私自身が小説を書く上での流れの言語化および、拙作「その幻の名は」についての裏話と解説

 二次創作をメインとした小説サイト、ハーメルンにて「ウマ娘 プリティーダービー」の二次創作として投稿した拙作「その幻の名は」が8/29(日)に完結しました。3話だけですけども、完結は完結ということで。

 これについて自分自身の振り返りという意味も込めて、なぜこれを書こうとしたのか、またどのような流れで構想が固まったのか、さらに元とした話やモチーフなどを言語化してまとめていこうと思います。

 小説が作られていく過程をまとめた記事はあまり見かけないですし(自分の見えている世界が狭いだけかもしれませんが)、自分自身もこういった試みをしたこともないので試しに挑戦……という意味もあります。

 こういうときのnoteは実に便利だなあ、とちょっと感じますね。ブログみたいなものだし。

 一応ウマ娘や競馬について知らない方にも伝わるように解説していく予定です。(私自身もウマ娘から競馬の歴史に触った、いわゆるにわかの一人です)


 作品:https://syosetu.org/novel/256142/


■「その幻の名は」ってどういう作品なの?

 「ウマ娘 プリティーダービー」という作品の二次創作です。二次創作として公開したものはマジック・ザ・ギャザリングのギデオン・ジュラを描いた心温まる贖罪/Heartwarming Redemptionに次いで2回目ですね。

 出てくるキャラクターとしてはアグネスタキオンと駿川たづなさんの二人が主です。

▶おおまかなあらすじ

 アグネスタキオンが実験で教室の一部を黒焦げにさせてしまったことによる罰則により、トレセン学園の資料室の整理を命ぜられ、そこにあった古い資料とビデオテープを見つけるところから始まります。

 そこで"絶対に勝てない"と思い知らせられるほどの走りを目にします。しかもそれは右脚をかばう不完全なフォーム。
 もしもその脚が万全であったならば? という仮定にアグネスタキオンが追求する"可能性の果て"を見出し、VRという仮想世界で再現しようとしますがなかなかうまくいかない。

 小休止しようとするアグネスタキオンに、たまたま理事長秘書である駿川たづなが通りかかり……というお話です。


 ※当然ながら、以下は拙作「その幻の名は」についての言語化のため、本作およびアグネスタキオンのストーリーネタバレが多少含まれております。ご了承ください。
  とはいえ前提知識となっている部分も大きいので、これを見てから読んでも面白いかも知れません。ぜひ読んでみてください(宣伝)


■そもそも何故書こうと思ったの?


 そこになかったから書いた。


 すみません、石を投げないでください! だってなかったんですもん!

 ……詳細な説明をさせていただきますと、「ウマ娘 プリティーダービー」に登場するキャラクターの一人に、ウマ娘とは明言されていないキャラクターで駿川たづなという理事長秘書がいます。
 ウマ娘には特徴的なウマ耳と尻尾があるわけですが、頭部は帽子があり、尻尾も見えません。

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引用:ウマ娘 プリティーダービー キャラクター紹介

 プレイはしていないのですが、「アイドルマスター シンデレラガールズ」に登場する千川ちひろという事務員がいまして、同じ緑の事務服、そして裏方という事でこのオマージュなのだろうなと考えていました。

 しかし、かつて存在していた競走馬をモデルとしているのではないか、という話を目にしました。その競走馬とは"幻の馬"と呼ばれている「トキノミノル」。

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引用:トキノミノル - Wikipedia

 このトキノミノルについてWikiなどで調べてみると凄まじい逸話が出るわ出るわ。

 一勝、すなわち一着を取ることすら難しい競馬で十戦全勝。これは戦後中央競馬の十走以上した馬で唯一の全勝だそうです。(戦前では伝説的な牝馬、クリフジが十一戦全勝を記録しています)

 それに加えて、七回のレコードタイム(いわゆる陸上で言う大会新記録)という圧倒的な強さ。

 それでいて右足の膝痛があり、「一度でいいから4本脚で走らせたかった。いつも悪い膝を庇って3本脚で走って、7回もレコードで勝っているのだから、4本脚で走ったらどのくらい走るものか」と騎手の岩下氏が惜しんだといいます。

