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複雑ではないもう少し単純な、でも大切なこと

今日はスタッフの上原くんと二人で徳島・淡路・姫路の建築見学ツアーを行った。同行者は勇建工業の加村社長と姫路の井藤工務店のご兄弟である。今日のお目当ては徳島にある中川林材工業さんだ。ここでは杉板を焼いて外壁に貼るための焼杉を製造している。焼杉の黒い外壁はとても温かみのある風合いで、日本の風景にとてもよく合うものである。その外壁を四国の海に面する辺鄙な場所で、人の手で丁寧に一枚一枚の板を慈しむように加工して作っているということを目の当たりにすると、まだまだこういうものづくりが残っていたんだなあの感である。

ちなみに写真の様子は抜け節をおが屑と接着剤で埋めているところだ。外壁が抜け節で穴になることを防ぐための措置だけれど、これまたなんとも途方に暮れる作業である。だって一枚の板に何箇所かの穴があって、それを埋めて乾いたらヤスリで削るということを人の手でやっているのだ。単純繰り返し作業、なんだかネパールの仏教彫刻を作る職人さんや、僕の父が昔やっていた機械加工の繰り返し作業を思い出した。そういえばこういう労働が昔は目の前にあったのだ。それをやっていることで人々が幸せに暮らすことができていた社会はどこに行ってしまったのだろう。生産性の向上、賃金上昇、複雑な精度、・・・どんどん仕事の様相が変わっていくけれどそれもまた人がやっている事。一体何が正解なのか。

人は自然に生かされていると思えば、この板一枚でも節があるからといって捨てることなどできない。人が自然を支配できるという傲慢さは捨てるべきだ。少しでも長く平穏に暮らせる環境を維持するためには何をすれば良いのか、複雑ではないもう少し単純な、でも大切なことを考えさせられる1日であった。


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