南国ワイン会 ~トロピカル・リージョンで遊ぼう~
南国のワインを集めた、南国ワイン会を開催しました。
▶ 南国ワイン入手の経緯はこちら
南国ワインとは、赤道にちかい国々で造られているワインのことを指します。
これらの地域、ワイン産地としては「トロピカル・リージョン」と呼ばれています。トロピカル・リージョン、すなわち「熱帯地域」。
熱帯といえば年平均気温が20度を超え、乾季と雨季しか存在ない白黒きっぱりしたお天気が魅力。雑に表現すると「めっちゃ暑くて、めっちゃ雨が降る」気候帯というわけです。
さて、このような地域でも、実はワインが造られています!
・・・っていう紹介にも、だんだん慣れてきました。わかってきた。わかってきたぞ。地球人、だいたいどこでも、ワイン造るぞ…!
とはいえ、とにかくワイン産地としてはド・マイナーなトロピカル・リージョン。どのくらいマイナーかというと、【トロピカル・リージョン ワイン】と検索しても、日本語のサイトがひとつも引っかからないくらい。
新緯度帯のワインとか、第三世界のワインとか呼ばれたりすることもあるようですが、こうして呼び名に揺れがあるくらい、エンカウント率の低いワインなんですね。でしょうね。
さて、そんな「南国ワイン」を、年末年始に現地(ベトナム)で仕入れてきたますたや家。
おもしろいからみんなで飲もうぜ!とお声をかけたのはいいものの、こんなマイナーな色物ワイン会に、一体どんなひとが来るんだ……?と思っていたら、ドイツの醸造家をはじめとした、一流のみなさんが集いました。ウソでしょ?
▶ドイツの醸造家Nagiさんのワイン会に参加したレポートはこちら。一流のプロになにを飲ませるつもりだわたしは…!
もちろんプロばかりでなく「ワイン会は初めて」という方にもご参加いただきました。主催としては大変光栄なんですが、初めてがこの会で大丈夫?(心配)
そんなわけで、この夜日本でもっともマイナーなワインが集まったのってここだったんじゃない?っていう、おもしろい会になりました。
読んでもたいして後学のためにならないし、生活になんの影響もなさそうですが、謹んでレポートいたします。これがまたいい会だったんですよ…!
さて、三々五々みなさんに集まって来ていただいた場所は、四谷三丁目からほどちかいレンタルスペース【ブルーバード】です。
最初ちょっとどきまぎするのは、ワイン会の常。
そんなときは、そうです、ワインを飲めばいいんです!
というわけで、駆けつけ1杯、まいりましょう!
ここで、1杯めにスパークリングワインを飲む、みたいなお洒落な気遣いを、すっかり忘れていたことに気づくますたや。そういえばそんなんあったな!
我が家が前日にやったのは、ワインの選定ではなく「ベトナムで流れがちな音楽の選定」。
結果、BGMにベトナムミュージックが流れるなか、なにがなんだかわからないワインで乾杯することと相成りました。
そんなことある?
さて、見てのとおり最初の3杯は、ブラインド状態にてご提供いたしました。
理由の半分はもちろんお遊びなんですが、もう半分は「固定観念をなくして飲んでみてもらいたかったから」、というワケがありました。
「ベトナムのワイン」って言うと、どうしても色物ワインだと思って飲んじゃうと思うんですね。「ベトナムなのに」美味しいとか、「ベトナムだから」味がこうとか。
もちろん、飲み方ってそれでいいし、わたしだって世界中のワインを、そしてベトナムワインを、固定観念ばっちばちに決め込んで飲んでいます。だって、ブルゴーニュのワインは、ブルゴーニュのワインだなあって、思いながら飲みたいもの…っ!
でも、もしかしてそうじゃない飲み方をしたら・・・たとえば、ばっちばちの固定観念をとっぱらって飲めたら。
『もしや、他国のワインと、張るんじゃない?』そう現地で思ったのが、今回ブラインドでお出しした「ソーヴィニヨン・ブラン」だったのでした。
これ、現地でいただいたとき、「あれ?これ、わりとソーヴィニヨン・ブランだな?」って思ったんですよね。雑な感想よ。
でも、わたしってばその時点ですでに現地で飲んでるというハッピーバイアスがかかってますし、他国のワインと飲み比べる機会もなかったですし、そもそもベトナムワインばっかり飲んで舌も慣れて来てるしで、もはや、よくわからなかった。
このワインが本当にソーヴィニヨン・ブランらしいのかどうか、このときのわたしには、もはや判定不能だったのです。
それで、「これをブラインドで出したら、みんなはなんて思うだろう?」「いつか、そういうこともやってみたいな〜」と夢想したのが、今回のブラインドテイスティングイベントの背景だったのでした。夢、わりとすぐ叶った。
さて、この記事では、さきに答えを発表してしまいます。いきますよ。
まずは、1番が正解のベトナムのソーヴィニヨン・ブランでした!
