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学び続ける学びのデザイン③ クレソールプロジェクト

  前回は取り組むべきステップについて書いてみましたが、今回は実際にクレソールプロジェクトとして高畠熱中小学校で行ってきた取り組みをまとめてみます。タイトルもちょっと変えてみました。

前回の記事はこちら

学ぶ人の興味で教室を作る

 熱中小学校には地域内外、老若男女問わずいろんな方が集まります。集まる皆さんとも色んなお話をするのですが、教室に集まるみなさんの興味関心や見ている世界というのは、誰か一人の想像する世界よりもずっと広く深く広がっていると改めて感じました。そんな一人一人の心の中の興味関心を元に教室を作っていったら一体どんな楽しい教室ができるだろうとそんな発想から今の取り組みがスタートしています。しかしながら、ただただ興味のあることををみんなに聞いてみたところで、それをそのまま教室にすることは出来ません。どうしたら理想の教室が作れるだろうと一緒に試行錯誤を繰り返しながら進めていきました。

Step1 興味のある事柄を書き出してみる

 ともあれ、今どんなことに興味があるのか、どんなことを学ぶべきか、をみんなで出し合う所から始めようという事で、激変していく地球上の出来事と変わらないことも多い私たちの日常、そんな事をイメージしていただきながら書き出してもらいました。

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 大きな視点と身近な視点で様々な興味関心が集まりました。アイディアを出し合ったのち、特に興味のある事柄への投票を経て、少し無理やりな部分もありましたがグループ分けしてみました。

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①健康
②社会問題(政治)
③心、マインド、哲学
④ハイテク
⑤農
 10名程の参加者との2時間のワークショップを経て、来期は大きくこの5つのテーマに沿って、講師の方や取り組みの内容を考えていこうという事に決まりました。(この項目に入りきらない「その他」も多数あったのでそちらのフォローもしながら)

画像61回目 2021年11月13日 まずはアイディア出しから

Step2 本当に作りたい教室はどんな姿だろう

 前回のワークショップでは大きな興味や向かうべき方向性は見えてきたのですが、その中で特に学びたいことはなんだろうか、なるべく具体的なイメージを捉えてみることにしました。また多くの教室では先生の話を聞くのが基本となっていますが、だれとどのように学ぶかという部分についても改めて考え直してみることにしました。

Tips
例えば農と言っても実は滅茶苦茶範囲が広いので
・農的な暮らし、縄文文化、米づくり、畜産など
 より絞っていく
これでも実はまだまだ広いので
・縄文時代の食生活やコミュニティのあり方
・林業の現状と私たちの関わり方 
 くらいまで明確になってくると良いかも 
実は学び方も色々あるはず
 座って話を聞く、議論する、対話する、体験実習、現場に行って見聞きする、調べて発表する、何かに挑戦してみる、ワークショップ、合宿、プロジェクトの共創、組織やグループでの活動 etc..

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各テーマに沿って個々に教室を考えていただきました。

まとめると以下のような感じ
・居合道体験
・身近な水素社会
・賢いお金の使い方
・知的発達障害ってどんな世界
・多方面から考える「生」と「幸」
・デザイン思考で政策提言ワークショップ
・エネルギーも自給自足
・さまざまな文化の組み合わせで新たなデザイン(アート)を考える
・本質観取「学びとは」
・令和時代の自給自足の形とは

今回も2時間程度のワークショップで教室のアイディアを出してもらいました。

画像32回目 2021年11月27日 どんな教室が良いか議論を交えて

Step3 理想の教室を実現するために

 前回の取り組みでより具体的なテーマや内容、だれとどのように学ぶのがよいかというのが見えてきましたが、今度はそれを実現するにはどうしたらいいだろうという話を進めました。ここから先は熱中小学校の教室で実現するにあたっての具体的で細かい調整毎なども出てくるので、前述のテーマを出していただいた方と個別に1時間程度の意見交換をさせていただきました。結果的に3つのパターンに分類されてきました。

①すでにお話を聞きたい講師の方が決まっている
 1つめはほぼ具体的なイメージもどうやったら実現できるかもはっきりしている教室です。こちらは後は調整するだけなので、日時や先方との連絡やり取りだけで進めて行きました。すでに実現した教室もいくつかあります。 既知の知識を元にさらに未知の世界を広げていく、そんな学びのスタイルでしょうか。
前述のテーマに沿うと
・エネルギーも自給自足
・さまざまな文化の組み合わせで新たなデザイン(アート)を考える
・デザイン思考で政策提言ワークショップ
 あたりが該当するテーマです。具体的な講師についても生徒や関係者のご縁で繋がって実現しています。

