散文詩:アキノキリンソウ
期待された画家だった
晩夏の真夜中に一人
山道に歩み入る
途中死に場所を模索しては
どうせならと登り続け
山頂の展望場へ辿り着く
跨げば越えられる柵に寄り
崖下をのぞくと
黄色い花の群れが見える
山道にも咲く秋の麒麟草だ
芸術関係者に裏切られて
発表の機会を奪われ
激高した私は干された為
この自死の道を選んだ
物思いが覚めれば陽が差し
朝が登り始めて初めて
一人ではないことを知る
数人の登山者は皆一人者で
私と同じく手には山の花
一同は皆事情を聞かずに
今後の人生を話しながら
手にした黄花と下山した
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