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第4期将棋V名人戦 B級猪組 そるこり戦

内容・結果ともに満足のいく将棋が指せました!

2021年10月13日(水)、第4期将棋V名人戦B級猪組の第6局。鳥類最強の将棋指し、そるこりさんとの戦いは一宮真純にとって今期最大の大一番だと考えていました。対局前に何を考え、どう作戦を選択したのか。準備を含めて対局を振り返りたいと思います。

そるこりさんの印象

将棋V名人戦のB級猪組。某サイコパス将棋廃人をして「レベルが高い」と言わしめた強者揃いのメンバーの中、もっとも評価が高い棋士。それが対局相手のそるこりさんです。

そるこりさんは三間飛車メインの振り飛車党ですが非常にバランスのいい棋風で、攻め・受けともに高いレベルで安定されています。特に中盤力に優れており速度計算の能力が高く切り合いの将棋に強い方だと考えています。

Twitterを拝見されている方はご承知の通り一宮は将棋V名人戦マニアというレベルで各対局を見させていただいています。同じB級の対局もほとんど拝見しています。

その中で感じたこと。それは

B級で一番強いのはそるこりさんではないか?

それぐらいの強さをこの鳥類からは感じました。

対局準備その1ー対抗系への苦手意識

そんな最強の相手、そるこりさんとの対局に向けて準備を始めました。まずは戦型選択です。

そるこりさんは本当にお優しい方です。一宮が「そるこりさんの研究配信をやっていいですか?」とお伺いしたところ、快諾いただいたばかりか、研究用として81道場だけでなく将棋ウォーズや将棋クエストのIDをDMにてご連絡いただきました。なので過去の対局を何局か見させていただきました。

印象としては、たまに相居飛車の将棋や居飛車側を持っての対抗系も指されますが、基本的には三間飛車メインの振り飛車党です。特に居飛車メインの相手には振り飛車を選択されることが多いので、対抗系をメインで作戦を検討しました。

一宮は対抗系は好きなのですが得意とは全く思っていません。81道場のデータですと17局指して勝率58%と高いように見えますが、これはまがい物だと考えています。

理由は単純で戦い方を一つしか知らないのです。

一宮の対抗系の戦型選択は居飛車穴熊一択です。むしろそれ以外の戦いかを知りません。特に急戦は本当に苦手で5七銀右戦法、5七銀左戦法、4五歩早仕掛け、ポンポン桂など名前は知っていますし何回か覚えようと指したこともあるのですが、全く覚えられないのです。

さらにその居飛車穴熊についても穴熊の堅さを生かし、雑に攻めて雑に勝つを繰り返しているだけで本当の実力者と戦うと組む前に負けるか組んだ後に正確に受けられて負けるかばかりでした。

将棋V名人戦の練習対局や通信対局などで、某バーチャルメイドさんや某無限大さんに居飛車穴熊を選択してボコボコにやられた経験もあり、別の作戦を用意しなければと考えました。

対局準備その2ー右四間飛車エルモとの出会い

対抗系で何を指すか。悩んでいた10月初旬。運命的に出会ったのが「右四間飛車エルモ」でした。一宮は右四間飛車は知っていましたがまともに指したことはありません。またエルモ囲いについては名前すら知りません。

なぜ右四間飛車エルモにたどり着いたのか?ちょっと良く覚えていないですが、おそらくAmazon Kindle Unlimitedで対抗系の戦法を探している時にふと見つけたのだと思います。

エルモ囲いは単手数で船囲い以上の堅さを得られるのが特徴です。もちろん穴熊や銀冠、左美濃に比べると堅さでは劣りますが、組み上がる前に攻められて負けるといった展開にはなりにくい囲いです。今まで振り飛車側の美濃囲いの堅さに船囲いで挑んでボコボコにされた一宮にとっては革命的でした。

ただ、このエルモ囲い。問題点が二つありました。

これは配信中のチャットにて某メイドさんの親衛隊さんや某無限大さん、某熊さんにそれぞれ教えていただいたのですが、まとめると「今まで船囲いでやっていた急戦をそれよりも堅いエルモでやるがテーマなので、急戦を知らないとあまり意味がない」という事実です。

前述の通り、一宮は急戦を知りません。チャット欄で指摘されてなるほどこれは困ったと思いました。

そんな中、救いの手となったのが右四間飛車です。

右四間飛車は一宮も少しだけ指したことがあります。ただ、どちらかといえば居飛車側ではなく振り飛車側を持って指されることの方が多く、やっかいな戦法だなと思っていました。ただ天邪鬼なところもあるので「こんな簡単で強い戦法は嫌い!」と遠ざけていました。

