👫子ども政策に関するヒアリング実施報告📣

2022年9月28日

社会的養護を経験した若者、または児童相談所の介入がなかったけれども親元から避難してきた若者たち4名(18-21歳)にインタビューを行いました🎤✨

聴き手
こども家庭庁準備室の方々4名

Q.どんな経験をしてきましたか？

（個人が特定されないよう経験をランダムに書いています）

●幼い頃から親から虐待（身体的暴力や暴言）を受けてきた。
●児童養護施設、自立援助ホームを利用した。
●児童相談所が関わらず18歳を過ぎてから家を出た。
●家出をしてから居所が定まらず転々としてきた。
●支援団体の支援を利用しながらホテル住まいをした。

などの経験がある若者たちです

Q.保護される前の困りごとは何でしたか？

（こういうことがあったら良かった等も）

＜親に関すること＞

●逃げることが親にバレたらもっとひどいことをされてしまうという不安があった
●逃げたとしても親に居場所を探られないかという不安だった
●高校卒業するために家から通うしか考えられなかったため耐えるしかなかった

＜相談先に関して＞

●気軽に相談できる大人がいなかった
●公的な制度が助けてくれなかったため、自分で民間団体を探すのが大変だった（その団体が怪しい団体ではないかなども判断が難しかった）

＜家を出ることについて＞

●家を出たとしてもその後一人で暮らすための資金がなかった
●転入・転出するためにどのような手続きが必要なのか知識がなかった
●全く知らない土地に逃げてきて、分からないことだらけ。道も分からない。
●安全性を確保する方法がほしかった
●職場を探すにもどうしたら良いか分からなかった
●親から逃げるため学校を辞めざるを得なかった

Q.保護された後の困りごとは何ですか？

＜親からの心理的支配＞

●家から離れても心理的支配が続く（思い出すなど）
●どこかでまた親と偶然会ってしまったらどうしようという不安
●親と同じ車の車種を見ると怖い（確認してしまう）

＜事務的なこと＞

●役所間でも情報共有がスムーズでないことがあり不安
●進学したいけど、家賃、引っ越し、費用などどうするのかわからない
●マイナンバー（本人確認書類）ない（親が持ってる・持ってこれなかった）
●母子手帳の内容わからない（病歴・予防接種歴がわからない）
●親が持っている自分名義の通帳があり、資産があるとみなされ生活保護が受けられなかった
●生活保護で家を借りる時、「親からの虐待」という背景があると不動産屋に断られた

＜保証人関係＞

●親を頼れないという背景があると不動産屋に断られる率が高い
●保証会社を利用するにも親族の緊急連絡先を求められた
●病院の入院の身元保証人に困った

＜メンタル面＞

●精神面でのサポートがもっとあったら良い
●大学進学したいが、生活保護を受けていたら行けない。経済面や精神面が厳しく今の生活から抜けられない。
●精神科医療保護入院の時の家族の同意に困った

＜良かったこと＞

●親からされていたことの日記を付けていて、それを持ってきて良かった
●家を出るにあたって持ってきて良かったもの。マイナンバーカード、保険証、おくすり手帳、通帳、母子手帳、印鑑

Q.こんな環境や方法だと話しやすい

＜知識について＞

●話すにも声を上げるにもまず知識がないとあげられない。虐待とは何かを教えてほしかった。
●自分の家は普通と思っていたからそうではないと知れる機会ほしい
●権利があること知りたかった（守られる権利など）
●学校などで「暴力は普通じゃない」という学びの場があると良い
●保護された後どうなるかも知る必要がある

＜こんな人には話しやすい＞

●知識のある人
●精神面で専門的な知識をもった医者
●オーバーリアクション過ぎる人は苦手。普通のトーンでリアクションしてほしい
●「大変だったねー！」とそこばかり強調してフォーカスしないでほしい。
●大変さを聴いてもらえて良かった
●仕事として話を聞いてくれる人の方が良い（弁護士など）
●日常生活に支障をきたさない人（例えば学校の先生だと嫌でも翌日会わなければならないという日常の中にいる人だから話しにくいことも）
●高校の友だちが話しやすかった。茶化さず真剣に聞いてくれた。
●年が離れていても、タメ語使える感じなら話しやすい。
●口が軽い人には言えない。友達にしても人を選ぶ。友だち→親→自分の親　と知られてしまうと怖い。
●カジュアルな服装の方が良い
●父母と年が近い年代の人は話しにくい時もある
●年代の近い人が話しやすい
●性別：同性が良い（女性多数回答）、どちらでも良い（男性回答）
●同じ経験をした仲間がいると話しやすい（今日みたいな）。同じ経験をしたとしても、年が上過ぎると否定されることもあるから年代が近い方がより良い。
●話したことがどうなるかが分かること大事（説明やその後）
●否定しない人

