新発売のグラスのことを、カリフォルニアワインあるあるのことを・・・
でも、アルパカだって知ってます。まわりの人がわたしにワインの話題を振ってくださるとき、その半分は「サービス」です。ますたを喜ばせようとしてくださる、みなさんの心遣い。ああ、優しい世界。ワイントークの半分は優しさでできてる。
だからこそ、おすすめワインはむずかしい。「ソアヴェがいいよ」と言ったところで、その方が必ずしもおいしいソアヴェを引いてくださるかどうかはわからない。成城石井にも、カルディにも、イオンにだってワインはあるけれど、おいしいワインは探さないと見つからない。結局おいしいワインというのは、身銭を切って探すしかないんですよ。向かいのホーム、路地裏の窓、そんなとこにいるはずもないのに…!
否、わたしだって、ワインの話をしたいのです。へ~ チーズケーキに赤ワインも意外とイケるね~!とか、言い合いたい。青春したい。友達がほしい。だからこそ、一般人をむやみに怖がらせないよう、最大限の注意を払って生きる日々…
嗚呼、これがかなしいオタクの性。愛が重くなりゆくほど、おのれの孤独も深まりゆく。まるで晩秋へと向かう奥山のよう・・・結局、人はみな孤独なのだ。
っていうか、ただわたしのコミュ力が低すぎるだけじゃない? 一般人がむやみに怖がるの、途中の鼻息のせいじゃない? 罪なのは愛の重さじゃなく、オタクの重さじゃない?? まじバッカスのコミュ力見習え。
▼バッカスの素晴らしき沼らせ力を感じる記事はこちら
しかしこんなオタクのアルパカにだって、たまにはチャンスがやってきます。果敢にチャレンジしてくださる、優しき天使が舞い降りる。おほっ
「セブンイレブンのワインから、リースリングにハマったんです。同じ品種でも味がぜんぜん違うんですね。でも初心者だから、なにを買ったらいいのかよくわからなくって・・・ なにかおすすめ、ありますか?」
ありますよ!!!!(鼻息)
Qvinterra Riesling Trocken[¥ 3300 ]
<ワインdata>
国:ドイツ 種類:白ワイン 品種:リースリング ビンテージ:2019 生産者:キューリング ジロー インポーター:株式会社八田
<バランス>
酸味★★★★☆ 糖度:★★☆☆☆ 香り:★★★☆☆
と、いうことで今宵のおともは、こちらのドイツリースリングです。トロッケンなので辛口。ユーロリーフ認証のナチュラル系です。
グラスにそそぐと、思った以上に色調が濃いです。ややつよめの黄色ですね。色のせいか、なんとなくとろんとしたそそぎ心地を感じます。酒質、強そうかな~と思いきや、12%。ほー、意外と軽やかなのかな、どうだろう。たのしみ。
香り。ぺトロール! おお、うれしい。数値にして10分の5ほどの強さではありますが、確かにこれは、ペトってます。最近のワイン界はすっかり綺麗系が流行っていて、リースリングも多聞に漏れず。本国ドイツにおいても、あまりペトらないスタイルが主流になりつつあり、かつての、ぺトロールばりばり! そこはかとなく工業的! もはや灯油飲んでる感! みたいなのは、あまりお見かけしなくなった、とは紹介元のソムリエの言です。
飲んでみると、おおぉ… これは。けっこう酸が強いですね。糖はさほど感じられませんが、全体的にはまろやかな雰囲気。果実味のあるジューシーな香り、柔らかなぺトロール、そして厚みのある酸が、三つ巴のバランスを取っている、という印象です。ふつかめの方が、こなれておいしかった。
かつて、まだワインを飲み始めて間もない頃、アルザスのリースリング(トリンバック)を飲んだことがありました。これが、わたし的に酸がえらく強かった。「これ、合ってる???」と感じたまま、わたしには合わないかな…と、記憶の奥底に眠らせていました。
「これ、合ってる?」
合ってるんです。
リースリングってそもそも酸が強い品種なんですよね。だからこその、高貴品種。
ヴィノテラスの佐々木講師も、先日こんなこと言ってました。
でも、だからって、もちろん好みはそれぞれ。わたしも、あま〜いリースリング、だいすきです。
高貴なリースリング大先生は、ドライスタイルからスイートスタイル、熟成スタイルから灯油スタイルまで、さまざまなニーズを満たしてくださる、まさに神様の雫なのです――
と、ここまでのうざい説明は、さすがにしませんよ。しません。ますパカ、こう見えて、常識あるオタク。大丈夫、バレてない。バレてない・・・と、思う。
え、バレてないよね??
ということで、実際におすすめして、気に入っていただけたのはこちらでした。
Barthen Riesling Q.b.A. trocken 2018[¥1650]
はー、わかる。おいしいよね。わたしもだいすき。握手。
おすすめしたリースリング、いかがでしたか?
「おいしかったですよ~!」
よかったよかった。
「初心者にも飲みやすくって!」
そうでしょうそうでしょう。
「なんていうか… 」
うんうん。
「酸味と甘みのバランスが、とても優等生な感じのリースリングでしたね」
・・・コメントの急なポテンシャルよ。
ああ~、あなたをぜひ当方の沼に招き入れたい。仲間がほしい。アルパカだって青春したい。 どうかおねがいします!アルパカの友達に!なってくだ!!さい!!!
と、両手を差し出す代わりに3000円ワインを勧めてみたところ、
「わー!いいですね、クリスマスに買ってみますね!」
とのこと。
クリスマス… さ、先が長い……!
3000円ワインの布教活動、やはり前途多難なのでした。
それではみなさま、今週もワインとともによい週末をお過ごしください☆ また次の3000円ワインでお会いしましょう!ますたやでした(^○^)♪
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ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)。夫婦で1本を分けあって飲みます。3000円ワイン以外のワインについては、Vinicaにて夫が更新中。現在は夫婦そろって、2021年ワインエキスパートの二次試験に向けて勉強中です。はやくおいしいワインが飲みたい!
twitter:@3000wine_tami
Instagram:@3000wine_no_tami
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