 え、つまり戦後76年の歴史でこの一頭以外では誰にも成し遂げられなかった十戦全勝、それも七回のレコードタイムを叩き出してもなお「全力を出せていなかったの!?」 というとんでもない衝撃を受けたのが始まりでした。


 そこから更に調べてみると、歩行異常・裂蹄・腱の腫れなどで東京優駿(現日本ダービー)への出走が危ぶまれた状態だったとのことですが、前日になって状態が良化、そして当日朝には両脚とも全く不安のない状態となったそうです。まさしく奇跡。

 これで走れる! となったものの、それまで出走すら危うい状態であったため、調教(練習)はろくにできませんでした。

 故に関係者たちは不安であり、実際に東京優駿で走った時も騎手の岩下氏が全力で走らせず、道中で控えた理由を「脚がもたないかもしれない、故障してしまうかもしれない、そう思うと怖くて行けなかった」と語るほどでしたが……結果は優勝。道中で控えてもなお、です。
 しかも先述した伝説的な馬、クリフジが記録したレースレコードも更新しました。

 競走馬の生涯で「たった一度」しか出走できない最高峰の大会であるこの東京優駿で"ダービー馬"、そして騎手の岩下氏への"ダービージョッキー"という栄誉を勝ち取りました。

 しかし、そのたった17日後に脚の怪我のため破傷風で死亡してしまいます。これを受けた作家の吉屋信子氏が「初出走以来10戦10勝、目指すダービーに勝って忽然と死んでいったが、あれはダービーに勝つために生まれてきた幻の馬だ」という追悼文を発表したことで、"幻の馬"が二つ名として定着した……というお話でした。

 オーナーだった故・永田雅一氏が映画会社の社長だったこともあり、その死を悼んで「幻の馬」という映画が制作されています。

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 事実は小説より奇なり、という言葉があるのは承知していますが、一言言わせてください。なんだこの物語の主人公

 さて、先述した駿川たづなはトキノミノルをモデルとしている説について話していきたいと思います。

 公式四コマ漫画である「うまよん」では「たづなさんの休日」で帽子を外した姿を見る事が出来ますが、絶妙に頭部が見えないような構図かつ自宅に「にんじんスティック」がある……と、匂わせてくる描写があります。

 また、作中のたづなとのお出かけイベント内でも「時速70kmのウマ娘、それも屈指のマイラーであるタイキシャトルから「ベリー・ベリー・ファスト」と言われるほどの健脚」。

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お出かけイベントより。
タイキシャトルはマイル(1600m前後)で12戦10勝という無類の強さを誇り、ゲーム内で得られる固有の称号も"最強マイラー"。そんなタイキシャトルにして「ベリー・ベリー・ファスト」と言わしめるたづなさんとは……?

 「ゲートが開く高揚感を語っている(≒ウマ娘としてゲートに入ったことがある)」、「"幻のウマ娘"という映画がリバイバル上映」など、どんどん匂わせてきます。(上記の「幻の馬」という映画をモチーフとしているのは明らかですね)

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 さらに「トキノミノルと誕生日が同じ(他のウマ娘たちも元となった馬と同じ誕生日)」、「黒のラインが入った緑の事務服がトキノミノルの勝負服と似ている」等と、根拠もしっかりしていました。

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2016年共同通信杯のリスペクトアース。(グリーンファーム)
トキノミノルと同じ勝負服を故・永田雅一オーナーから引き継いでいる。
引用:https://keiba.takanin.com/sp_002/4/


 つまり、裏方としてウマ娘を支えている立場の人が、かつてウマ娘として伝説的な存在だったという事に……拙者そういう展開大好き侍! 義によりて助太刀いたす! 失礼、興奮してしまいました。

 そういうわけで、この駿川たづなさん=トキノミノル説を採用していて、かつメインに据えた二次創作小説はないのかな? と調べてみたら……ない! ない! ない!!!!!!

