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よく晴れた日曜日12歳のロッシーニ

ある社長さんに頂いたCDはロッシーニが12歳で作曲したソナタだった。

クラシックを聴き始めて間もない頃、ぼくはアルバイトでガラス清掃をしていました。

よく晴れた日曜日、ある会社の社長宅を清掃しに行ったとき、立派な室内に弦楽四重奏曲がかかっていました。

可愛らしく明るく爽やかな曲で、今日のように晴れた日曜日にピッタリの曲だなあと思いました。

聴いているととてもウキウキしてきて、ピクニックに出かけたくなりました。緑がどこまでも広がる木陰でサンドイッチを食べて、保温されてまだ熱いコーヒーをわざわざカップに注いで飲んでいる。すると爽やかな風がさーっと吹き抜けていくイメージが浮かんできます。

とてもいい曲。

この感じはモーツァルトだろうとは思うけれど、なんという曲だろう?

知りたい、とても知りたい。

失礼と思いつつも、知りたい欲求を抑えることができず、くつろいでいる社長さんに「いい曲ですね。モーツァルトですか?」と声をかけました。

その社長さんは「お、君もクラシック聴くのかい?」と身を乗り出してきました。

そして、とても嬉しそうに

「これモーツァルトのようけど、実は、ロッシーニなんだよ」

と答えてくれました。

僕はロッシーニはオペラをたくさん作曲した人くらいしか知らないというと、「ロッシーニは、オペラを立て続けに39曲創り、人気絶頂の37歳で引退し、その後はいっさい作曲しないで、美食家で有名だった人だ」と教えてくれました。

今部屋で流している曲は、全6曲からなる「弦楽のためのソナタ集」で、なんと神童ロッシーニが12歳で作曲したものだといいます。

ただ、このアルバムは6曲の中から、1番、3番、5番、6番が収録されていて、演奏はイタリア合奏団だということでした。

「イタリア合奏団はやっぱりカンタービレ大切にしている」

カンタービレ(美しく歌うように)の意味もよくわからなかったけれど、12歳のロッシーニが作ったことにえらく感動していると、高級コンポのプレーヤーからCDを取り出し

「君にプレゼントするよ」と渡してくれました。 

あれから何十年も経ったけれど、いまもプレゼントされたそのCDを持っていて愛聴しています。

このアルバムを聴くと、あのよく晴れた日曜日と社長宅のリビングを鮮明に思い出します。

おすすめCD

カラヤン盤、シャイー盤など、優れた演奏もあるけれど、はじめにあの部屋で聴いてプレゼントされたイタリア合奏団が心に染み込んでいます。

『ロッシーニ:弦楽のためのソナタ集イタリア合奏団‘87』 




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