②興味関心やイメージはあるが、実際する手段がない
 2つめは何となくのイメージはあるがどうやったら実現できるかわからないという教室です。ほとんどの場合はここに分類されるアイディアになりました。また個々人で特定の分野の知識を持つ方と繋がったり興味や疑問に答えられる教室を実現するのには実際のところ様々な労力も結構かかるので、逆にこれらを実現してくれるから敢えて学校という場へ通うとも考えられます。そしてこの部分をなるべく実現するのが運営側の力を入れる部分だろうと考えています。
 そこでこちらの場合は一旦アイディアのままお預かりするというような話になりました。お預かりした中で身近なご縁やこれまでの取り組みのご縁を繋いで、実現可能性の高い教室を少しずつ実現しています。こちらは個人ワークの結果も参考にしますが、最終的には①で行った5つのテーマや細かいアイディアを元に講義の依頼や教室の設計を行っています。こちらはなんとなくの興味関心やご縁や繋がりを元に未知の世界へ触れてみる、そんな学びのスタイルでしょうか。

③主体的な取り組みを元に教室を作りたい
 3つめは興味関心というレベルを超えて、自分がやってみたいことがはっきりしていて、自身のやりたい事をに沿って更に知りたいとか、もっと多くの人と繋がりたいというような発想を元作られたアイディアです。こちらは企画した方自身が普段から取り組んでいることであり、自己実現や自身の世界をより広げてくための一助となる教室というようなイメージでしょうか。

前述のテーマに沿うと
・知的発達障害ってどんな世界
・令和時代の自給自足の形とは
 あたりがこの項目に当てはまります。授業以外でも課外活動のような形ですでに色々と活動いただいたりしています。

 上記のような3つの分類を元に細かな意見を集めながら14期のカリキュラム実現につながっています。

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3回目1月8日(土) 最終調整 オンラインのコメントも交えて

クレソールPJを通じて見えてきたこと

 こんな形で全3回2時間の教室と個別の意見交換を通じてクレソールPJを進めてきました。取り組みを通じて見えてきたことや理想の教室を作る手法についてまとめてみます。

テーマ型とプロジェクト型

 ①,②がつながりや共感を大事にするテーマ型の教室だとしたら、③は自己実現や達成を大事にする個人のプロジェクト型の教室というようなイメージでしょうか。①、②のテーマ型の教室はは既存の熱中小学校の取り組みとほぼ同様の事であり、取り組みを通じてより刺激的な出会いの精度と集まる生徒の皆さんにとって価値が上がっていく事につながりそうです。③のプロジェクト型の教室は個人個人の本当に実現したい事を元に作られているので、学校で教室を作ること自体が個人個人の自己実現の一部という事になります。こちらはこれまであまり行われてこなかったので、強化していきたいと考えています。
 そんな過程もあり、14期の高畠熱中小学校のテーマは学び続ける学校というテーマを用いました。そもそも「わたしは今何を生み出したいのか」という課題に一緒に向き合っていく事で、個人のプロジェクトを発足しそれに付随した教室をどんどん作っていこうという発想で進めています。今まさに取り組みを進めている所ですが、また新しい課題や発想が生まれてきているので、そのあたりは次回に書いていこうと思います。

↓12月~1月 アイディアを元に個別にプロジェクトの相談

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↓実際にできた進行案

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話を聞く授業は誰にとっても最初の一歩

 教室のスタイルはもっといろんな形があるのではないかとそんな疑義も呈しながらやってきましたが、未知の世界と出会うときに最初の一歩として話を聞く授業のスタイルというのは参加しやすいという事もわかってきました。
 興味関心の高い分野であれば、身を乗り出したり、また体を動かしたり、先生と面と向かって議論したり、ありとあらゆる事を学ぼうとするかもしれませんが、自分にとって未知の分野の内容を学ぶときに最初からそのような態度はとらないでしょう。お話を聞いた結果何か大きな気づきや変化や行動が生まれるのであり、最初から教室のスタイルを決める事は世界を広げるよいうより深めるという事に近いという事も見えてきました。まずは実際に出会って話を聞いてみる従来の教室のスタイルは、誰しもにとっての第一歩として重要な位置を占めると改めて実感しました。

まとめ

 という事で昨年度行ったクレソールプロジェクトのまとめでした。新しい学びの形づくりをあれこれと考えているのですが、今回の取り組みの根幹にあるのは「学び続ける学びのデザイン」という発想です。まとめていて私自身もプロジェクト型の教室を作っているのかもしれないと改めて感じた所です。
 また一方で「学び続ける事は重要だけれど、それは誰しもにとって当てはまるだろうか」というのはまた新たな問いとして生まれてきたところで、今後も私自身の探究プロジェクトは続いていきそうです。最後まで読んでいただきありがとうございます。この記事からまた何か良いご縁があれば幸いです。

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