masumi yoshida

エッセイ、小説(らしきもの)を書いてます。主に「週刊ドリームライブラリ」サイト htt…

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エッセイ、小説(らしきもの)を書いてます。主に「週刊ドリームライブラリ」サイト https://note.com/dreamlibrary/ にて掲載

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咲くか、散るか

 東京タワーを後方に神谷町交差点を虎ノ門方向に向かう。 ファミレスの一面ガラス張りの鏡のような窓に映ったわが身を、塔子は垣間見た。年齢を重ね、ふくよかになった体…

masumi yoshida
8か月前
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あなたがいることで

 開通したばかりのシーサイドロードを星川椿(ほしかわつばき)は走っている。このラインができて週に数回の往復が便利になった。椿の自宅から県内のほぼ南端に位置する実…

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咲くか、散るか

咲くか、散るか

 東京タワーを後方に神谷町交差点を虎ノ門方向に向かう。
ファミレスの一面ガラス張りの鏡のような窓に映ったわが身を、塔子は垣間見た。年齢を重ね、ふくよかになった体。しみもしわも増えた顔は半分マスクで隠されている。これはラッキー。そして白髪隠しに色を付けた頭髪。若かりし頃の華やかさは微塵もない。その姿を見てみないふりをして通り過ぎ、塔子は路地奥を覗き込む。
 塔子は数年ぶりに「Trattoria Ti

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あなたがいることで

あなたがいることで

 開通したばかりのシーサイドロードを星川椿(ほしかわつばき)は走っている。このラインができて週に数回の往復が便利になった。椿の自宅から県内のほぼ南端に位置する実家までの小一時間は、椿ひとりの自由な時間。スマホからブルートゥースで飛ばしたお気に入りの音楽が車内でランダムに流れている。椿はハンドルを握る両手に力が入るのを感じながらアクセルを踏む。雪道だというのにすれ違う車はスマートな運転で走り去る。対

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