＜こんな環境だと話しやすい＞

●１対１でも大丈夫。１対１はキツい。（どちらの意見もあり、人それぞれ）
●正面よりは斜めや横にいる方が話しやすい
●カフェ話しやすい（周りの人も話してるから。シーンとした場所よりは良い）
●面談より、日常の中での声を聴いてほしい
●面談となると周りの目が気になる
●カウンセリングなどに行くと「あの子どうしたの？」という目で見られる
●人数は：聴く人2名、自分１、自分のサポーター１名　とか話やすい。
●同じ話を何回もするのは大変
●何回も同じことを聴かれるのは嫌
●メモしながら聴いてもらうのが良かった（何を話したか忘れちゃうから）
●食べながらとか何かしながらの方が話しやすい
●話をして、その後必要な知識や情報がほしい
●声を聴いただけで終わらないでほしい
●声を上げたい子があげるのではなく、みんな参加でたまたま自分もその中にいるというような状況の方が良い。みんなの声が聴けるように
●「自由に話してください」より、カテゴリーにテーマが分かれている方が話しやすい

＜こんな方法だと話しやすい＞

●最初は文字の方が気が楽かも
●今となっては対面でも話せるようになったが、何も知らない家を出る前など当時であれば文字で打った方が話しやすかったと思う

【みんなの感想】

●色んな選択肢があると良い（散歩しながら、食べながらなど）
●選択肢を教えてほしい
●知らないこと沢山。知識大事。自分が困った分、他の人に同じ経験してほしくないし、そのためには協力したい。自分自身、もっと前から知っていたら…と思う。幼い頃から知らせてほしい。逃げれる場所があると聞いてはいたけど、身近ではない。大人なら逃げられるけど、子どもは大人がいないと逃げられない。
●思っていたことを周りのみんなも言ってくれた。将来自分も居場所づくりをしたいと思った。
●思っていたより和んだ雰囲気で話しやすかった。学校で学ぶ機会があったような気もするが、迷惑メールの話しなどとひとまとめに紹介されていて内容が薄まった。虐待専門の時間として教えてほしい。現実味がない。実感を感じられるような、これって自分のこと？と思えるように。
●普通じゃないと気付ける機会が大事。
●自分の家が普通だと思っていた。自分が悪い、大人が正しいと思ってたから、相談するものという認識にならなかった。
●「どんな理由があっても叩かれていけない」ということを知れる機会を。
●話すタイミングまで待ってもらえることも大切にされていることを感じた。
●隣にいることも大事。話すタイミングを自分で決められるのが良い。
●話したことを取り消せるのも大事。

あとがき

今回、説明も含め2時間半の時間を設けましたが、時間めいっぱい意見が出ました。一つひとつの声をもっと掘り下げたかったですが、とても時間が足りなかったです。

皆さんの経験や困りごとについては、互いに共感することが多い様子でしたが、どんな環境や方々だったら話しやすいかについては人それぞれで逆の意見が出ることもありましたので、環境や方法は「多様な選択肢」を用意することが大切なのだと思いました。同じ人でも、前の状況ではこのような方法が良かったけど、今はこのような方法が良いと、危機的な状況にいるか安全な状況であるかによって、話しやすい環境や方法は変わるのだと感じました。

また、話すにも、助けを求めるにも、「知る機会」が無ければ、声を発するにも至らないのだということを強く感じました。自分の家が普通、叩かれて普通と思っていた。これは皆激しく共感していました。家以外で多くの時間を過ごす学校が鍵となると思いました。学習要領やカリキュラムはあるかもしれませんが、それ以上に「命に関わること」「守られる権利について」などにもっと触れられていく必要があると思いました。

学校で配られる「ここに相談してね」というカードも、親にスマホの履歴を見られる、家の電話使うの怖い、電話してる時に親が帰って来たらなどと考えるととても電話できなかったと皆言っていました。公衆電話の使い方が分からないからカードに公衆電話の使い方を書いたり、学校にそのための10円玉がたくさんあったら良いかもなどというアイディアも出ました。

聴き手に関してもとても大事で、話したところでそれがどのように取り扱われるのか、これからどうなるのかきちんと説明されていることが必要だと感じました。大人はある程度回答を想定していることもあるけど、こうして経験者の子ども若者に聴くと思ってもみない回答があるので本当に意義のあることだという聴き手からのコメントも印象的でした。

大人が先回りして考えるよりも、経験者の生の声を制度政策に反映していく、それをしくみ化していくことはとても大切だと感じました。

栗原心愛ちゃんの声を忘れてはいけないと、折に触れて思います。彼女があげた「お父さんからぼう力を受けています。助けてください」という声。発した声が正しく取り扱われず、父からの暴力はひどくなりました。そして命を落としました。

ここに集まってくれた若者たちもずっと「命の恐怖」に怯えながらここまで過ごしてきました。声を発したらもっとひどいことになるのではと思い、ずっと我慢をしてきました。近年、中高生、はたまた18歳以降で被害から離れてくる若者が多くいます。保護が遅くなればなるほど、子どもたちの傷付く期間が長引いているということです。傷付く時間が長くなるほど、リカバリーにも時間がかかります。夢を追いたい年頃の若者たちにも関わらず、やりたいこと諦めたり、心の治療や療養に時間をかけなければならないのです。

社会がもっと早くに気付いていれば。

子どもたちが自分の家が普通でないと気付けるヒントがもっとあったら。

変わる人生はたくさんあります。
他の子には自分と同じ経験をしてほしくないと参加する若者が話してくれました。

本当に貴重な声を聴かせてくれてありがとうございました‼️若者たちに心から拍手です👏

そして、これからの政策に期待です‼️💪

一般社団法人Masterpiece
菊池　まりか(まりっぺ)

Masterpieceオフィスにて