私の『レインボー』を見て、なに思う?
「それええやん。もうiPhone無くさへんで」
夫が新調したiPhoneカバー。ショルダーストラップなるものが付いていたらしい。私が記憶しているだけで、2回はiPhoneなくしている夫。えらそうに言うた私も、同じ回数なくしている。そして、ふたりとも、毎回手元に戻ってきているので、お互い懲りていない。
私も買おう。
iPhone新調したし、
頑丈なケース欲しかったし、
ストラップ便利そうやし、
置き忘れも防止できそうやし。
夫に教えてもらったAmazonサイトに飛ぶと、ストラップの種類が選べるようになっていた。夫が買った黒、迷彩柄と、
レインボー。
迷うことなくレインボーを選んだ。
届いた日から2年愛用しているのだが、置き忘れることがなくなった。初めての場所を歩く時はGoogleマップ必須の私だが、いちいち取り出さなくてもよくて便利。さらに、このレインボーストラップ。意外な発見もあったのだ。
「ますみちゃん、それいいね」
濃いグレーのコートにこのレインボー。目に入りやすい。入りやすいって言うより、主張つよめ。使い始めた2年前の冬、その日待ち合わせていた友人に会うと、すぐにそう言われた。
「レインボーをさ、そうして表に出して身につけるっていいよね」
彼女が言った「レインボー」は、色のことだけではなかった。同性のパートナーと暮らす彼女。レインボーはいろんな意味を持っている。
「ますみちゃん、似合うよ」
「そう? ありがとうー!」
言った彼女も私も、嬉しくなっていた。
「それ、付けてて大丈夫なの?」
初めて行った場所で、初めて会ったひとが、私のレインボーを見てそう言った。その場にいた共通の友人としばらく話していたあと、ふと、言われたのだ。
一瞬、「首からスマホストラップぶら下げてて、引っかかったりして危なくないんですか?」という意味かと思い、「へ?」という顔をしたら、続けて言われた。
「見た人から、誤解されるんじゃないの?」
あー、、、そういうことか。
「誤解されたらまずいの?」
「え、誤解ってなに?」
「え、なんなら今この場でそのことと、そのことについて発言したあなたの思考と感情について、深く掘り下げてみましょうか?」
と秒で脳内に出てきた。脳内でリングに上がり、パンチ打つ用意をしていたら、となりの友人がひとこと言った。
「『大丈夫?』って、なにが大丈夫って聞いてるの?」
「それ付けてて大丈夫なの?」と言った彼女は黙った。どうして黙ったのかはわからないが、別の人が輪に入り、私たち3人の輪がほどけて、それぞれ別の場所へ行った。
私は、リングに上がることも、パンチを打つこともしなかった。彼女と会うことは、もうないだろうなあと思った。
昨日の夕方。まだラッシュには早い時間、最寄駅のホームで改札階へ行くエレベーターに乗った。後から乗ってきた、お父さん。片手でベビーカーを持ち、もう片方の腕に小さな女の子を抱いていた。
女の子がじっと私を見ている。
私もじっと見ていたら、彼女が私を指さして、つぶやいた。
「え? にんじん?」
おとうさんがそう言うと、彼女は大きな声で、私を指さして、もう一度言った。
「にじ!」
お父さんが私の方を見て、にっこり笑って会釈されて、女の子に言った。
「そうだね。にじだね」
エレベーターのなかと、私のなかに、ほっこりあったかいものが流れた。
そうだね。これは、にじだったね。
心の中で、女の子にそう言った。
にじは、きれいだね。
私もにじ好きだよ。
このレインボーストラップ見て、次は誰がなにを思うのだろう?
美味しいはしあわせ「うまうまごはん研究家」わたなべますみです。毎日食べても食べ飽きないおばんざい、おかんのごはん、季節の野菜をつかったごはん、そしてスパイスを使ったカレーやインド料理を日々作りつつ、さらなるうまうまを目指しております。