満月『薄命、革命、生命』
我々人間の価値を破壊するためだ。それから、創生が始まる。あの月が望む、新時代の在り方に沿って。
婆さんの言葉通り、世界は替わろうとしている。
愛されていた事務所も、どっかの国も、僕らの街も、何もかもが破壊されて、創生する。
今まで信じていたことが、愛いていたものが、黒い幕で覆われていく。
もっと純粋でありたかったよ。その方が、絶対に幸せだから。
だけど世の中は清純な人間を容赦なく殺していくんだ。恐ろしい世だ。
そして僕らが作り上げてきたあらゆる価値観をなぎ倒していく。
まるで、台風が立派なヤシの木をいとも簡単にへし折るみたいに。
やがて、ボロボロになった僕らの上から、白い雪が降ってくる。
風花だったものが、だんだんと成長して、やがて地に積もりだす。
そうか。これから冬が始まるんだ。寒くて辛い、冬が。
もし、その冬を乗り越えられたら、また温かい春がやってくるだろうか。
今のところ、その保証はどこにもない。もう、春はやってこないかもしれない。
それでも、僕は信じて待つことしかできない。読書でもしながら、ゆっくりと。
夜空を見ても、やはり、月は欠けていない。
そこには、ただ満月が在る。それだけだ。
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