そして、対バンワインとしてご用意したのが、2番のフランス(コート・ド・ガスコーニュ)と、3番のアメリカ・ソーヴィニヨン・ブランです。
このワイン会の前、我が家では各国のソーヴィニヨン・ブラン試飲会が開かれました。いろいろ飲んでみたなかで、決まった今回の対バンワインたち。
まさかのフランスと間違えると楽しいし(わたしが)、ニューワールド古参のアメリカを入れたら混乱するのではないだろうか。
それが我々ますたや家が、最終的にたどりついた結論です。さあ、みなさん、いかがでしょうか?
「うーん、こういう場合、ほかのワインも南国じゃない?」
「いや、ここはあえてフランスとか入ってるのかも」
「正解のワイン、自分だったら何番目に持ってくるかなぁ〜」
・・・いや、思ってたブラインド・テイスティングと違うな…?!(コンテクスト・テイスティング)
というわけで、参加者のみなさんがどのようにお答えになったのか、コメントともにご紹介します。
それぞれ、いかにもそれっぽい理由をお答えいただいているところに、本気度の高さが垣間見えます。
いやほんと、こういうふまじめな遊びは、ガチであればあるほど楽しいですね。ちなみに正解は安ワイン道場師範だけということで、思う存分ドヤってください!
(師範)「まあ、わたしは前に現地で飲んだことありますからね」
(一同)「あるんかーーーい!」
▶ 前回と今回がおなじく不動の68点であるところに、道場の矜持と師範の好みを感じます。
でも実はですね、「いちばん好きなワイン」をお聞きしたときに、もっとも票がはいったのは「ベトナムワイン」だったんですよ。ほっ、ほんとに…?!(照)
「いつも飲んでる味がした」「甘い感じがして美味しかった」といったコメントが続くなか、おなじくベトナムワインに1票を投じてくださったNagiさんからは、「正直、消去法です」というまっすぐなお答えが返ってきました。好きです。
というわけで、ブラインドテイスティングタイムはたいへん和やかに終了しましたーー
と、見せかけて、ガチ(※と書いておとなげないと読む)の大人たちの戦いが、ここで終わるはずがなかった…!(中盤へ続く)
さて、ベトナム白ワインの次は、ベトナム赤ワインをお出しします。
品種はカベルネ・ソーヴィニヨンです。
これが意外に評判が悪くなく、「よく飲むカベルネの味がします」「結構おいしいよね」とのコメントをいただきました。
そうか。わたしはわりと独特だと思ったんですが、やっぱり固定観念が邪魔をしているのかもしれません。
なぜ独特だと思ったのかといいますと、このワイン、ヨーグルトみたいな甘い香りがするんですよね。
わたしはこれ、てっきり「マロラクティック発酵」による乳酸系の香りかなぁ?と思ってたんですが、どうやら全会一致で「これは樽香ではないだろうか」とのこと。そうなんだ?!
でも、樽だとしても、これまでに出会ったことがない樽の香りなんですよね。
フレンチオークでもアメリカンオークでもない気がして、みなで首をかしげ、オークチップが入ってるんじゃない?とか、樽熟とチップの掛け合わせじゃない?などと話し合いました。
最終的に「ガジュマルの木で作った樽なんじゃないか」というのが、我が会の結論となりましたが、ここには醸造家も老舗ブロガーもインポーターだっているのに、一体なにを言ってるんだ……っ!!(全員好き)
ひと笑いしたのち、エミさんが「では、おなじカベルネ・ソーヴィニヨンを持って来ましたので、生産国をあててください」と言ってワインをお出しくださいました。
しっかり家からアルミホイルに包んできてくださるあたり、ワイン遊びのプロ感あるんだよな〜。
なにせエミさん、「グラス持ってきました」って言って、テイスティンググラス(6脚セット)取り出しましたからね。そんなことある?