 おかしい……こんな事は許されない……ロマンに満ち溢れているのに……


 せや! なければ自分で書けばええんや!


 ということで誕生したのが「その幻の名は」でした。そこになければ自分で書く、これこそが創作の醍醐味。自給自足最高ですね。


■「その幻の名は」の構想について

 当初の構想としては、簡単に言ってしまえば「"幻のウマ娘"の正体であるたづなさんが走り、その実力を知らしめる」というものでした。

 かつて古い時代で"幻のウマ娘"とまで謳われた走りが現代に蘇る。これほどのロマンはそうありません。しかし、これを実現する上でいくつかの問題点がありました。

1.たづなさんをどう走らせるか?

 では、まず駿川たづなさんの正体をかつての"幻のウマ娘"、トキノミノルとして扱うとして、引退したはずのたづなさんをどう走らせるかを考える必要があります。

 お出かけイベント内で「怪我や事故によって満足に走ることさえできなくなる、二度と風を感じられなくなる瞬間の絶望感」について自ら経験したかのような口ぶりで語っている点、トキノミノルも怪我により幻となってしまっていることからおそらく怪我による引退であると思われます。

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 さらに、彼女は何らかの理由でウマ娘としての正体を隠した上で、現在は「理事長秘書の駿川たづな」として生きているため、単純に走らせるというわけにはいきません。

 怪我による引退正体を隠して理事長秘書として生きている。この二点が走らせる上で乗り越える必要があるハードルとなります。このハードルたちを超えるためにはどうすればよいのかが焦点になるわけですね。


 そこでアグネスタキオンの存在が真っ先に思い浮かびました。というのも、アグネスタキオンの育成ストーリーで「仮想空間」、いわゆるVRが登場します。

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 この仮想空間では身につけた者の脳で操作し得るウマ娘の肉体があり、それも潜在脳機能レベルが顕著に反映されるもの。『走ろう』と思えば走れる……

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 つまり、現実世界で満足に走れない者でも、仮想空間ならば全力で走ることが出来る事に他なりません。そんな設定を使わない手はないでしょう。

 アグネスタキオン謹製のVR、仮想空間でたづなさんを走らせる。これならば匿名性を担保でき、さらに仮想空間で怪我に関係なく全力で走らせる事もできる……ということで、先述の二点のハードルはこれでクリアできます。


2.アグネスタキオンにどうやる気を出させるか?

 さて、たづなさんをアグネスタキオン謹製のVR、仮想空間で走らせる上で生じる問題として、アグネスタキオンにどうやる気を出させるかです。

 というのも、このアグネスタキオンは「実験と研究が大好き」なウマ娘であり、自らの目的のためならば他人を実験体として扱う事に躊躇いがない、いわゆるマッドサイエンティスト的なキャラクターです。
 その最大の被害者である担当トレーナーは"モルモット"として、彼女の実験体として薬を服用し、その副作用として身体を光らせる(!?)という事が日常茶飯事となっています。

 そのインパクトから、漫画や小説などの二次創作で人気がある彼女ですが、とんでもない気性難です。

 その気性難っぷりがどれほどかと言うと、「自らの研究時間が少なくなる」というだけで彼女曰く「無駄が多いスケジュール」を提示するトレーナー達の誘い、そしてトレーナー達に自分の力を披露する選抜レースを拒否し続けています。

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 その結果、研究の邪魔だからとトゥインクル・シリーズの公式戦に出走するために必要なトレーナーからのスカウトを受けず、授業にも出ない問題児として、学園からの退学勧告もやむ無しと受け入れてしまうほどです。

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 このように気性難なマッドサイエンティストを地で行くアグネスタキオンが、アプリ版トレーナーからのスカウトを何故受けたかは……ウマ娘をプレイしましょう

  彼女は☆1なので、すぐストーリーを見られることができます。ただのマッドサイエンティストだけでない魅力的な部分がたくさん見られますよ(沼へ引きずり込む音)


