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聖女の救済

この間久々に読書をした。受験生になってからはまったく読書をしてなかったので約1年ぶりである。読んだのは東野圭吾さんの「聖女の救済」。私はこの作家さんの本をよく読んでいて、なかでもガリレオシリーズはお気に入りだ。この本もそのシリーズの1つである。

以下ネタバレ注意⚠️




この本はざっっっくり言うと会社社長の夫が妻に毒殺される話なのだが、なにせ証拠が全く出てこない。それに加え妻には鉄壁のアリバイがある。とまた私にとって大好きな設定である笑。これを刑事と湯川先生が解き明かしていく。


さて、この夫婦は夫の考えで一年以内に妻が妊娠しなければ別れるという約束をしていた。夫は子供が出来ることが人生にとって欠かせないことだと思っていた。私はそんな考えもあるのかと思ったが、あまり理解できなかった。子供がいなくたって幸せな夫婦だってごまんといる。


では妻はこの約束に同意していたのか?となる。実は結婚前から妻は不妊症だと予めわかっていた。夫が約束を反故にしてくれるのを一年間ずっと望んでいて、もし反故にされなかったら夫を殺害すると決心したのだ。浄水器のフィルターに毒を仕込むというトリックを仕掛けたのが一年前。それから一年間誰にもキッチンに入らせず、浄水器の水を使わせなかったのだ。とても現実的ではない。いや、絶対誰か他の人が間違えて使って死んでしまうでしょ…と思った。実際、作中で湯川先生もこのトリックは虚数解であると言い表していた。


妻は一年の間に夫の考えが変わってくれれば、と望み続けた。変わってくれれば殺さない。つまり一年間の「救済」を与えたのだ。でも夫の考えは変わらなかった。救済終了である。


他人と考えが違っている時、話し合って解決するかまたは違っているということを認め、それを踏まえた上で相手と付き合っていくことが出来ればいい。ただ、どうしてもわかりあえなかったり、ゆずれなかったりする部分はどうにか説得して自分の考えを受け入れてほしいと思うだろう。それが恋人や夫婦なら尚更。この小説の犯人もそうだったのではないかと推測できる。


結局、この話の美しさは妻が夫の改心(回心)を信じて一年間の救済を実行したことなのだろうか。

私はそのことよりも妻に恋心を抱いていた草薙刑事が何とかしてその妻が犯人ではないことを示す証拠を探していた、ということの方が美しく見えた。

どんなにその人が犯人ではないと信じて捜査し続けるも捜査をすればするほどその人が犯人であることを証明してしまったのだ。これってめちゃくちゃ切ないなあ…泣と思った私だった。




P.S

この話はドラマにもなっている。残念ながら草薙刑事の恋模様はドラマ上では描かれないのだが、犯人役の天海祐希さんの演技がとてもすばらしいのでぜひ見てほしい笑




















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