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父の人生を変えた『一日』その10~運命~

その10 ~運命~
㈱トーメンから内定者全員に、入社前の『海外研修』の案内がきた。㈱トーメンに入社する前にヨーロッパに行きヨーロッパ共同体見学や色々と研修するという。すぐに、『参加する』意思表示をした。この頃の日暮里の駅前の薬屋の息子の家庭教師を毎朝していた。そのお母さんから話があると言ってきた。「息子から聞きましたが息子薬科大学入る大事な時期なので、お礼はいくらでもしますのでその海外研修旅行キャンセルしてください」との依頼であった。目にはうっすらと涙があった。「分かりました。哲也君の人生にとって大事な時期キャンセル致します」と言って㈱トーメンの人事研修課にキャンセルの連絡を入れた。
これが、後でとんでもないことに繋がるとは誰も疑わなかった。㈱トーメンのメインバンクである東海銀行中央信託銀行等の皐月会からも参加者があり、海外研修の総参加者人数は新人約百数十名の人が参加した。
 パリの空港近くにエルムノン村があった。飛行機は離陸後そこに墜落した。『全員死亡』大きな事件が発生した。日本中が驚いた。私はテレビ報道を見て自分の目を疑った。行く前に友達になった見坊君の名前があった。青山大学出身のすばらしい友人であった。明治大学の小倉君の名前もあった。「皆、亡くなってしまった」呆然とした。何でこんなことが起こるのだと嘆いた。一体全体どうなっているのだ。
 入社前なので正式な社員の身分では無かった。㈱トーメンも入社前海外研修は初の試みであった。大変な事になった。準社葬が築地本願寺で行われる案内が届いた。入社式にはマスコミのフラッシュ。とんでもない社会人デビューであった。『―憎まれっ子世に憚る』では無いが偶然にも私はこの事故から逃れた。人事研修課かたら社報に載せる『―追悼論文』を書いてくれと依頼され涙をこらえしっかりと書いた。


~倅の解釈~
 この事件は幼少期から聞いていた。父がこの飛行機に乗っていたら私もこの世にいなかった。2016年4月2日に父が亡くなり、その後、約1年半をかけて父の旧友、トーメン時代の友人などご挨拶廻りをさせて頂きました。ここでも運命の出来事が。父と同期に北澤様からは亡くなったあと、数か月たちご連絡を頂き、母も良く知っていらっしゃる方で、大阪までご挨拶に出向いた。そこで父の若いころのお話しを聞かせて頂いた。
 「水澤君、大変だと思うが何かできることあれば言ってくれ」「仕事を頂きたいです」
このやりとりで、北澤様は爆笑して、「親父にそっくりだな」と。この後、大きな仕事を頂き、今現在も大変お世話になっている。こんな天国の父からの贈り物が今現在も続いている。トーメンの同窓会にて上記に記載されている亡くなった小倉様の奥様とも運命的な出会いをした。娘さんが偶然にも私の第二の故郷であるシアトルに留学しており苦戦していると聞く。そこで、父の秘書を長年していただいたシアトルに住む、美津子さんに連絡して、会って頂いた。美味しい日本食の家庭料理を小倉さんの娘さんに作って頂いたりと、色々とご相談に乗って頂いた。無事、昨年、大学を卒業されたと聞く。

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