ここでもみなさんワインを飲みながら、真剣に「うーん」とうなります。
「今日は南国ワイン会だから、たぶん南系のワインなんじゃない?」
「でも、地球のどの地点を起点にするかで、南って変わるよね」
「はっ、エミさんが持ってくるということは、ロシアより南ということでは…?!(※エミさんはロシアに造詣が深い方です)」
ということで、さっきから誰もテイスティングしてないな………!!(コンテクスト・テイスティング)
答えの産地は、「ウクライナ」でした。
答えを知って、みんなで拍手。
ウクライナワイン、日本に届きはじめたんですね。エミさんのTwitterによると、ルーマニアの港から出しているんではないか?ということ。
こちらのワインは「やまや」さんでご購入されたとのことで、手に入れやすい身近さも良きです。
ワインとしても美味しくて、わたしは正直ベトナムワインよりも、こちらのカベルネのほうが好みでした。
酸があってきゅ、と締まったエレガント系のカベルネ・ソーヴィニヨン。このワインをみんなで平和にわいわい飲めたことが、なによりも嬉しいと感じる時間でした。
「じゃあ、ここでわたしのワインも当ててもらいましょう!」と、師範のワイン、満を持しての登場です。こちらもすでにアルミホイルに包まれていました。ここは遊びの天才しかいないんか。
「資格持ちに業者にプロのみなさん。ヴィンテージと国とブドウ品種、ばっちり当てていただきましょう!」
というわけで、はりきって行きますよ!
インドのカベルネ・ソーヴィニヨン2019!だ!
わかるかーーーいッ!
味わいとしては、シラーズとわかったうえで飲むと、ちょっと独特な感じです。口内がぎしぎしするほどのタンニンと、同じくらい高い酸度。脳裏に一瞬『ネッビオーロ?』とよぎるような、鋭角な味わいをしていたように思います。美味しかったけど。
わたしは判断に迷ってカベルネ・ソーヴィニョンに逃げてしまいましたが、タンニンの強さから「(品種は)タナ?」とお答えになった、エミさんの回答にもうなずけます。
そういうわけで、資格持ちも業者もプロも、よってたかって誰も品種をあてることができなかったのでした。
と、ここでNagiさんがくちを開きます。
「でも、距離的には、トルコがいちばん近くないですか?」
まさかのご自身が答えた国で部分点を狙おうとする、醸造のプロ。ブラインド・テイスティングにそういう距離的な加点はないです…!
唯一、「ワインは初心者です♡」とお話されたまなみさんご夫婦だけが、なんと品種を当てるという結果に。ほんと全員反省したほうがいい。(ごめんなさい)
「いやあ、わたし今日は、嘘しか言ってないですね~」と照れ笑いされるNagiさんの言葉に、きっと、全員が心のなかでおなじことを思ったことと思います。
『大丈夫。わたしも嘘しか、言ってない。』(一体感)
さあ、南国ワイン路線に戻って、どんどん行きますよ!
続いては、タイの白ワインです。
こちらはバンコクから南西にくだったところにある、モンスーンバレーというワイナリーのワインです。この地域は皇族が訪れる保養地でもあり、きっと気候がいいんだろうなぁと思います。
タイ、まじで暑いですもんねぇ。バンコクなんてあんな都会なのに、結構、食中毒になる印象があるんですが(※あくまで印象です)、そりゃあんなにじめじめしてたら、菌にとっては楽園だよな~と思います。
香りは「ザ・パイナップル」!
トロピカルフルーツの香りと、ほんのりした甘みを感じます。持ち込んだ糖度計(持ち込んだ糖度計?)によると糖度8.0とのことで、わたし的には「ちょい甘」と言いたい雰囲気。
そして、今回のなかでもっとも「トロピカル」な雰囲気があったのも、間違いなくこのワインでした。
みなさんくちぐちに「いちばん南国らしい」「自分の立ち位置をわかってる」「南国ワインの自覚がある」と、評しておられました。南国の自覚があるワイン!
ところで話はすこし変わりますが、今回の南国ワイン会のハイライトのひとつは、「二期作」にありました。
トロピカルリージョンのワインって、1年に2回ブドウが収穫できるらしいんですね。暑すぎて。
つまり、冬期がないので、ブドウの木が休眠しないんだそう。
Nagiさんがおっしゃるには「タイ人の同級生は、頑張れば3回行けるって言ってました」とのことでしたが、頑張るって、一体なにを頑張るんだろう…?(収穫のスピード…?)
