出会いは突然に
本当はキスしたかったんだけど、、、
えっ?全然気づかなかった。
実際に会ってまだ4日目。
チャットを始めてから3週間ほど。
彼女はチャリティーに力を入れていて、移民で来たばかりの人に中古の服や中古の生活用品を届けている。
それを手伝うことになった。
僕も色んな人に会うのは好きだ。
特に発展途上の国の人たちの多くは目がキラキラしている。
すれてない。
とても素朴だ。
言葉は全くわからないし、英語も通じないんだけれど、彼女とその人たちが話しているのを見ると幸せな気分になる。
とてもうれしそうにその国の言葉で話す人たち。
表情が素敵だ。
小さな子供たちもたくさんいてとても活き活きしている。
スマホもコンピューターもないから、もらい物の中古の自転車や、クリケット用具で道で遊んでいる。
もちろんクリケットのウィケットは間に合わせのもの。
彼らは発泡スチロールの箱を使っていた。
路地のすみっこで遊んでいる。
彼女が話しかけると恥ずかしそうに、でも人懐っこい感じで返答する。
とてもかわいらしい。
ひと通りやることが終わったのでどっかでご飯にしようかとも話したんだけれど、彼女が子供たちを迎えに行かないといけない時間がせまっていたのでじゃあ家で食べようということになり、家に招かれた。
子供たちのいない家は静かで、2人の声だけがひびく。
残りもののチキンをあっためて、簡単に野菜を切ってサラダを作ってくれ、パンを用意して完成。
簡単なものだけれど一緒に食べると美味しい。
引き続き色んな話をしながら食べた。
食後に少しだけお茶をした。
あっという間にお迎えの時間になった。
まだまだ知り合ってからの時間も浅いし、焦ることもないなぁと僕は思っていつも通りのハグで別れた。
今日もいい1日だったなぁと帰り道に運転をしながら彼女との時間を振り返る。
いい体験が出来たな。
やっぱり色んな角度から世界を見るのって大事だなぁと思った。
今でも想像を絶するようなことが世界の他の国では起きている。
今日会った人たちはアフガニスタンから逃げてきた人たち。
ここに来てなかったら、どうなっていたんだろうと考えると悲しい気分になる。
ぬくぬくと平和な日本で育った僕には想像も出来ないような人生をあの人たちは送って来たんだろうな。
僕にできることはなんなんだろう。
自分のことでずっと忙しく、自分のことと自分の家族のことだけしか考えてなかったけれど、こういう機会をくれた彼女に感謝の念が湧いた。
何かの役に立てるかなぁ。
ぼんやり考えてみる。
帰った後にありがとうのメッセージをチャットに打ち込む。
そして疲れていたのですぐに寝てしまった。
翌日のチャットが始まる。
彼女がいつもより起きる時間が遅かったので大丈夫かなぁと思ってビデオコールをしてみた。
短い時間だけれど、顔も見れてホッとした。
その後にすかさずメッセージが来る。
子供たちがいる時はビデオコールはしないでおこう。
まだ子供たちに気付かれたくない。
上の子はけっこう敏感だから気付くかもしれない。
そして隣の人がうるさいんで今度からは外でハグをするのはやめよう。
全然気を使えてなかったなと思って謝った。
彼女の家だし、子供たちも住んでる家だもんな。
僕のせいで彼女たちが住みにくくなったら悪いよな。
そして話が更に進んで彼女が
「昨日実はキスをしたかったんだけれど、あなたの文化では女性からキスをするのって失礼かなって思って」って言い出した。
全然気付かなかったよ。
昨日外でハグをした時になんか気のないハグだなと思ってキスには至らなかったんだけど、さっきの説明で全てがつながった。
なるほどな。
こうなると次はキスだなと大いに気持ちが盛り上がる。
次は二日後に会う。
まだ会ってから一週間も経ってない。
こういうのって急ぎ過ぎなのかな。
あまり考えすぎても動けなくなるんで動きながら考えよう。
ハタチの頃とは違って冷静には見れるゆとりがある。
経験も積んだ。
純粋に楽しもうっと。