見出し画像

マッサンのブロール構築記 ⑩大判事、ドビン

1.はじめに

(問題)以下の条件に一致するプレインズウォーカーを答えよ

・色が青白
・3マナ
・カードが引けるマイナス忠誠度能力を持つ
・「ラヴニカのギルド」ブロックで収録された
・構築で見かけることが「あった」
ハゲ

画像2

《時を解す者、テフェリー》と答えた画面の前のそこのあなたは坊主にして猛省していただきたい。
こいつは構築で見かけることが「あった」程度のカードではない。どいつもこいつも筆者でさえも世話になるくらいには環境にあふれかえってる、終身名誉ド畜生プレインズウォーカーである。
あとよく見て欲しい。彼にはうっすらだが髪がある。正確にはハゲではないのだ。

正解はこちら。

画像1

《大判事、ドビン》
嘘つけこんなハゲ構築で見かけたことないぞ
という厳しい声もあるだろう。しかし一時期、少なくとも「ラヴニカの献身」が出てからしばらくは色が合うデッキに入っていたのを筆者は確認している。今?全く見かけませんなあ。

画像3

彼の不遇なその人生は「カラデシュ」までさかのぼる。
青白コントロールに採用してくれと言わんばかりの能力を持ち「カラデシュ」でデビューしたドビンおじさん。そのポテンシャルは高く、なんと当時のプロツアーでドビン入りジェスカイコントロールが決勝まで残ったのだ。

…いや、残ったのだが…相手が悪すぎた。

ジェスカイコントロールを操ったロマオ選手は世界トップクラスのコントロール覇者である。しかし、その彼を迎え撃ったのはコントロールの神様、八十岡翔太。
覇者VS神、決勝は強者同士のバチバチのコントロールミラーになった。

そして2ゲーム目、悲劇は起きた。

画像30

ドビンの忠誠度を順調に上げ、奥義を炸裂させたロマオ選手。だが、紋章で動きは固められたものの、冷静な八十岡選手の立ち回りによりなんとロマオ選手はこのゲームを落としてしまう。
この後色々あって八十岡選手がマッチ勝利、プロツアー優勝の運びとなる。そして優勝後、彼は無慈悲にもこう言い放ったのである。

八十岡選手「ドビンバーンの奥義は負けに直結しないからどうでもいい

ど う で も い い

…コントロールを、そして何よりもMTGを長年愛してプレイしてきた彼だからこそ言える言葉だろう。だが、時はまさにインターネット時代。彼の言葉は瞬く間にSNSを介し世界中を駆け巡った。結果、瞬く間に「ドビン=ダメな子」という図式が完成してしまったのだ。

画像4

カラデシュのスタンダード環境がコンボやアグロだらけであまりに多角的であり、コントロールに逆風だったことも一因だろう。誰からも見向きもされず、一時期はスタンダードの神話レアなのに駄菓子くらいの値段で取引されていたとも噂される。

時は流れ、「ラヴニカの献身」で再登場した彼を待っていたのも同じような待遇だった。この時のスタンダードはエスパーコントロールが幅を利かせており、彼も活躍を期待されていた。
が、結論から言うとあまりの尖った性能ゆえに誰も使うことはなかったのだ。
そうこうしている間に続く「灯争大戦」で《時を解す者、テフェリー》がデビュー。華やかなテフェリーの活躍に飲まれ、彼の存在は瞬く間に人々の中から忘れ去られていった。

画像5

今や彼の存在は優秀な打ち消し、《ドビンの拒否権》に垣間見える程度である。ドビンというプレインズウォーカーをスタンダードで使えることを知っている人すら実は少ないのではないだろうか?

…彼は、本当に使えないプレインズウォーカーなのか?
彼を取り巻く環境が悪すぎただけではないのか?

今回はこのあまりにフビンなドビンを使い、デッキを組もうと思う。果たして筆者は彼を救うことが出来るのだろうか?