 さて、この研究や実験を第一とするアグネスタキオンに対してどうやる気を出させるかという問題ですが……すぐ解決しました。

 何故ならば、彼女が研究や実験に没頭する最大の理由が「ウマ娘に眠る肉体、限界速度という可能性の果て」だからです。

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 ウマ娘は時速70kmで走る事ができるわけですが、アグネスタキオンはそれ以上の速度、「可能性の果て」を追い求める求道者でもあります。

 駿川たづなの正体であるトキノミノルは十戦全勝を成し遂げ、かつ七回もレコードタイムを更新するほどの実力で、"幻のウマ娘"とまで称されています。それも、「両脚で満足に走れない状態にも関わらず」……です。

 この世界において「もしも、たられば」は禁句ですが、もしも両脚が万全の状態で走ることができたら、一体どれほどの速さだったのでしょうか。

 これはアグネスタキオンの「ウマ娘の持つ限界速度への追求」という目的と一致します。アグネスタキオンのやる気を出させるには十分な理由と言えるでしょう。


3.アグネスタキオンにどう"幻のウマ娘"の存在と接触させるか?

 そのアグネスタキオンにやる気を出させるために、幻のウマ娘であるトキノミノルの存在を接触させる必要があります。

 これもまたすぐ思いつきました。資料という形で残し、それが保管されているであろう資料室の整理をさせることで接触させればよいと。

 というのも、かつてのトゥインクル・シリーズに出走したであろうトキノミノルは過去に中央こと日本ウマ娘トレーニングセンター学園に在籍していたと考えるのが自然だからです。
 シンデレラグレイのオグリキャップのように地方のトレセン学園に所属しているという事もありえますが、後に"幻のウマ娘"と謳われる程の逸材を中央が放っておくはずがありません。

 さらに十戦全勝、皐月賞・日本ダービーの二冠という鮮烈な印象を残した"幻のウマ娘"となれば、資料は残っていないと逆に不自然でしょう。

 またこのトレセン学園には150年の歴史を持つということで、それに比例する膨大な資料もまとめられているはず。
 150年分の資料の整理も大変でしょうから、罰則として資料室の整理を命じる理由付けも十分だと考えました。

 幸い、アグネスタキオンには教室を黒焦げ未遂にさせるという前科もありますしね。

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 アグネスタキオンストーリーより。
 委員長ことサクラバクシンオーが珍しくタジタジしている貴重なシーン


 ここまで「たづなさんを走らせる」ことで生じる問題点、ハードルを考えた上でそれらを乗り越える方法を確立した後は筆を走らせるだけです。

■本作を書く上で考えた・悩んだ部分

▶アグネスタキオンが「研究・実験をしない」というインパクト

 先述した通り、アグネスタキオンの行動は研究と実験を第一としています。育成ストーリーの序盤ではレースに勝利しても第一声が「研究」であり、今後のレースの展望や練習について言及することはありません。

 また、実験にも非常に積極的であり、ホームで見られる会話も実験絡みのものが多いです。

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 あのアグネスタキオンが研究どころか実験すら一切しない。

 その事実は瞬く間に広まり、当の本人が「心配は不要だよ、今は研究や実験よりも重要な事項が出来ただけの事だからね」とのたまうものだからそれはもう大騒ぎとなった。

 隙あらば研究、あるいは実験を行う。そんなアグネスタキオンが"幻のウマ娘"の走りに魅入られ、今抱えている研究や実験より優先すべきものとした事でインパクトを与えるという意図もありました。

 まあ、"幻のウマ娘"の映像に対するアプローチ(ついでに資料室の整理)が終わった後は、結局走りを再現するための研究・実験を重ねているわけなんですけども。


▶たづなさんに対するアグネスタキオンの言葉遣い

 ここが一番悩んだポイントです。アグネスタキオンは生徒会長であり"皇帝"でもあるシンボリルドルフに対しても、(一応)年上であろうトレーナーに対しても敬語を一切使っていません

