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父の人生を変えた『一日』その29 ~帝王切開~

その29 ~帝王切開~
 深夜2時に丸紅の友人から緊急電話が入った
「ライオンさん妻が産気づいた。誠に申し訳ないが病院に一緒に行ってもらいたい。」
「英語にも自信が無いので一緒に来てほしい」と。
車で即、迎えに行った。破水したばかりの様子であった。分娩が始まった。難産であった。医者からシーザースカットの言葉が何回もでてくる。旦那さんから質問である。
「ライオンさんシーザースカットって何のことですか?」
ジュリアスシーザーと言う帝王がいた。このシーザーの名前を取ってシザリアン・セクションまたは、シーセクションとは帝王切開の意味であった。奥様は初産で産道が狭く帝王切開するのでこの書類にサインしてくださいと旦那にサインさせた。
朝方赤ちゃんは無事生まれた。眠気眼で何もなかったように出勤した。日本人がアメリカで出産する大変なことではあるが、日常茶飯事であった。何回か友人に頼まれて同席した。私の場合は日本で子供が産まれたが仕事中と麻雀中の時に生まれた。アメリカ人の旦那さんは必ず妻の出産に付き添って手を握って見守るである。


~倅の解釈~
 アメリカでの文化の違いあるあるは多い。日本人にとってたまげることも日常茶飯事だ。特に病院マターは多いかと思う。私がよく通っていたオーバーレイク病院には日本語が喋れる日系人先生がおり、駐在員の家族はそこをメインに受診していたが、緊急事態となるとその先生がいないケースがある。こういう時、英語のうまさに評判が高かった親父が出番なのである。ライバル企業の駐在員もオフの時間はアメリカに住む日本人の同志。お互いさまである。
 私が高校生の時、日本人留学生が多くシアトルに来ていた。通っていた高校にも5名程度。何度もトラブルの度、私が呼ばれていた。特に女性の留学生にトラブルが多かった。
「妊娠してしまったが、どうしたら中絶できるのか?」
「車の事故にあってしまった。助けて」
「アメリカ人の彼氏と別れたいけど、伝えられない」
などなど。特に「妊娠してしまった」は多かった。シアトル、ワシントン州では、当時、相手のコンセント(承認)が無いと中絶はできなかった。相手にサインをもらうことが大変でよくトラブっていた。
「水澤さん、彼氏と同じ血液型だからサイン代わりにできない?」なんと言われたこともあった。
 父から譲り受けたおせっかいな遺伝子。今後も大事にしていきたいと思う。

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