なかなか触れることのない二期作でのワイン造りに、タンクは一体どうしてるのか、ヴィンテージは同年のものを分けてリリースするのか(2020年春期みたいなことなのか)などなど、邪推レベルの話でひとしきり盛り上がります。
師範はこの、”年中醸造する”という点について「冬のワイナリーに行くと使われないタンクばかりで、物作り的な観点から見るともったいねぇな~と思ってた」と話しておられました。
うーんなるほど、確かに「眠った設備」ほど、もったいないものはないですね。
ちなみに北の産地から来られたNagiさんのご感想は、「(気温が高いので)発酵がめちゃくちゃ進みそうでいいな…」でした。ドイツでのご苦労がしのばれます…!
続くタイワインは、「PBワイナリー」の造るワインです。こちらのワイナリーは、2019年にますたや家が現地訪問しています。訪れるワイン産地のチョイス、おかしくない?
さて、南国(だけじゃない)ワイン会も、いよいよ後半戦にはいってまいりました。
ここでNagiさんから、ワインのご提供をいただきます。それが、南アフリカのピノタージュ。
「せっかくなので、わたしがなぜこれを選んだのか、その理由をあててください」とNagiさんからのクエスチョン。
もはやそれはブラインド・テイスティングでもなんでもなく、ただコンテクストを当てるゲームなんだよな…!
「南アフリカのなかでもっとも南で造られてるワインだから?」
「同僚が働いてるワイナリーとか!」
「ワインマーケットパーティの沼田さんに勧められた?」
などなど、多彩な回答(ほぼ口から出まかせ)が出そろいます。
ちなみに正解は、「アフリカーの小泉さんに南国ワイン会のことを話したら、サクラアワードで”タイ料理に合う”ワインに選ばれたのがこれです、って出て来たから」でした。いやわかるかーーーい!(思わずツッコむ)
それにしても、ワインはジューシーかつピュアでカワイイ果実味があって、あ~~やっぱ安定して美味いな南アフリカ…!と感嘆しました。はあ、ほっとする…(本音)
南アフリカは世界的にも売り場面積を伸ばしているようで、南アのワイン商業センスに脱帽するとともに、外貨獲得の手段として国を上げて推進していることがわかるね、などという、ちょっとまじめな話までできるこの会、楽しみかたが縦横無尽だな…!
最後の締めにはおなじく南アから、甘口ワインさんご提供の甘口ワインをいただきます。ポールクルーバーのつくる、ノーブル・レイト・ハーベストなんですが、もうこの頃の写真なんて残ってるわけないんですよ……!(ごめんなさい)
甘口ワインさんはお名前から想像される通りのワインの好みをお持ちです。ほら、ここにいるのって、実は3000円以外のワインのほうが飲んでる3000円ワインの民とか、実は安ワイン以外もたしなんでらっしゃる安ワイン道場師範とかなので…!(営業妨害)
普通のワインのことを「甘口じゃないワイン」って呼んでるの、たぶん、日本で甘口さんだけです。
こちらのワインを飲みながら、まなみさんが3分に1回「これ、美味しい♡」とおっしゃっていたことは印象的でした。
甘口ワイン、美味しいですよねぇ。わかります。わかるんだけど、自分ではなかなか深掘りしない領域なので、こうして仲間と集まったときに飲ませていただけるのって、本当に嬉しいし、あと美味しい。
Nagiさんから「ちょっとシンナーの香りがする」とお話しがあったり、エミさんから「ボトリティス・シネレアを感じます」との発言があったりと、甘口ワインに一家言あるみなさんからはたいへん興味深いご感想が飛び交っておりました。うん、甘いは美味いよ。(ますたやの感想)
というわけで、宴もたけなわですがこのあたりで会はお開きに。お片付けまでお手伝いいただき、ホントにありがとうございました!
このあと数人で二次会に行かれたとうかがい、主催としては嬉しい限り…!
楽しくて、美味しくて、ちょっと変なワイン会。
結果的に、はみ出しもののワインを愛する人々が集う、懐の深い会となりました。
自然な優しさ満点の、あたたかいワイン会。
そう。まるで南国のようにねって、おあとがよろしいようでーー
▶ 老舗ブロガー安ワイン道場師範の稽古日誌はこちらです。すごいぞ、ワインの味がわかる…!
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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)、夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得、2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得、現在はWSETLevel3を英語で挑戦中の、ワイン大好き夫婦です!
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