 うまよん、アグネスタキオンの育成ストーリーなども確認してみましたが、敬語を使う場面は1つもありませんでした。
 ファン感謝祭などでも常に一個上のステージに立った視点から見ているような……そんな一種の傲慢さが見え隠れする部分もありました。ブレないそこがいいんですけども。

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 一番手っ取り早いのは公式でアグネスタキオンがたづなさんと会話するシーンを確認することなんですが、私が観測できる範囲では見当たりませんでした。(一応アニメ視聴勢にも確認しましたが、アニメの中にもなかったそうです)

 しかし、明らかな年上であろうたづなさんに敬語を使わないというのも少し想像しづらく……かと言って敬語を使うアグネスタキオンもな……と悩んだ結果、「得体の知れない凄みを感じるたづなさんにはよそ行きの顔をする」という謎理論でたづなさんに対しては敬語を使う事になりました。

「今日も研究ですか? お疲れ様です」
「ありがとうございます。まだまだ解は見つからなさそうですがね」
「……一度、体験してみますか?」
「あら、いいんですか? 私は選手ではないのですが」
「いいえ。あらゆる可能性は実験によって発掘され、検討されるべきなのです。是非ご体験を」

 解釈違いで分かれそうな部分ですが、敬語を使うアグネスタキオンが思いのほか似合っていたのでよかったかなと。


▶レジェンドレース:VSトキノミノル

 ――学園内外に、ある話がまことしやかに囁かれ始めた。
 緑色の勝負服を身に着けた、幻想のウマ娘がいる。それがコース上に投影され、駆けるのは週に一度、短距離、中距離、長距離の三回のみ。
 その併走に参加する選手たちは後を絶たず、予約は一ヶ月後まで埋まっているという。

 参加者は錚々たる顔ぶれが揃う。短距離では史上最高のスプリンターとまで称された者が。長距離では屈指のステイヤーとして名を馳せる名家の令嬢が。そして中距離ではその頭上に冠を七つ頂いた皇帝が。
 ありとあらゆる距離の王者、優駿たちが集い、トゥインクル・シリーズ最高峰のレースであるG1ですら霞むほどの面々。

 このシーンはウマ娘のアプリ内で定期的に開催されている「レジェンドレース」をモチーフとしています。

 アグネスタキオンの目的である「ウマ娘の限界速度」ですが、自分自身が限界に挑むプランAと、代わりに他のウマ娘を到達させるプランBの2つを想定していました。

 限界速度への追求は他のウマ娘との競い合いによって生まれる闘争本能なくしては為し得ない、という考えの下でこういった催しはしそうだなという事でターフ上に投影させ、名実ともに"幻のウマ娘"を誕生させました。

 このシーン内で明言していないウマ娘について解説されずとも分かるとは思いますが、短距離はサクラバクシンオー、長距離はメジロ家の令嬢であるメジロマックイーン、中距離は皇帝ことシンボリルドルフですね。
 いずれも各距離においてトップクラスの実力を持つ面子です。


 史実では日本ダービーの2400mまでしか走っておらず、3000mの長距離である菊花賞は未出走のため未知数なところはありますが、彼女ならばきっと長距離でも走れたのではないかという事で、長距離も強いよ! ということにしておきました。二次創作なんですからこれぐらいはね?


▶タイトル回収

 拙者そういう展開大好き侍! 義によりて助太刀いたす!(反復)

