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立食パーティー(『文房具たちの共鳴』)

立食パーティー


 テレビを付けると、芸能人たちが立食パーティーをしていた。年明け早々、彼らは豪勢な料理と共に世界平和について談笑しているらしい。

 しかし数分後、彼らは警察によってしょっぴかれる。早くしろ! と怒号が飛び交うパーティー会場。ドレスを持って逃げようとする有名女優を取り押さえる警察官。拳銃を構える者もいた。

 表面は親睦会。しかし裏面は麻薬の密約。彼らは巧妙な手を使い、麻薬の取引をしていた。

 私はその様子を、柿の種を食べながらぼんやりと眺めていた。話題の俳優。人気ロックバンドのボーカル。二世タレント。あるいは政治家もいる。しかし、みんな善人面した悪者だった。彼らのファンは何を思うだろうか。絶望か。怒りか。それとも、透明な感情か。

 SNSはお祭り状態だ。次々と捕まる有名人たちを罵る者ばかり。挙げ句の果てには「次はあいつも捕まえてほしい」なんて叶わぬ願望を書き込む者もいる。人間とは残酷で薄情な生き物だとつくづく思う。しかし、その性悪を求めてしまう私がいる。革命を起こすには、犠牲を伴う。

 立食パーティーを放送していたテレビは、いつの間にか砂嵐になっていた。私は電源を落とし、ソファに寝転がる。今頃忙しくしている人たちがいる。ニュースを見て悲しむ人もいれば、嘲笑する人たちもいる。だが、私は無関心に目を瞑り、頭の中で彼らのいない未来を想像する。それはそれは虚空なものだろう。それでも、国民は笑顔を絶やさず生きている。それなら、問題ない。

 最後に、立食パーティーで出された食事は廃棄されてしまうのだろうと、そこだけは胸を痛めた。

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