休校中のオンライン授業の検討会議は 「いつだって原理原則死守」派 VS 「非常時の対応は平時の対応は違う」派の綱引きだ。


アメリカ人の先生数人から連絡あったので、コロナ休校の状況を聞きました。州内に最初の感染者が報告されると即座に休校が決定され、1週間後にはオンライン授業を実施することも同時に発表されたそうです。教員はレクチャーを受け、1週間後にオンライン授業を始めたとのことです。

それに比べて、日本の学校は3月から休校が決まり、1か月以上たちましたが、なかなかオンライン授業が始まりません。保護者の方々はどんどんテレワークが進んでいるのに、なぜ学校はオンライン授業やオンラインホームルームを始めないのか不思議に思っている方が多いと思います。

なぜ進まないのか。なにがオンライン授業の開始を止めているのでしょうか。

お金の話も大きな要因ですが、ここでは教員間の話し合いがどのように進んでいるのか紹介してみようと思います。

教員間で話したり、いくつかの会議を経て、私の勤務校ではそれぞれの立場は以下の3つのパターンに集約しているように感じています。

 ①オンライン授業を賛成の教員
 ②オンライン授業慎重派の教員
 ③なんとなく様子見の教員

私の勤務校では③が大多数で、①よりは②の教員が多いかなという感じです。(このような議論が起こると、教員の反応は担当者の人望で大きく左右されることもあり、「この人が発案したものなら賛成だが、あの人のアイデアなら反対」と個人的な感情もからんでいることが否定できません。)


ちなみに賛成派の教員はこんな意見を持っています。

とにかく新しいわくわくするようなことを生徒と一緒にやりたい。
大きなパラダイムシフト。今だからこそできる新しいことを始めないといけない。
生徒・保護者の需要にこたえる何かをしないとまずい。
コロナ休校中に動けなかった学校と烙印を押されるのはまずい
学費に見合ったサービスを提供できていないのだから、学費に見合ったサービスを提供すべきだ。課題を出すだけではだめだ。


そして慎重派の教員はこのような意見でした。

あくまで学校は教室の授業がメインで、休校後の学校生活に確実につながるような活動でないと意味がない。
せっかく導入するのだから、これからずっと使えるICT教育につながる発展性のある活動になるように慎重に検討すべきだ。
まずは生徒のインターネット環境の調査から始めるべきだ。
全ての教員が同じように授業ができるようになるまで、始めるべきではない。
休校中の課題は十分に出してある。これ以上新しいことをやると生徒が消化不良を起こすのではないか。
双方向で授業をやることの意義がないのではないか。
セキュリティ上の不安があるので、そこが完全に解決してからでよいのではないか。

私は賛成派というか、教頭・校長をなんとか巻き込もうと画策したり、勝手に勉強会とか始めちゃったりしているのですが、「非常時の対応は原理原則は忘れよう」と考えています。


そして数々の話し合いの結果、現在は「原理原則死守」派慎重論 VS「フレキシブル万歳」派推進論 のイデオロギー闘争になっていくわけです。

両陣営とも自分の意見が正しいと思っていますし、お互いに相手の意見に対して、ある程度の理解と説得力を感じています。

原理原則派は「生徒に提供する以上、教育サービスは予想される障壁を取り除いた完全なものが提供されるべきだ。場合によって休校期間中に始められなければそれはそれで仕方ない」と考えていますし、

フレキシビリティ派は「いままでやったことないことをやるんだから、完璧を求めたらいつまでたっても始まらないよ。今は非常時なんだから多少の失敗があっても、とにかく一刻も早く始めることが重要だ」と考えています。

原理原則派はどちらかというと、サービス提供者の立場で考え、フレキシビリティ派は生徒・保護者の立場で考えているのかなと思っています。

で、

この議論の最大の欠点は「なんのために?」をスキップして議論が始まっていることなんです。これは本当にうんざりするほど目にする「学校あるある」なのです。

「○○をするためにはオンライン授業をやるべきか否か」の「○○をするために」を設定せずに話し合いを始めてしまうのです。そうすると皆さん自分の好みとか教育観を前面に押し出した議論になり、イデオロギー闘争となり、迷走した会議がだらだらと続くわけです。

学校が営利団体ではなく、基本的に利益を出してはいけない組織であることも関係しているのでしょう。○○をたっせいするためにもっとも効果的な手法はなんでしょう?という話し合いはほぼ皆無です。

こんな議論をしているあいだに1週間、また1週間とたってしまっているのです。

私立・公立、状況によって異なると思いますが、私の勤務校(私立)の場合は保護者からの電話が10本でもかかってくれば、とにかく早くオンライン授業始めないと!と綱引きの勝負はあっという間に決まってしまうんだろうなと思います。

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