 これは完全に私の性癖です。タイトルも作品の一つだと思っていまして、最後でタイトルを回収するのって最高にかっこよくないですか

 かつて、トゥインクル・シリーズの黎明期において、雷光の如く駆け抜けた優駿がいた。

 当時を知る者は口を揃えて言う。"どんなものよりも速かった"と。そして、"あまりにも早すぎた"と惜しんだ。

 トゥインクル・シリーズ十戦全勝、内レコードタイム七回。

 この偉大なる戦歴は幾年経った今でも、未だに破られていない未踏の域。

 走れば必ず、完璧に勝つ。人呼んで"パーフェクト"。

 硝子の脚は何もかも置き去りにし、そして幻のように掻き消えた。

 その幻の名は――

「……さ、理事長! もうひと踏ん張りいきましょう!」
「奮起ッ! このURAファイナルズで、皆が輝ける舞台を作り上げようッ!」

           ....
「ええ、皆さんの輝く時が実るように――」

 自画自賛になってしまいましたが、事実ここのシーンがお気に入りなのでしょうがないです。むしろこのシーンを書きたくて、この作品を書いたまであります。

 ご察しの通り、私はあるシーンを書きたいからこそ、それに至るまでの過程を書くというタイプです。だから途中で詰まる事も多々ありますし、新しい設定がポンポンと出たりします。


▶自分自身が見たいと思う展開を自分で書ける

 これは創作全般に言えることですが、自分が見たいものを自分で作るという事は創作をする上での最大の理由、動機になると思います。事実、この作品を書くきっかけも「こういう作品ないやん! じゃあ自分で書いたろ!」です。

 「こういう展開をした作品あるだろう」と探してみても無い事も多々ありますが、それなら自分で書いてしまえば解決しますからね。

 こういった動機で出来たのがこの「その幻の名は」という作品でした。


 たづなさんがアグネスタキオン謹製のVRによる仮想空間で、かつて為し得なかった"本気の走り"を果たす事ができ感嘆の涙が頬に伝う……う~ん、これだよこれ! 俺が求めていたのはこれなんだよ!!


 二次創作小説をメインとするサイトである「ハーメルン」に投稿した際、少しニッチかな? と思いきや気に入っていただける方も多かったようで、評価点が8.74の赤バー(評価が高いと赤くなる仕様です)と評価も上々。この場を借りてお礼を申し上げます。

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 さて、最初に投稿した後にしばらくはいただいた感想に対して手を合わせながら感謝しつつ、自分で「んほお~たまんねえ~」と何度も何度も読み返していたわけですが……

 ビデオに添えられていた資料にはかの"皇帝"ですら成し遂げられなかった輝かしい偉業と共に、以前から抱えていた脚部不安が悪化しその舞台から下りたという残酷な事実で締めくくられていた。
 最後のページをめくると、隅に小さい殴り書きがある事に気づいた。

「一度でいいから万全な状態で走らせたかった、か……」

 おそらく当時のトレーナーか、あるいはそれに近しい者によるものだろう。記された言葉を呟くと、心の奥で使命感に近い感情が湧き上がってきた。それはアグネスタキオンにとっては馴染みのない感情だった。


 そう、当時引退したことで辛い思いをしたのは"幻のウマ娘"だけではありません。

 担当したトレーナー、そしてライバル達も彼女がついぞ本気で走る日が来ることなく、幻となってしまった事にやり切れない気持ちを抱えたままなのでは……?

 そしてその元トレーナーや元ライバルがアグネスタキオンとたづなさんによって開催される、ターフ上に投影される幻のウマ娘によるレースの噂を聞きつけたらどんな行動をするでしょうか。


 ……よし、じゃあ書くか!


 ということで元々1話で完結するつもりだった「その幻の名は」の続編である「幻と現」を書く事を決意しました。


 その「幻と現」について解説と元トレーナーとライバルがモチーフとしたものについてなどの裏話を……といきたいところなのですが、実はここで1万字ほどになっています。

 おそらく「幻と現」についても同じぐらいの熱量になりそうなので、一旦ここで一区切りということにしておこうと思います。

 もし、ここまで読んでいただいて拙作に興味が出た物好きな方がいらっしゃいましたら、お読みいただけると大変うれしいです。いただいた感想は命のオアシスとなります。

 作品:https://syosetu.org/novel/256142/

 こういった小説を書く上での流れの考え方など、言語化は私自身も初めての試みでしたが、いかがでしたでしょうか? 楽しんでいただけたら何よりです。



サポートをご検討いただくだけでも大変うれしく思います。そのサポートが今後の記事執筆のモチベーションになります。