2.こいつでどんなことが出来るのか

なぜ彼はこんなに見向きもされないのか、能力を見ながらその理由を確かめよう。

1WB
伝説のプレインズウォーカー ― - ドビン
初期忠誠度 3
+1:ターン終了時まで、あなたがコントロールしているクリーチャー1体がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、大判事、ドビンの上に忠誠カウンターを1個置く。
-1:飛行を持つ無色の1/1の飛行機械・アーティファクト・クリーチャー・トークンを1体生成する。あなたは1点のライフを得る。
-7:あなたのライブラリーの一番上からカードを10枚見る。そのうち3枚をあなたの手札に加え、残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。

あまりにもやれることが多い。順にみていこう。
まず+1能力だが、「ダメージを与えたクリーチャー分だけ忠誠度を上げる」と書いてある。例えば2体のクリーチャーでダメージを与えた場合、忠誠度が2上がる。能力の起動で忠誠度が1上がっているので実質+3だ。
とにかく忠誠度を高めて、下のマイナス忠誠度につなげていくのが目標となるだろう。

画像6

殴るクリーチャーがいなくても大丈夫。-1能力で飛行を持った1/1飛行機械トークンを1体出すことが出来る。出したときに地味だが1点回復するおまけつきだ。

画像7

そして奥義の-7能力、なんとライブラリから10枚めくり、好きなものを3枚手札に加えていいと書いてある。パイオニアで猛威を振るっている、あの《時を超えた探索》以上の効率だ!

…こう書くと強そうなプレインズウォーカーだが、実は多くの欠陥を抱えている。
まず、というかこれが一番致命的なのだが、+1能力が実質「何もしていない」と書いてある。そりゃ出して+1能力を起動、4体で殴って忠誠度を8にすれば次に奥義が撃てるだろう。その間相手が何もしなければの話だが。

画像9

現実は非情で、大体がクリーチャーにかじられたり、除去が飛んできたりして死ぬ。死ぬとどうなるかって?ドローもしてなければ盤面に何の干渉もしていない。ライフも回復していない。カード1枚分丸損してるのだ。

また、+1能力を有効に活用するためにクリーチャーを必要とすることも大きなマイナスである。
先にも述べたが発売当時のスタンダードの青白と言えばコントロール。打消しや除去で耐え忍び、厳選したクリーチャーやプレインズウォーカーで絞め殺すコントロールではクリーチャーの展開なんぞ二の次である。彼らからしたら、+1能力は本当に「何もしない」と書いているのだ。

じゃあ-1能力は?1/1飛行クリーチャーを1体出して1点回復。以上。あまりにも地味すぎる。

-7能力はどうだろう?確かに強力だが、使うにはドビンが除去されることにおびえながら、ひたすら+1能力を連打する必要がある。え?その間に除去されたら?さっき言ったようにカード1枚分の丸損だ。

…こんな不安定で地味なプレインズウォーカーより、強烈な干渉能力と柔軟な能力を有したテフェリーが好まれるのもうなずける。が、今回のテーマはドビンの救済だ。どうにかして彼を使えるデッキを考えてやろう。

3.こいつでどうやって勝つか

さて、現時点での方針をまとめるとこうなるだろう。

・ドビンをうまく使うため、一定数のクリーチャーが必要
コントロールみたいに受け身のデッキは絶対にNG

画像10

困惑する読者もいらっしゃるかもしれない。各種プレインズウォーカーで絞め上げ、《エルズペス、死に打ち勝つ》などで脅威を処理し、《太陽の恵みの執政官》でペガサスを量産して叩く。今の環境にある青白はそういうデッキだろう。少なくともアグロではない。

だが、ドビンが初登場した「カラデシュ」期、スタンダード最前線を走っていた青白デッキはコントロールではなかったのだ。

画像11

「青白フラッシュ」
ざっくり説明するとクリーチャーを順次投下しつつ打ち消しを構え、殴って勝つデッキだ。デッキ名の通り、瞬速持ちのクリーチャーも多く、非常に器用なデッキだった。何よりも飛行を持つクリーチャーを大量に搭載しており、一度殴りだすとまず打点が止まらない。
こういうデッキならドビンの+1能力も有効に使えるだろう。何よりもドビンの-1能力が飛行トークンを出すため、この戦法にマッチしてるように見える。

画像12

MTGでは一定の打点(クロック)を維持しつつ、打ち消しなどでそれをサポートする戦術を「クロックパーミッション」と呼ぶ。今回の方針は「ドビンを軸にした青白クロックパーミッションを構築する」だ。スタンダードで見る青白とは一味違うデッキを作ろうじゃないか。

