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感情決壊『幻影の風花』


赤黒い怒りと
青白い悲しみ
その両方を抱え込んだ
一匹の猫が空を飛ぶ
消えぬ満月の夜
失われた太陽
モノモノ、死に近く
我々は惑うのみ

桃色の恋愛感情も
黄緑色の優しさも
我々は忘れてしまった
空色は遥か過去へ薄まり
未来は深海の如く
ほろ苦い珈琲より黒く
もはや感情など流れ続けて
決壊してしまった

人間らしく生きようと
虹色を取り入れることを意識する
しかしすでに手遅れで
人間は闇夜の色に染まりつつある
それから感情を吐き出し続けて
やがて枯れ果てて死を待つのみ
欠けぬ月に怯えながら
空を飛ぶ猫を讃えながら

黄金の喜びと
白銀の悦楽を
余すことなく吸収して
進化した猫が駆け巡る
満月に見惚れる人間
意思を持たなくなった獣
我々は時間と共に乖離していく
その度感情が壊れていく

感情が、壊れていく

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