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ショートケーキ
ショートケーキを買ってくれたおじいさん。
あなたは今、どこにいる?
どこにもいないのなら返事をしてくれ。
僕はあなたに会いたいだけだから。
結いは解け、ゆっくりほつれてゆく。
僕らはやがて、個となって溶けてゆく。
玩具屋で売っていたロボットのおもちゃ。
錆びているけどそこには魂があったらしい。
夜になると急に泣き出す。そして言うのだ。
「嗚呼、僕は孤独である」と。
バラバラになってゆく価値観を飲み込む。
そうでもしないと、寂しくなるだけ。
一羽の鳩が空き缶を突いて遊んでいる。
大きなトラックが横を通り過ぎてゆく。
行先はどこであろうか、鳩は想像する。
それが天国であれば、幸せだろうか。
見える未来はただただ薄暗く、
しかしそれは夜明け前の青さである。
僕は一人でショートケーキを食べる。
最後に残した苺を食べようとしたとき、
僕にとって最愛の人が手で掴んで食べた。
そして「美味しい」と言って笑っていた。
孤と孤。それが繋がって、輪になるだろうか。
僕らはそれを望んでいる。ずっと望んでいる。
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