4.どうやってデッキを組むか

それではデッキを組んでいこう。

1.クリーチャーの選別
クロックパーミッションを組む以上、クリーチャーの選別は非常に重要だ。ただでさえクリーチャーの質が貧弱な青や白ならなおさらだろう。

画像13

今回は先に紹介した青白フラッシュを見習い、クロックを維持するために飛行持ちのクリーチャーを積極的に採用してやろう。あたりまえだが飛行持ちのクリーチャーはブロックされにくい。積極的にライフを削っていくことが出来るだろう。

画像14

中でも優秀なのが瞬速を持っており、インスタントタイミングで展開することが出来る飛行クリーチャーだ。相手のエンドフェイズに唱えることが出来るため、隙を見せることなく展開できる。

また、飛行持ちクリーチャーをサポートするカードが今のスタンダードには多い。例えばこういうクリーチャーはどうだろう。

画像15

《天穹の鷲》
1WU
クリーチャー ― - 鳥・スピリット
2 / 3
飛行
他の、あなたがコントロールしていて飛行を持つクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。

出せばなんと全飛行クリーチャーの打点が向上する。さっさと殴り勝つことを目標とするデッキだ。こいつを出すだけでその目標に近づくだろう。

こういうのはどうだろうか。

画像16

《天空の刃、セファラ》
4WWW
伝説のクリーチャー ― - 天使
7 / 7
あなたは、この呪文のマナ・コストを支払うのではなく、Wを支払いあなたがコントロールしていて飛行を持ちアンタップ状態であるクリーチャー4体をタップしてもよい。
飛行、絆魂
他の、あなたがコントロールしていて飛行を持つクリーチャーは破壊不能を持つ。(ダメージや「破壊する」と書かれた効果では、それらは破壊されない。)

普通に運用するならただの7マナ7/7だが、飛行持ちクリーチャーを展開していればあら不思議、なんと白1マナで出せる。
さらに、こいつを出すと他の飛行持ちクリーチャーが破壊不能を持つ。相手がでかい飛行持ちを出して盤面を封鎖した?ノープロブレム、面で押せる。相手が全体除去を撃った?モーマンタイ、大半のクリーチャーは残る。セファラは死ぬが。

2.妨害手段の選別
使うクリーチャーの方針は決まった。次はカウンターなどの妨害手段を選別しよう。
ただしコントロールと違い、クリーチャーを多く採用しているためあまり妨害手段に枠は割けない。「何が自分にとって脅威なのか」を見極めながら妨害手段を採用しよう。

画像17

今回のデッキだと、「ある程度飛行クリーチャーを並べて叩く」というコンセプトなので、全体除去が天敵となりえる。全体除去を回避できる手段をメインに考えよう。

現スタンダードでは、全体除去はソーサリーかインスタントである。クリーチャーの全体除去はまず存在しない。ならば、クリーチャー以外の全体除去をシャットアウトできる打ち消しがいいだろう。この目的にピッタリの打ち消しが青白に用意されている。冒頭で紹介したアレだ。

画像18

《ドビンの拒否権》
WU
インスタント
この呪文は打ち消されない。
クリーチャーでない呪文1つを対象とし、それを打ち消す。

後腐れなく非クリーチャー呪文を打ち消せる軽量打ち消しであり、何よりドビンが活躍している。使わない理由がない。

他にも、全体除去に合わせて破壊不能を持たせてやる方法もある。こんなインスタントはどうだろう。

画像19

《不敗の陣形》
2W
インスタント
ターン終了時まで、あなたがコントロールしているクリーチャーは破壊不能を得る。
附則 ― あなたがこの呪文をあなたのメイン・フェイズ中に唱えていたなら、それらのクリーチャーの上に+1/+1カウンターを1個置く。ターン終了時まで、それらは警戒を得る。