ですが、急戦を知らない一宮にとって右四間飛車は狙いが単純で覚える変化も他の休戦に比べると遙かに少ないと感じたのもまた事実です。短期間で一定レベルに達するのにこれ以上の戦法はないと選択しました。

またこれも配信中のチャットで、某初心者向け妖精さんから「右四間飛車は飛車角銀桂で攻めるという将棋の基本が詰まった戦法」と言われたのがめちゃくちゃ救いになりました。今まで右四間飛車に対して思っていた良くないイメージが一気に変わりました。

対局準備その3ー最終的な戦型選択

これにより、右四間飛車エルモが最有力の戦型として急浮上したのですが、前述のエルモ囲いの問題点のもう1つを解決する必要がありました。それは堅いけど堅くないという事実です。

エルモ囲いは船囲いと比較すると確かに堅いです。ただそんなには堅くないのです。振り飛車側の本美濃と比べると玉が一路浅いという1点から本美濃の方が堅いかなという印象があります。

また前述の通り、そるこりさんは中終盤の斬り合いに強いタイプとにらんでいました。エルモ右四間飛車で戦いを起こした後に仮に有利がとれても中盤力の差でひっくり返される展開が見えていました。

中継配信で某棋凜アイドルさんがおっしゃっていた「付け焼き刃のエルモ右四間飛車と経験豊富な三間飛車」の戦いで勝てると考えるのは危険だと感じていました。

そこでたどり着いたのが本譜の選択「右四間飛車穴熊」です。右四間飛車の単純な攻め方と穴熊の堅さで勝つというシンプルな戦法。これこそ最適解だと思いました。

ちなみに思いついたのは対局日前日の10月12日です。そのため対人で練習する機会がなく、正直不安はありました。ただ2点、一宮に良い材料があると感じており、

・そるこりさんは対穴熊の経験がそこまで多くない
・手順を工夫すれば居飛車側だけ一方的に穴熊に組める

と考えました。特に後者はチャット欄でみさなんにご指摘いただいた点で、玉の囲いを少し遅らせて右四間飛車の形を早々に決めて「いつでも攻めるぞ」という形を作ることで、一方的に相手の囲いを限定し、それを見て居飛車側が囲いを選択できる、というメリットを生かそうと思いました。

中継配信で「右四間に飛車を持って行くタイミングが早い」と指摘がありましたが、まさにこれが狙いでした。

対局について

さて。ここまでで2770字も書いているという事実に改めて驚愕していますが、本譜についてはそこまで書くことはないです。。そるこりさんのミスに助けられた結果、かなり居飛車側が指しやすく、間違えにくい戦い担ったと思います。

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対局後に水匠先生にご意見を伺ったところ、先手の一宮の悪手・疑問手が0%とおそらく一宮至上初の将棋が指せました。会心譜といっていい内容だと自負しています。

ただ、運がよかったのも事実です。そるこりさんの手で読んでいない手もいくつかありましたが「あ、これで大丈夫だ」という展開が2、3回ありました。あそこで手がなければこちらが苦しい展開もあったと思います。

また、こう指されたらどうしよう?という手がある状況で、「分からないから指してしまおう」という手が2手ほどありました。このあたりはその後の方針を決めて指せるようならないといけないなと思います。

課題も見つかった対局で実りの多い対局になりました。先日の日比谷響さんの対局後は悔しさが勝りましたが、今回は最大の敵だと思っていたそるこりさんに勝つことができ、満足な将棋を指すことができました。

おわりに

正直、この対局に関しては一宮の実力だけで勝ったとは欠片も思っていません。将棋ブートキャンプやlishogiの通信将棋、電子れいずさんの修行対局などさまざまなシーンで将棋Vさんや視聴者さんと対局させていただいたり、チャット欄で問題点や考え方を指摘してくださったことが勝利につながったと思っています。

どれか一つでも欠けていたらこうはならなかったです。本当にありがとうございました。

まだ、将棋V名人戦はあと1局残っています。絶対に悔いを残さないようにこれからも精進して参ります!

対局小話

PS.その1(対局開始直前の出来事)

~対局開始前のVC~

いつものように静かな真純ちゃんに対して

もるすこちゃん「あれ?直前の3手詰で真純ちゃん疲れちゃってる?」

すみません、人見知り発動してるだけです(´;ω;`)

PS.その2(中継配信での出来事)

某棋凜アイドルさんのコメント

・「穴熊だな!?あいつ」
 「あれほど急戦しろっていってんのに」
・「一宮くんそこまで考えてないと思うよ」
・「私なら7五歩だけど」
 (真純ちゃん、7五歩を指す」
 「あーあ」
・「あれだけ3手詰解いて見えなかったら切腹」

対局の勝利の代償として好感度を失ったようです。。。

サムネイルイラスト:Pallad先生(@󠀁Pd_pallad)

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