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眼の宇宙

小学生の頃、鏡で自分の目を見るのが大好きな時がありました。自分の顔を眺めてうっとりとするナルキッソスではなく、目というあまりに不思議なものをずっと観察していたのです。

目の真ん中にある穴のような部分を見て、それが広がったり縮んだり微妙に動いている事に気づいた時はとても驚きました。その頃はまだ瞳孔という名前だとは知りませんでした。

そんな眼球観賞をする日々の中で、自分の目の上あたりに手をかざして陰を作ると瞳孔が大きく開くのに気づきました。その手をどけて光を目に注ぐと瞳孔が小さくなり、自分で動かそうとしていないのにあまりにも滑らかに動くので、実は私は機械でも仕込まれているのではないかと思うほどでした。さらに観察すると穴の周りの筋みたいなものが一緒に動いていて、これが何か開閉する秘密なのではないかと思うようになりました。

実際は瞳孔の周りにある虹彩が伸び縮みしているわけですが、その虹彩にある瞳孔散大筋が、図鑑で見た宇宙の星雲みたいで本当に不思議です。繊維のようなものの下にもまだ層みたいに何かあって、これって眼球取り出してほぐしていったらわかるのでしょうか。

黒目の部分が宇宙だとしたらその外側にある白目は何だろうと思ったわけです。宇宙の外側ってあるのかなとか、そんな事を考えて気づけば夕方みたいな事がよくありました。インドアな少年でも想像だけでとてつもない世界にfly awayできるのです。

やはり宇宙にしか見えません。ロケットを飛ばしたり人工衛星が回ったりしている宇宙も、もしかしたら誰かの、何かの動物の、はたまた想像もできない存在の目なのかもしれません。

ランブール兄弟の「占星学的人体 黄道十二宮人間」だったり、昔から人の体と宇宙が関連づけられる考えはあるとは思いますが、そんなミクロコスモスな人間はまた今日も争ったり嘘をついてばかり。毎日そんなニュースを見聞きして苦しいです。

持っている目を曇らせる事なくしっかり見極めていきたいものです。

そう言えば目と言えば谷崎潤一郎「春琴抄」では「白眼の所は堅くて針が這入らないが黒眼は柔らかい二三度突くと巧い工合にずぶと二分程這入ったと思ったら忽ち眼球が一面に白濁し視力が失せていくのがわかった」という表現があって、学生時分に読んで驚きました。

人の事を針で刺して傷つけて、そして自分自身の心が白濁していろいろなものが見えなくなっている人...いるかも、と思った次第です。

どうぞ目を、心の目を大切に。人の目も大切に...。




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