相手の全体除去に対応して撃ち込めば実質カウンターである。また、自分のメインフェイズに撃てばなんと打点を上げて相手を叩ける。色々柔軟に使えるインスタントだ。

画像20

当然、汎用性の高い妨害手段も入れておくに越したことはない。1~2枚は入れておこう。

3.ドローの選別
当たり前だがクリーチャーを展開すると手札が減る。妨害手段を確保し、矢継ぎ早にクリーチャーを供給するためにも、ある程度のドロー手段は必要だろう。

画像20

今回はドロー可能なクリーチャーを一定数採用した。クリーチャーの展開とドローを同時にできるため、今回のコンセプトとマッチしているためだ。

あまり構築で見かけないが、こういうクリーチャーもいる。

画像23

《フェアリーの陣形》
4U
クリーチャー ― - フェアリー
5/4
飛行
3U:飛行を持つ青の1/1のフェアリー・クリーチャー・トークンを1体生成する。カードを1枚引く。

ちょっと重いが、出せば4マナでクリーチャーの展開とドローを同時にこなすことが出来る。ブロールにおいてはフィニッシャー級のカードである。

また、飛行クリーチャーが主体のデッキなので、こういう呪文も使うことが出来る。

画像22

《翼ある言葉》
2U
ソーサリー
あなたが飛行を持つクリーチャーをコントロールしているなら、この呪文を唱えるためのコストは1少なくなる。
カードを2枚引く。

普通に使えば3マナ2ドローと《予言》相当のドロー呪文だが、飛行クリーチャーがいれば2マナで撃てる。少しでも妨害用のマナを残す必要がある以上、1マナの差は大きいだろう。

5.サンプルデッキ

ドビン、お前が虐げられる時代は終わった!お前はこのデッキでブロール界に名声をとどろかせるのだ!下のリンク先からデッキをダウンロードしてもらってみんなにも使ってもらおうな!

画像24

画像25

飛行クリーチャーが18枚。飛行クリーチャートークンを出せるカードまで含めると、なんと21枚のカードが搭載されている。これだけあればドビンの+1能力もきれいに回し、ガンガンアドバンテージを稼ぐことが出来るだろう。飛行クリーチャーを展開し、適度にバックアップしながら相手を攻め立てろ!

画像26

上の画像には反映されていないが、《天界の風、ムー・ヤンリン》をお試し採用。注目するべきは‐7能力。なんと全飛行クリーチャーが+5/+5の修正を受けられる。怒り狂った飛行持ちが襲い掛かる様はまさに大嵐そのもの、相手は消し飛ぶだろう。

画像28

上とは別にお試し採用したカードの《輝き追い》。普通に出せばただの3マナ1/1飛行警戒なのだが、アーティファクトがあれば2/2になる。ドビンの-1能力を思い出してほしい。アーティファクトが出せるため実質3マナ2/2飛行警戒である。また、さらにエンチャントがあれば3/3になる。

画像27

あの、なんであなたがいるんですか…?
いや、盤面に触れられて、相手を妨害できて、カードも引けて、ちょうどいい3マナのカードってなると…ねえ…

画像29

こんな極悪ハゲを使うのがどうしても嫌な場合は、同じマナ枠の《支配の片腕、ドビン》と入れ替えてやろう。相手の全体除去キャストを遅らせることができるし、なによりダブルドビンで盤面も華やかになる。

6.おわりに

MTGが対戦ゲームである以上、新セットが出るたびに新カードは「強いカード」、「弱いカード」のふるいにかけられる。それは当たり前のことだし、仕方のないことだ。
じゃあ、ふるいにかけられた「弱いカード」は「いらないカード」なのだろうか?多分違うだろう。最前線で活躍できるかどうかはわからないが、このように活躍できるフォーマットも用意されているのだ。
実際、このデッキをアリーナのブロールイベントに持ち込んでみたが、感触は悪くない。遊べるデッキになったのではないかと思う。
皆様もぜひ、気になるカードでブロールを遊んでみてはいかがだろうか?

ただまあ、個人的には次回ドビンが出てきたときに、今までの汚名を返上するくらいに強力な能力を持って現れることを切に望んでいる。
ストーリー上では両目をつぶされる致命傷を負っていたが、無事逃げ出したみたいだし大丈夫だろう。次の登場が楽しみだ!

…え?
後日譚の小説で死亡確認…?


……

応援ありがとうございました!ドビン先生の次回作にご期待ください!

よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。